第二百十四話 終わりの始まり ファイナルバトル!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
黒い水球は雷に打たれたとたん何かの魔法陣が浮かび上がり、また水風船のように弾け飛んだ。
さっきの魔物とは違って、こちらは弾け飛んだ中から魔物が出てきたのだ。
黒い水球の残りがまだ体に纏わりついているそれは、とてつもない怪物。そうとしか言えない物だった。
外見を一言でいうならドラゴンだ。龍之介のように西洋風の龍だ。だがそれが放つ圧倒的な威圧感は明らかに龍之介とは格が違う。体の大きさも龍之介が出来る範囲で最大限に大きくなっても及ばないだろう。大体10階建てのビルが何十棟も連なって立っているかのような大きさだ。
そして、目の前にいる巨大な龍は見た目こそ龍だが様子がおかしい。例えばところどころ骨が露出していたり、目玉が目から零れ落ちかかっていたりしている。何よりこの腐臭、その場にいるだけで気分が悪くなる吐き気を催すこの臭いは目の前のドラゴンからであり、その臭いからも、このドラゴンの肉は腐っていることが容易に判断できると言う物だ。
つまりこれはいわゆるアンデッドドラゴン。ドラゴンが死に、その死体が魔法力によって動き出したアンデッドモンスターだ。
アンデッドドラゴンは非常に緩慢な速度で歩く。歩くたびに地鳴りは起こり、踏ん張っていても体が浮いてしまう程だ。だが速度ははっきり言ってかなり遅い。
それはあの圧倒的な質量のせいなのだろうが、そこはせめてもの救いと言えるだろう。
数歩歩いた後、アンデッドドラゴンが口を開けた。
そして開けた口にピンクの光が集まり出す。言うまでもなくあれは魔法力だ。しかも探索者の放つ量とは比べ物にならないレベルの圧倒的なエネルギーだ。秋彦達探索者達はその行為の意味が嫌でも理解できてしまった。
危険感知や魔力感知が危険を判断するまでもない、アンデッドドラゴンが何をするつもりなのかを即座に理解した探索者達はだれがと言わずに思わず叫んだ!
「避けろーーーーーーー!!!!」
口の中に形成されたピンクの光球が極太のレーザービームとなって探索者を薙ぎ払うように辺り一帯に降りそそいだ!
線が通った場所は大爆発をもって、一切の容赦なく破壊した。その光景は完全に怪獣映画のワンシーンをリアルに体現した物と言えるだろう。
「うわあああぁぁぁぁあああ!?」
探索者達はその破壊光線とも呼べるビーム自体は難なくかわした物の、その後に起きた爆発による爆風を受けた。勿論その程度はダメージにはならなかったが、その後の光景が探索者には大きなダメージになったと言えるだろう。
まず周辺一帯が焼け野原になっていた。爆風に飛ばされて着地した先は草生い茂る草原、または湿地になっていたが、そのすべてが灰と化していた。まだ灰になり切っていない草が所々で火を吹いているが。
そして何と言っても、周辺の山が消滅していた。
先ほどまで遠くに見えていた山が5、6個消えていたのだ。勿論いびつに削られた山の残骸と思わしきものを見れば、あの破壊光線が直撃したことで消えてなくなった事はすぐに理解できる。
「な、なんだこれ……お、俺たちは悪い夢でも見てんのか……?」
「ど、どうしよう……勝てないよこんなの……」
どよどよと動揺する声が上がるのも無理はないだろう。
「うっわー……まじかこれ……これとやり合えってか。冗談きついぜ」
「ひ、ひえぇ……」
「Oh……Jesus……」
「これは、今までの中で一番まずい状態じゃない?」
「……一番まずい」
実際秋彦達でさえこの光景は唖然とするしかなかった。もはやこんなの悪い冗談である。だが、あんなのが今現実として目の前にいる以上現実逃避している時間も惜しい。
「けど目の前にいる以上対処しねー訳にもいかねんだよなこれ。はー……覚悟決めますか」
「うう……勝てるのかな……」
「負けは死よ。そして全滅」
「こんなところで……負けてらんないっての!」
「……まだまだやりたいことはたくさんある」
秋彦達だけでなく、地方都市奪還作戦の前身にあたる日本魔物大氾濫を食い止めたレベルでの古株探索者達が、徐々に対応の為に早々と現実逃避から帰還し始めてきている。
彼らはボスチェンジ現象を初見で乗り切った事もある。今度は其れとは明らかに格が違うが、そういう経験こそが彼らを支えているだけあって、未知の物が相手だろうと心折れないのは流石と言えるだろう。
地方都市奪還作戦からの参戦の探索者達はまだ顔に怯えの表情が目立つ。
「皆、こうなったらもうこの戦いに勝つしかない。知らなかったこととはいえこれは僕たちギルドマスター僕たちのミスだ。みんな本当にごめんなさい」
そんな人たちに雨宮が頭を下げる。この人は何というか大事な局面になるといつも頭下げている気がする。
「尻拭いをさせる様で悪いんだけど、これが最後の戦いになる。お願いだ、一緒に戦って欲しい」
しかし、この人に頼られるのは不思議と悪い気がしない。残りの探索者達も覚悟が決まったらしく頭を上げていく。
そしてタイミングがいいことに妨害班を乗せた車の数々が続々とこちらにやって来ていた。彼らもテレビによってこの状況を把握しており、目の前で見ていない分覚悟も決まりやすかったようで、彼らも彼らなりにうまく覚悟を決められていたようだ。
「敵は倒してきた魔物全てによって生まれた最強最悪の魔物、これが最後だ。これを無事に生き残れたら、皆探索者ランクをゴールドにまで引き上げるから、この戦い、勝って終わらせよう!」
雨宮の言葉にその場の探索者達は大きな声を上げる。やはりこういう所の方が一番上がる声が大きいのはやはり人間現金な物である。
「とりあえず即興だけど作戦を構築したので土属性魔法をある程度習熟している人はこの場に残ってほしい、それ以外は我々のやることを邪魔されないように、相手をかく乱、妨害してほしい! では行くよ、地方都市奪還作戦ファイナルバトル! 開始だ!!」
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次の投稿は9月11日午前0時予定です
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