第二百十六話 終わりの始まり ダイダラボッチ
累計PV数362万突破、感想数240件突破、評価者数620人突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
秋彦達前衛組が必死で足止めの攻撃を行っている間、一方こちらは後衛のアンデッドドラゴン対策のために集められた土属性魔法使い達。その人たちに向かって雨宮が話を始める。
「いいかい皆、時間が無いから手短にいくよ。まずはこれを」
そういって雨宮は取り出したマジックバッグをひっくり返す。どさどさとマジックバッグの中から出てきたのは小さな人形の様に見える。が、これは土魔法使いなら恐らく一度は扱いを夢見る代物だ。
これを土に埋めて魔法力を込めればゴーレムが出来上がるマジックアイテムである。
「……ゴーレムコアですか?」
「そう、皆自前のコアはあるかい? 無いならこの中から好きな物を取ってくれ」
「うわ、ありがとうございます」
だが、そんな便利なものであるが、意外とまだまだ手に入りにくい代物である。
ダンジョンの宝箱から出て来るときはあるが、質のいいのはなかなか手に入らない。
その上自前で作成できるようになるのは土属性魔法のレベルを14まで上げないといけない。
そういった敷居の高さから、ゴーレムコアは市場にもまだあまり出回ってはいない物なのだ。
土魔法は攻撃魔法としては強力だが、周りにまで被害が行く性質から複数魔法の属性があると、どうしても育成が後回しにされがちであり、ゴーレムコアを作成できるようになっている人はまだ少ない。
ゴーレムコアを大量に持っていると言う事は十中八九自分で作成したものであろうことを考慮すれば、雨宮の土属性魔法使いとしてのレベルは、最低でもレベル14以上は確定だ。
これだけでも雨宮の土属性魔法使いとしてのレベルの高さがうかがえると言う物である。
とりあえずまだそこまでレベルが高くない土魔法使いは雨宮からゴーレムコアを受け取る。ゴーレムコアが全員に行き届いたことを確認し、雨宮が話を続ける。
「さて、皆も土属性魔法使いならゴーレムコアがあるならゴーレムを作る事は出来るね?」
「……まさかゴーレムの軍団を作って対抗しようって話ですか? それはちょっと無理があるのでは……」
確かにゴーレムコアさえあれば土魔法使いならゴーレムを作成するのは簡単だ。
ゴーレムの性能はゴーレムコアの性能に依存するので、性能の良いゴーレムコアの能力を生かすのは難しいが、実際そこそこのコアを使って、そこそこの性能なゴーレム作るだけならそんなに難しい物ではない。
ただ、それだけではどう考えてもあのアンデッドドラゴンに対してダメージを与えられそうにはないように感じられる。
何せあの魔物、ダンジョンウォッチで見て見てもすべてクエスチョンマークで覆われてまともな解析は出来なかったものの、感じる魔力は尋常ではない。
レベルの低い魔力感知で軽く目算しても、軽く戦闘力100万以上はあるはずだ。それをゴーレム軍団で補おうと言うのは無理がある気がする。
「いいや違う。それじゃあのアンデッドドラゴンはどうにもならないはずだ」
「では、どうするつもりなのですか?」
「あれがもし生きているのなら、急所を狙うなりなんなり方法はあったと思うんだけどね。あれが物や死骸が動いているタイプの魔物なら、やはり質量には質量で対抗しなければならないだろう」
勿論雨宮はそんな風には考えておらず、もっとわかりやすく、あのアンデッドドラゴンを倒すために、もっとぶっ飛んだことを考えていたのだ。
「この大量のゴーレムコアと大量の土魔法使いの力を結集させて一つの巨大なゴーレムを作り上げる」
その場にいる全員が、ざわついた。
「そ、そんなことできるんですか!?」
「枝野曰く理論上は可能、らしい」
そういうと雨宮はポケットから紙を取り出し、その紙を見ながら地面に手をかざす。すると突然地面に魔法陣が現れる。
どうやらこれは、雨宮が落とし穴を作るピットフォールを使って細い線と文字状に穴をあけたようだ。そしてその穴の中にあらかじめクリエイト・ソイルで作った魔力のこもった土を流し込んでいく。土魔法にのみ許された魔法陣と言ったところか。
「炎魔法でも複数名が息を合わせ、魔法力を同調させることで単体よりも威力の高い魔法を放つことが出来る事例がある。これは其れの土魔法バージョンだと思ってもらえればいい」
更に単純に同調する人は多ければ多いほど同調には時間はかかるが、その分威力は跳ね上がる。成程、この人数で同調してゴーレムを作るならばあの圧倒的な質量にも対抗できるほどの巨大なゴーレムを作成できるかもしれない。
「今回この超巨大ゴーレムは今僕が枝野からもらった図面の魔法陣の上に、人がそれぞれ並び、魔法力を同調する事によって人が人によって結界を生むことになる。土属性魔法使いが構築する土属性魔法強化魔法だ。それをもってあの巨大なアンデッドドラゴンを倒す」
一人一人が生み出すゴーレムが、それぞれ骨の役目、筋肉の役目、皮の役目等事細かに人間の肉体を再現し、生み出される超巨大ゴーレム。結界を構築し、それぞれの最大限の強化をすべて引き出して作成される、現時点での人間側最大の大技だ。
「さあ行くよ皆。人型対巨大魔物用決戦兵器のゴーレム、【ダイダラボッチ】作成開始だ!」
………………………………
「ううむ……恐ろしいほどの魔法力だ。こんな規模で魔法力を一つの物が内包できるとは……」
「これはちょっとアンデッドモンスターの中でも規格外のレベルですね、骸がドラゴンともなると話が変わってくるのでしょうか……?」
さらにこちらでは北海道ギルドギルドマスターにして魔法研究家の枝野と沖縄ギルドギルドマスターにして魔物研究家の小野崎の二人が、本部で何とかこの規格外の超級魔物について把握するべく対策本部へ戻っていた。
枝野はドローンから送られてきた映像を魔法解析装置にかけて、相手の持つ魔法力を調べ、小野崎は様々な文献をパソコンから探し、少しでも役立つ情報がないかどうかを確認しつつ、テレビで放送されている画像から魔物の考察を行っている。
「とりあえずアンデッドモンスターと言うのはこれまで発見されている物に限って言えば、すべて肉体力は0で魔法力が戦闘力に直結するタイプのモンスターです」
「故にこの魔法解析装置であれば残りの敵の魔法力が計れるので、実質的の残りのHPを把握できると言う事である」
「はい、そしてアンデッドモンスターは総じて体のどこかにアメジストの様な小さい紫の水晶が埋まっていますね」
「ああ、あれは調べてみたが闇属性の魔法力がかなりある。勿論それが核という訳ではないが、動きの補助をしている物とみて間違いなさそうだが」
「成程、掘り出して破壊すれば有利になりそうですけど、まだ動いているアンデッドから掘り出して破壊した例は報告されていませんからね……アンデッドと言うのは結局の所殺すものではなく壊すものですし」
互いの視点から持てる知識を総動員して議論を交わし、探索者達がどうするべきかを必死に議論する二人。互いに専門は似通っているが違う二人、この場も戦場には違いない。
「壊すものとくればやはり、師匠から教えて頂いたことを元に作成した魔法陣を元にすれば複数人で一つのゴーレムを作成することも不可能ではないはずだが……ぶっつけ本番なのが心配だが、今は信じるしかないか」
もう一瞬たりとも魔法解析装置の計器から目を離せない状況が続く。そして魔法解析装置が、アンデッドドラゴンの魔力に変化を捕らえた。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は9月17日午前0時予定です
よろしくお願いします!