第二百十七話 終わりの始まり 戦い方、判明!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うおおお!! ……ん?」
頭に張り付いて必死にしがみつく秋彦。アンデッドドラゴンとの我慢比べの勝負はまだ続いていた。
少しでも時間を稼ぐために秋彦は必死に耐えていたが、勝負は唐突に決着がついた。
突然頭の動きが止まったと思ったら、急に体が浮くかのような感覚を覚える。下りのエレベーターが動き出したかのような感覚だ。そして頭に立っている秋彦の目には徐々に近づいてくる地面が見えた。
瞬間悟る。頭が地面に落ちているのだと。
「げ!? や、やばい!!」
秋彦はとりあえず頭をから飛び出して、頭もろとも地面にたたきつけられる事態を避ける。
「な、なにが起こった!?」
「秋彦、大丈夫か!?」
「おお、ご無事でしたか!」
状況の把握が出来ていない秋彦に話しかけてきたのは真崎と奏、そして鋼の騎士団の面々だ。とりあえず何が起こったかわからないので状況を聞く。
「何があったんだ?」
「俺らも秋彦があのドラゴンの身体をよじ登ってるの見て登ってたんだけど、秋彦が顔に張り付いたからか引きはがそうとしてたろ? なんとかやめさせようと登り切ってから首を重点的に攻撃してたんだけど……」
「首を攻撃してたらなんか紫色した宝石みたいなのが出てきてさ。それでなんか気になって、この人たちの中にでっかいハンマー持ってる人がいるからぶっ叩いたら」
「あのようにズドンと倒れこみまして……」
何が起こったのかわからないが、どうやら真崎達の行動の結果倒れたらしい。
「まあならそれはそれでよかった。ちょっと休憩か?」
「あまりのんびりしてらんないとは思うよ、それに向こうには恐らくダメージないだろうし……」
「うーん、敵がああいう風に思いっきり倒れている間にダメージ与えるのがセオリーなんだろうけど、あの巨体じゃどこ攻撃したって無駄っぽそうだからなー」
「せめて弱点とかそういうのがあればいいのにな……ん?」
それならば起き上がるまでは時間を稼げるだろう。そうのんびり構えようとしていた秋彦は、魔力感知で何か強力な魔力が宿る物を発見した。
それは人でいう喉仏にある物だった。正確にはあったのだろう。倒れたはずみなのか喉仏にぽっかり空いた大穴を見る限り、そこにあったものが抜け落ちてしまったように見える。
大の大人三人分の背丈並はあろうかと言う巨大さだ。赤い輝きは宝石の様に見えなくもないが、ここまででかいと宝石と言うより鉱石か何かのようにも見える。
だがその凶悪なほどの魔力は明らかに鉱石だのなんだのというレベルを超えていた。何というか明らかに普通の代物ではないことが肌で感じられる。
「な、なんだこれ……」
『南雲君、聞こえるかい? 今その巨大な物体をこちらでもモニターしている。それ、試しに攻撃を加えてもらえるかい?』
「あ、はい。うおらあああぁぁぁ!」
その指令を聞いて秋彦も何となく何を考えているのかが何となくわかるが、とりあえず指示に従う。
思いきり槍を振りかぶり、赤い輝きを放つ宝石の様なものに攻撃を加えてみる。
「あ、くぅ、か、硬てぇー!」
当然ながらそんなに簡単に壊れるような代物ではない様だ。攻撃を加えた槍を持つ手がしびれる。探索者の膂力をもってしてもである。
だが、この一撃には大きい意味があったようだ。興奮し気味に枝野が大声を張り上げる。
『おお! それに攻撃を加えた時にアンデッドドラゴン自体の魔法力が微弱ではあるが少し弱まった! となると……恐らくそれがそのアンデッドドラゴンのコアだ! それを粉々にすれば勝ちになるだろう!』
歓声が響き渡る、早速さっさとコアを破壊すべく他の探索者達も一斉にコアに集まり始めた。
だが、そうは問屋が卸さない様だ。突然コアが小刻みに揺れたと思ったら喉仏にある大穴に吸い寄せられるかのように入っていき、コアが腐った肉の中に隠れてしまった。
そしてそれが喉仏の奥に仕舞われたと同時にアンデッドドラゴンが立ち上がった。まるでおもちゃか何かに新品の電池を入れたかの様だ。
大きな咆哮を上げアンデッドドラゴンは再び前進するが、もう誰も慌てふためかない。
「成程な。ギミックタイプの敵だな」
「うん、ともかくこれで攻略方法は分かったね」
これまでのやり取りでもう攻略法は把握できたのだから。
要するに魔物をひたすらに攻撃し、体のどこかにある紫の水晶を破壊することで敵のダウンを取り、ダウンを取った際に露出するコアを攻撃し、破壊する。
要約すると簡単そうに聞こえるだろうが、実際に行うとなったらそれは大変な事だろう。
恐らく今の流れは最もスムーズにいったときの流れなのだ。戦い方が判明した以上相手だってただやられっぱなしでいるわけではないはずだ。妨害も入るだろうし、紫の水晶が簡単に見つからないときもあるだろう。
だがそれでも、一つの確信を得れたことは非常に大きい。
つまり、この魔物は倒せる。勿論一筋縄ではいかないだろう。誰か死ぬ可能性もあるだろう。
でもそれでも、この魔物には倒し方があり、その倒し方が判明した。これほど心を強く持てるだろう材料が他にあるだろうか?
正直に言ってしまえばそうそうないだろう。
あのアンデッドドラゴンコアは秋彦の全力で放つ一撃でも、わずかに傷がつく程度でしかなかったのでそんなに簡単な話ではないだろうが、それでも希望が見えた事は大きいだろう。
「よーし、戦い方が分かった以上足止めなんて消極的な戦いやめだ。それどころか俺らだけで倒すくらいの気持ちで行かなきゃな……」
甘くないとは分かっていても大口をたたいてしまうのは、ある意味自分に対する鼓舞の思いもあるのだろうか。いずれにせよもう戦いは始まったのだ。今更降りる事は出来ない。
「よし、んじゃあ改めて行きましょうか! 前衛組! 突撃―!」
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次の投稿は9月20日午前0時予定です
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