第二百三十話 終わりの始まり 優太の覚醒
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「はぁ!? は、はぁ……はぁ……」
突然意識が元に戻る。肺が数時間呼吸を忘れていたかのように急激に荒く呼吸を始め、体からは汗がドバっと出てきている。
この感覚は覚えがある。魔導書を見た時、魔法を習得したあの時の様だ。
だがそれよりも問題なのは、何かあったはずなのにそれをほとんど覚えていないことだ。
「い、いったい何が……?」
今見たような気がする物はいったい何なのだろうか、あれは幻だったのか? それとも白昼夢か何かだったのか?
混乱しながらも現状の状況を把握しようと必死に頭を働かせる優太。だがその記憶は霞掛かっており何かあったはずなのにそれをはっきりと思い出す事は出来ない。
確かにわかるのは、自分はあの一瞬で意識がどこかへ飛んでいたこと。そしてそこで何か強大な力を渡されたことだ。
ふと両手を見て見ると右手に謎のボール、左手に不思議で強大な力を宿す槍が握られていた。
その二つを見ていると、朧げに先ほどまで行っていた場所の事をふわっと思い出し、ついさっきまで何か行っていたことと、それがまぎれもなく本当の事であることだけは分かった。
手に持つ妙なスーパーボールを強く強く握りしめる。
それは当たり前のように優太自身に取り込まれていく。優太の身体に溶け込むように。右手にあったそれは、優太に混ざっていった。
「う……ぐぐぐ……」
右手にあったスーパーボールが完全に優太に取り込まれる。直後、自分の中に魔法力が爆発的に高まり昂っていることを感じた。
「あ、ああ、あああああああああああああああAAAAAAA!!!!!!!!!」
優太は自分で驚くような、自分が今まで上げた事のないような咆哮に近い声を上げる!
そのエネルギーは、まるで自分を意味が分からないほどの強大な魔法力の塊と一緒にミキサーにかけられぐちゃぐちゃに切り刻まれ、再び自分の姿をした型に流し込まれて無理やり元に戻したかのようにさえ感じられる。
「う、ググぐ……痛いイタイイタイ痛い……!」
全身を引き裂かれるような苦痛にしばらくもだえ苦しむ。
だが次の瞬間にそこにいたのは、今までの石動優太とは全く違うなにかであった。
「え、うわ……な、なにこれ……?」
そのあまりの力に戸惑う優太。しかしそのような戸惑いさえ許してもらえはしなかった。
今まで他の何も目にとめずに悠然と歩を進めていたアンデッドドラゴン、いや、禍津腐死龍と言う存在が急に顔をこちらに向けてきたのだ。
それだけでなく優太は直感的に気付いた。
あれは自分に対し敵意を向けているのだと。
そしてアンデッドドラゴンはその敵意のままに優太に向かってレーザービームを撃とうとし、エネルギーをため、倒そうと必死にエネルギーを集めていた。
「……へぇ……そうなんだ……」
だがあのアンデッドドラゴンに敵意を向けられ、今まさに攻撃の標的にされていると言うのに優太はどこか余裕だった。
優太はアンデッドドラゴンに向けられた敵意をどことなく滑稽とさえ感じていた。
今までは、否、ついさっきまではあんな強大な怪物に敵意を向けられたら失禁し、恐慌を起こしていてもおかしくなかったはずだ。
だがそんな相手に対し向けられた感情を、いっそ憐れに感じてさえいた。思わずため息も出ると言う物である。
やれやれ、こいつはまだ自分が狩る側だと思っているらしい。だがそれはとんだ傲慢だと言う事を教えねばならない。
「残念なんだけど、狩る物と狩られる者の立場は逆転してるんだよねぇ」
優太がぽつりとつぶやくと、即興で魔法陣を作り出し、そして自分のみの内に秘める強大な魔法力を存分に使い魔法を詠唱しだす。
『炎の巨人よ、今こそその力を示せ。焼却は救い、焼滅は安らぎ。原初の炎をもって終焉をもたらさん。眠るべき時を見失ったものに静寂を。止まるべき瞬間を誤ったものに安らぎを。罪深きものよ、今ここにひとたびの慈悲を与えよう』
優太の目の前には強力な魔法力でもたらされた魔法陣と、膨大な魔力が今放たれようとしていた。
一瞬早くアンデッドドラゴンは強大なレーザービームを放った!
恐るべき魔法力、そのすべてを攻撃力に変換したレーザービームは当然信じられないほどの威力を持っていた。
……ものの、もはや遅かった。
「さあ、喰らうがいい。『原初の炎が齎す終焉』」
瞬間の熱と光。
その場にいた人間さえ何が起こったかわからなかっただろう。優太が魔法陣を境に放った炎はアンデッドドラゴンのレーザービームをたやすくかき消し、アンデッドドラゴンに対し大ダメージを与えたのだ。
腐臭をもたらす肉の大半は炭となり、辛うじて全身を持って動いていたアンデッドドラゴンは顔と右腕を残して崩れ落ちていっていた。
「さて……と」
そういえば左手の槍は誰かから秋彦に渡すように指示を貰っていたはずだ。
どこの誰の指示かは忘れたが、今はこれを秋彦に渡すのが優先順位は高いはずだ。そう思い近くにいるはずの秋彦を探す。
今はどういう訳か生命力感知も鋭敏になっており、探すのに苦労はない。事実秋彦はアンデッドドラゴンの前で腰を抜かしていた。
まあ無理もないのだろうが、優太は苦笑しつつも親友の元へ向かう。
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