第二百二十五話 終わりの始まり 長引く戦いと気がかり
累計PV数380万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「ど、どういうことですか枝野さん、魔法力が回復したって!?」
外野でダイダラボッチ対アンデッドドラゴンの戦闘を見ていた秋彦を始めとした探索者達が声を上げる。
やっとあと一息と言う所まで来たと言うのに水を差されてしまったのだ。驚愕もするし憤慨もすると言う物である。
『うむ、よくよく考えれば出来てもおかしくはない行為ではあるんだ。あの雑魚魔物共はもともとアンデッドドラゴンの腐肉から生まれた魔物、いわば自分の身体の一部ともいえるだろう。切り離していた自分の一部を取り込み直して自分の身体を復元させた、と言う事だ』
「そ、そんなぁ……戦ってる最中にベ〇マ使うラスボスとかズルじゃないか……」
思わず膝が地面についてしまう。秋彦達の場合従魔やトークンモンスターにだが。正直に言うと、秋彦達が折角あれだけ頑張って削った魔法力が再び回復してしまったと聞いては心に来るものがある。
『だが悲観するにはまだ早い。今のであの雑魚魔物はすべてアンデッドドラゴンに取り込まれて消えた。と言う事はもう次はないと言う事だ。それにモニタリングし続けているがどうやら完全に回復しきった訳では無い様だ』
「え、完全回復ではないんですか?」
『ああ、残り4割という所で8割の魔法力に戻されているのでおおよそ4割の回復と言ったところだ』
「そして、次の回復はない?」
『復元させるための自分の一部がもうない以上はそうだろう』
枝野の言葉を聞いて探索者達は少し立ち直る。
「一回しか使えない完全回復を切らせることが出来た、か。それなら……まあ、徒労とは言えない、か」
「とりあえず飛行できる従魔持ちが隙をついてアンデッドドラゴンをダウンしてダイダラボッチのサポートと言う路線は変わりませんし……今は雨宮さんを信じるしかないです……!」
『引き続き紫水晶の出現先が特定出来次第君たちに伝えよう。ここからが後半戦だ、頑張ってくれ!』
………………………………
「ふぅ……とりあえずレインボーウィザーズの心が折れなくてよかった……」
作戦本部で冷や汗交じりで説明し、何とか立ち直ったことを確認して通信を切った枝野。枝野の顔色は正直に言って悪い。
「……枝野さん」
「……なんだい小野崎女史」
その顔色を窺ったかのように同じく作戦本部で先ほどまでアンデッドドラゴンについて戦い方を雨宮に指示していた小野崎が声を掛ける。
「その、あのゴーレム、ダイダラボッチは本当に大丈夫なのでしょうか?」
「……なぜそう思うのだね?」
「ゴーレムと言うのは探索者がいない間はうずくまって固まることで土の塊に擬態し、自らの消費する魔法力を抑える動きを行うことが確認されています。そして探索者がいない間にゴーレムが人型形態で動くときは魔力を帯びた土を食べることで自らの魔法力を回復させる時のみです。つまりゴーレムにおける戦闘態勢である人型形態はかなり燃費が悪い形態なのではないでしょうか? それがあのように長期間動き回っていて、土属性魔法使いの皆様は大丈夫なのでしょうか?」
小野崎が自身の知る情報を元に推論した結果を枝野にぶつける。すると枝野は盛大にため息をついた。
「流石は魔物の生態などを調査する魔物研究家。騙され続けてはくれませんか」
「それではやはり……」
「小野崎女史の危惧していらっしゃることはあたりです。あれはものすごく燃費が悪い」
その場の空気が一気に重くなる。
ゴーレムという物には大体二種類ある。
一つはゴーレムを作った術者とつながっており術者がゴーレムを操作しているゴーレムに自由な意志や思考が無いタイプのゴーレム。ゴーレム使いの間では操作型と呼ばれている。
もう一つは術者から完全に独立しており、術者の指示には従う物のある程度意思や思考があるタイプのゴーレムだ。こちらは独立型と呼ばれている。
この二つの明確な違いと言うのはゴーレムの動く原動力だろう。
操作型のゴーレムは、起動のためのエネルギーも術者が共有せねばならない。それはつまり動かしている間のエネルギーは術者が供給しなければいけない。その代わりに、操作の柔軟さや命令を聞く精度は独立型のゴーレムとは比較にならない。ただし術者の負担は半端ではなく、高位のゴーレムを使うとすぐに術者が息切れを起こして自壊してしまうのが問題である。
一方独立型は一度作成してしまえば命令自体は大雑把にしか出来ないが、ゴーレムは自分で考え、与えられた命令をこなす。その上魔法力を供給し続ける必要が無いため術者の負担になりにくいのが大きな特徴だ。ただし、ゴーレム自体が上手く魔石や魔力を帯びた土を取り込むなどして魔法力を摂取しなければすぐにエネルギー切れするのが問題だが。
今回雨宮達が作成したのは操作型のゴーレムだ。操作の精度はとても高いが魔法使い達から直接魔法力を引っ張ってきている。息切れしたら一巻の終わりである。
「一応魔法力を練りに練り、その上で私が作成した魔法陣を用いる事でかなり負担は軽減されているはずだが……」
「予想以上に戦闘が長引いてしまっている……と言う事ですよね」
「その通りだ。このままではタケちゃん達の魔法力が持つかどうか……」
顔ににじみ出る冷や汗が、事の深刻さを物語っていた。二人は柄にもなく天に祈る。
神よ、もしもいると言うのならこの思いにこたえてほしい。どうか我ら、いや日本に、あるいは世界全てに光をもたらしてほしい。人類の勝利と言う最高の光を、と。
そう願わずにいられなかった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は10月7日午前0時予定です。
よろしくお願いします!