第二百二十八話 終わりの始まり 優太の不屈
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「い、痛い痛い痛い……うう……」
アンデッドドラゴンに吹き飛ばされ、涙目でうめき声をあげる優太。全員バラバラになってしまった。秋彦は、レインボーウィザーズのメンバーはいったいどこに行ったのか?
何もわからない、わからないが、これだけは確かにわかることがある。
自分達は負けたのだ。
「ああ……なんてこった……」
爆風で吹き飛ばされたのか、マジックバッグは手元になく、魔法力もすでに枯渇しきっている。今の自分ではどうあがいてもどうしようもない状態だ。
悔しさに涙がこぼれる。今まで流してきた涙は数知れないがこんなに悔しい涙は初めてだ。
思えば今まで自分が流してきた涙は多くが悲しさから流す涙ばかりだった。いわれなく馬鹿にされたり、気晴らしに暴力を振るわれたり。その状況は様々だが、いずれも自分が悪意にさらされていることに悲しさを感じていたからこその涙だった。
だが今、自分が流している涙は悔しさからだ。力をつけ、多くの仲間を出会い、様々な経験を経て成長した。
その上でそれまでの出来事すべてを踏みつぶされたかのような圧倒的な絶望的状態。
それは今まで受けてきた仕打ちのようにただ耐えればいい物ではない。ただ耐えるだけの自分を変えるきっかけとなり、ただ物陰で泣いているだけの自分と決別した後に起こった、そんな今までのすべてを否定し、自分はあの時から何も変わっていないと突きつけられるかのような、そんな、決定的敗北と言ってもいいだろう。
「やっぱり……僕じゃ……だめだったのかな……」
悲しさと悔しさから思わず口から出た言葉は、むしろ自分の胸を締める。
それは過去、何度も口にしたはずの諦観からくる言葉だった。僕なんかだめだ。そう思っていかなる仕打ちも甘受してきた。どんな仕打ちを受けても反逆することもせず、そんな度胸もなく、そんな自分が嫌で口に出してきた言葉だった。
だが、今はそんな言葉がどうしようもなく自分の胸を締め付けるのだ。
そんな自分に戸惑いさえする。
妙な心境の変化に戸惑っていると、遠くから怒鳴り声のような大声が聞こえてきた。
「………で来て諦めてたまるかあ!」
聞き慣れた親友、南雲秋彦の声だった。
その大声を聞いて、ふっと心が軽くなった。思えば秋彦はどんな時も割と無謀に敵に突っ込んでいっていた。
子供の頃から自分を守るために喧嘩ばかりしていた親友だ。体が膨れ上がる前だってそうだった。
勝算がある戦いばかりではないだろう。勝算の欠片もない戦いもあっただろう。だが親友はそれでも始めてしまったら躊躇することは決してなかった。
ただの蛮勇と言う者もいるだろう。子供特有の感情を前面に出した癇癪の様な物だろうと言う者もいるだろう。
だが優太はその光景にいつも勇気付けられていた。
相手がいかに強かろうと自分を守るため、そして秋彦自身を貫き通すため。いつも彼は無理無茶無謀を押し通して戦ってきていた。
そんな親友の相変わらずな部分を見ていると優太も、気持ちが軽くなる。
「秋彦、親友がまだ諦めてないってのに僕が折れる訳にはいかないよね……?」
ダメだった自分とはすでに決別はしていたのだ。その後で秋彦の闘志を見て折れる訳にはいかない。仲間として、友として、親友としてだ。
そう考えたら行動しない訳にはいかないだろう。
優太はゆっくりと立ち上がる。体はゆらゆらと揺れ動くし、膝はがくがくと笑うが、立てないことはない。
優太もなんとか揺れる身体をビシッと立たせ、笑う膝を黙らせ気丈に立ち上がる。
「へこたれて……いられない……!」
魔法使いたる自分が最優先で行わなければならないこと。それは魔法力の回復に他ならない。
爆発から身を守るためにせめてのも抵抗として魔法を放ちすぎたのか、今、優太の身体には魔法力のひとかけらも残っていなかった。
おまけに自分のマジックバッグもどこかに吹き飛ばされている。
だが魔法力無くして魔法使いが務まるかと言う話である。優太は自らの身体のカス以下程もない魔法力を何とかかき集め、魔力増幅で増幅させる種火となる魔法力を集めるべく、必死に集中する。
「魔法力を、溜めなきゃ……」
深く深く念じる。爪のアカ程度、細胞の一つ一つさえ知覚出来そうな程に自分の中に残っている魔法力を探し、種火とするべく精神を集中させる。
「お願いだ。ありったけくみ上げて増幅しなきゃいけないんだ……丹田に、魔法力を……魔法力を? ……あれ?」
その恐るべき集中力が、極限に高められた悲壮な思いが気付かせた一つの違和感。その違和感が、奇跡の入り口を叩いた瞬間であった。
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