第二十二話 自衛隊
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東京に向かう秋彦、優太チームと被災者集団約100名。
これだけ多くいれば喧嘩やトラブルの一つでもあるかと思ったが、意外なことにそうはならなかった。流石は日本人、災害が起こっても略奪を起こさなかったり、電車が止まって仕方なしに線路を一列に歩いたというニュースがあったりする国民性は伊達ではないという事か。
とはいえ時間がかかっているのは確かだ。道すがら現れた敵を屠るが、数も質も大したことはないとはいえ、約100人が一斉に動いているのだ。東京から新宿まで行きは30分というスピードで走ったが、帰りは相応に時間がかかっている。
そうだ、連絡しておこう。この数だ。受け入れにも準備はいるだろう。
優太がそう思いいたり、イヤホンマイクから連絡を入れる。
「もしもし? 本部聞こえる? 石動優太です」
「はい、聞こえているよ。どうしたんだい?」
「まだ時間がかかるんだけど、被災者約100名がそちらに到着します。僕らがついているから今から数が減るということはないと思います。受け入れ大丈夫ですか?」
「まあ厳しいけど、物資等の目途は立っているからね。大丈夫だよ」
「目途……ですか?」
「ああ、実は……あ、ちょっと失礼」
そういって雨宮が通信から離脱。しばらくして戻ってきた。
「みんな聞いてくれ! 朗報だ! ○○××公園に自衛隊が来るよ! 物資の方はとりあえずだけど何とかなりそうだ!」
その言葉を聞いた時、イヤホンマイク越しで全員が歓声を上げた。
「だが、残念なことに自衛隊の数はそんなに多くない。前線での救助や魔物の討伐は引き続き我々がやる事になる」
雨宮が言うには、どうも自衛隊も対応に追われ、てんやわんやだそうだ。
何せ突如同時多発的に起こったことで、あちこちに派遣しなくてはいけない。各地に派遣するには明らかに自衛隊の数が足りなかったのだ。
とはいえ、物資補給や拠点近くの警備などをやってもらえるだけでも、こちらとしてはありがたいと言う物。
到着まであともう少し、具体的には約30分と言う事もあり、一層士気が上がるというものだ。
さっそくこの事を秋彦達が連れている被災者に話すと、やはり歓声が上がった。
「やった! これで本当に助かる!」
「よかった……本当に良かった……!」
「うおー! 早く、早く行こう!」
「やめろよ、自衛隊は逃げねぇよ、それより秋彦さん達からはぐれる方が危ねぇ」
ちょっと聞こえただけでもこれだけの声が聞こえてくる。
「あー、そう言う事ですので。○○××公園までは僕たちに付いて来てくださいね。我々も気をつけますが、はぐれられたりしたら、正直保証はできないので……」
全員一斉に「はい!」と声を返される。道中での戦いっぷりも見ている彼らにとって、今の秋彦達は命綱だ。むやみに離れるなどあり得ないのだろう。
そうして再び歩き始める。現在時刻は20時。そろそろ腹も減ってくる時間と言う事もあり、物資補給の知らせを受ければ、被災者達も自然と足も早足になる。
秋彦達からすれば、遅いくらいだったので別にいいのだが。ばてないことを祈るばかりだ。
そうして歩くこと10分前後といったところだろうか。
最初にその音を聞き、叫んだのは後方の被災者だった。
「あ! 聞こえる! あっちだ! ヘリの音だ!」
歩きながら空を見渡してみると、一か所から、ヘリコプターらしき飛行物体がいくつか見えた。
ヘリコプターのローター音も徐々に大きくなって聞こえる。
その様子に歓声が上がった。
「さて、では皆さん、もうひと踏ん張りと行きましょうか」
………………………………
足が早まったとはいえ、結局到着したのは21時。帰りは倍、時間がかかったことになる。
が、到着した○○××公園はかなり様変わりしていた。
まず舞台だ。すでに解体されており、代わりにテントがいくつもあった。被災者一同を集めたテント、雨宮達のような独自で事の収拾を図った組のテント、そして自衛隊のテント。
動きはどこも活発だった。
被災者達の所では、自衛隊による炊き出しや物資の支給。一列に並んでいるとはいえにぎわっている。
雨宮達の所は、情報を総括し、まだ見回れていない場所や、被災者情報の共有等が行われている。
自衛隊の所では銃を持った自衛隊がごたごた何かやっている。まあそこら辺は災害救助のプロたちだ。何をやっているのかはよくわからないが、事態の収束に向けての作業なのだろう。素人目にはそうとしか思えない。
テントに歩いてくる秋彦達を見ると自衛隊の人たちがこちらにやってきた。
「お疲れ様です。こちらは貴方達が保護した方々でよろしいですか?」
「あ、はい。そうです」
とりあえずこの手の話は優太に任せることにした。
秋彦自身は改善されているが、頭があまりよくないことでこの手の堅い話が苦手だからだ。
喧嘩の時は秋彦が前に出て、話し合いの時は優太が前に出るのが二人のスタンスだ。
「話は雨宮さんより伺っております。有志での行い。誠にありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。そちらも周辺の警護等をやっていただけるとか」
「我々としても、近くの基地からそれぞれの都市へ向けて救助活動をやっています。普通の救助活動でも野犬等を追い払ったりはするのですが、今回の場合は相手の動きが特殊で、あの手の手合いと戦う事を想定した訓練をしていないので、御協力、感謝しております」
「いえいえ、それより、やはり日本全土でこんなことになっているんですか?」
わずかな沈黙の後に、自衛隊員の人が話してくれた。
どうやら、各都道府県の主要都市、主に県庁所在地と呼ばれる所では規模の大小に差はあれど、このようなことが起こっているらしい。
地方のいわゆる田舎と呼ばれる所ではまだ騒ぎにはなっていないようだが、都市部に行けば行くほど騒ぎが大きくなっているようだ。
特に東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸といった6大都市と呼ばれる人口の多い場所や、福岡、札幌といったところはかなりの騒ぎになっているらしい。
そして、魔物は人を殺し、喰らうものの、物は積極的に壊すようなことはしていないらしく、都市部の機能は、災害よりも損傷が低いらしい。
が、その分死傷者が多く、死人は全国各地で一斉に起こったことを考えると、意外と少ないらしいが、重軽傷者はただの災害よりもはるかに多い様で、自衛隊よりも医療機関の方が悲鳴を上げているらしい。
「そんなことになっていたんですね……」
「はい、どこの主要都市でも、あなたたちのような方々が、今回の事態の収束に備えて集結していたようで……その最たるけん引役の雨宮さんには頭が上がりません」
「正直あの化け物たちは、最初は面食らうかもしれませんが、やってやれないことはないと思います。高校生でも倒せるくらいなんですから」
「そうですね……え、高校生?」
「はい、僕も秋彦君も高校生で、それでもここまで成長できたんですから」
「……彼は高校生?」
「……はい」
優太は自衛隊の人の驚いた様子を見てすっと顔をそむけた。肩が震えている。笑いをこらえているようだ。
……なんだその目は。お前のような高校生がいるかとでも言いたげだな。
思わずため息が出る。まあよくあることではあるのだが。
「……は! し、失礼! ずいぶんとガタイが良い様だね……?」
「……まあ、身長201㎝で体重102kgありますからね……」
「に、にひゃくいち……?」
「プフゥ!」
「ああ、ここに居たんだね秋彦君に優太君!」
ここで雨宮が割り込んできた。ある意味助かったか。
「あ、すみません。ちょっと話し込んでました。じゃあ、まだ討伐が残ってるんで、この辺で失礼します!」
「あ、ああ……」
自衛隊の一人と別れた後、そのまま今度は雨宮との話し合いだ。
「状況はどうなっています?」
「よくないね。あちこちみんな走り回っているとはいえ、手間取っているのはやはり救助活動だ」
話を聞くと、やはり魔物を恐れ、隠れることを選択している人が多く、救助がままならないらしい。
今回、秋彦達は二人だけで魔物の軍団を吹き飛ばせる力を見せることができたからこそ、助けを求めてもらえたようなものだ。
次もこういくとは限らない。いや、次はこうはいかないだろう。
それに、あまり○○××公園から離れると、行きはダンジョン経験者ならば、身体能力の向上故に早く済むが、帰りは一般人を連れてこなければいけない。
それはつまり一般人の歩く速度に合わせなければいけないという事だ。
圧倒的に時間がかかる。
おまけに、敵も被災者もどこに居るかがわからない上に、その総数もわからないのである。探すのは苦労するのに魔物という脅威に常に警戒せざるを得ない。ローラー作戦でつぶしていくにはダンジョン経験者の数が圧倒的に不足している。
「おいおい……どうすりゃいいんだ……手詰まりの様にしか思えないんだが?」
「……いや、方法がないわけじゃないんだ。でもあまりにも難しいし、うまくいくかわからない。けど方法はあるんだ」
「親友? そりゃ一体どんな方法なんだ?」
「でもこれは僕が言ってもしょうがない。雨宮さんが自衛隊の人や被災者の人と話をしたうえで、出来るかどうかを決めなきゃならないと思う」
「……石動君、目の付け所が良いね。というか、やはりそうせざるを得ないと思うかい?」
「正直に言ってしまえば……僕たちに足りないのは【ダンジョン経験者】ですからね」
結局のところ焦点はそこだ。
一度や二度、ダンジョンに潜って、ダンジョンに対するチュートリアルをダンジョンで受けて、魔法を覚えて、ボスを倒してダンジョンウォッチとDPを手に入れる。それをやれてしまえば、外にいる敵もなんと言う事はない。事実、倒せているし、むしろレベル上げの元、どれだけいようと魔法が使えれば、はっきり言ってカモなのだ。
だが、それをやれている人間が今の時点ではあまりにも少ない。魔物と戦え、魔物におびえずに済む人が少なすぎる。
だが、そもそもダンジョン経験者とて、別にダンジョンに入ったり魔法を覚えたのはただの偶然。どこぞのデカい組織が利権のために育てた超戦士でもなければ、創作の世界の勇者や運命とも無縁。
彼らが人と違う点なんて、たまたま人よりダンジョンに入るのが早かっただけ。元は全員非力だったのだから。
そして、今の東京には多くの被災者や自衛隊。つまり人と、ダンジョンがある。
「……ちょっと待ってくれよ、それってまさか……!?」
「うん、彼らから有志を募ってダンジョンに入って戦えるようになってもらう」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
そろそろ評価も落ち着いてきましたが、これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!