第二百十二話 終わりの始まり 大混戦!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「行くぞー!! うおりゃああああああ!!!」
「おおおおし!! 秋彦さんに続けー!! 遅れるなー!!!」
「お父さんも皆も頑張って! とーう!」
「私もお手伝いするのよ! えーい」
派手に雄叫びを上げて一人で突っ込んでいく秋彦。しかし突っ込む間際にちゃんと補助魔法を追加で掛けている辺りもう完全に手馴れてしまっている。
そして秋彦に続けと言わんばかりに他の前衛組も一斉に魔物達の元へ向かう。後衛組は魔法の溜めか遠距離攻撃を仕掛ける。
魔物の大群は津波のように押し寄せて来るが、探索者達とてただぼーっと待っていたわけではない。
今探索者達は枝野が作り上げた炎の結界によって攻撃力を始めとした戦闘力が大幅に上昇している。
しかも以前ギルドマスター達の前でやって見せたような有り合わせの物で形成したものではなく、結界を構築するための道具も一級品レベルで揃えての補助強化である。
従魔の補助も加わって、今探索者達は今までの集大成と言える程に強化がなされている。これならば今の探索者達でもどうにかなる。
現に探索者が攻撃を加えれば戦闘力平均五千という強力な魔物が一撃で倒されていっている。
「うおおおおお!! いいいしょいしょおおおお!!」
槍を回転させ、振り回すように魔物達を真っ二つにしながら魔物の大群をかき分けて屠っていく秋彦。
作戦開始直後は一匹倒すのにも数手費やしたはずの敵だ。しかしそんな魔物達を、まるで草を刈るかのような勢いで切り刻んでいく。
この光景は最初の日本魔物大氾濫を切り抜けた頃を思い出す。あの頃の魔物は全くの雑魚だったが、当時初めての大群相手と言う事もあってとにかく必死で周りを見る余裕もなかったものだが。
今の秋彦達、と言うよりも日本魔物大氾濫を切り抜けたベテラン探索者達であれば周りを見る余裕も生まれる。それによって探索者達一人一人の生存率も上がると言う物である。
その周りを見る余裕をもって秋彦も仲間の、友人の様子を見る。
「はぁ!」
「どっせい!」
ジュディは後衛の最前列でこの間始めてやった複数人で同時に魔防壁を展開する方法を以って前衛が取りこぼした魔物達が後衛を襲わないように壁役を務めているようだ。笑屋もそちらに加わっている。
壁役が展開している防壁は味方の攻撃をすり抜ける。つまり味方の魔法攻撃の邪魔にはならないのだ。この仕様、大変便利である。
ここにいる魔法使い達は殆どが魔力制御をレベル5まで持っている。魔力制御は自然とレベルが上がるスキルの筆頭だが、その中でも特に魔法を使いこんでいるのが窺い知れる。
そしてそんな彼ら魔法使いが、攻撃魔法を炎結界で強化されたなら、その威力はすさまじいことになる。
「燃え尽きろー!!」
優太が高々と杖を掲げる。すると空から大量の炎の矢が雨の様に降り注ぐ。勿論味方に巻き添えはなしで。
魔法と言うのは本当にここが便利だ。これが物理的な矢なら味方も大損害を受けるところである。しかし魔法の矢は味方の身体をすり抜け、敵の身体を撃ち抜く。
そして更に後方からは矢が降り注ぐ。後衛の物理攻撃である。
何というか、こうしてみると今までとやっていること自体はあまり変わらないのだなと思ってしまう。
正攻法こそ最適解であるからこそそうなるのかもしれないが、今まで自分達がコツコツと積み重ねてきたやり方が、ここに至ってまで通用すると言う事実に秋彦は何とも言えない高揚感を感じていた。
ならば、と秋彦は改めて敵の大群に向き合う。
前衛のアタッカーのやる事は前に出て敵を倒し、ひっかきまわすことだ。後衛が強力な魔法を放つための時間稼ぎをすることにある。
ならばそれに殉じよう。おびただしい量の魔物に多少怯みはする物の、言っている場合ではない。
「っしゃー! かかってこいオラァー!」
秋彦は叫び声一つ上げて再び戦い始める。
………………………………
一方、雨宮率いる作戦本部も大忙しである。
「いけ! ここで終わらせるんだ!」
「関東組! 帰還が遅れてるぞ、折角スピード違反し放題なんだ急げ!」
「わかりました。もう日本の端の地区には魔物はいなくなったのですね。ではそちらに一般の方を集めさせましょう。岐阜から人を遠ざけてください」
指令スキルを飛ばしての援護、妨害班の帰還状況確認、偵察隊からの報告、そして戦場付近の住民の避難等、行えることは可能な限り行い続けている。
当然ギルドマスター達はみんな一様に対応に追われている。勿論枝野も例外ではない。今回ばかりは枝野でさえ計器から目を離し、対応に追われていた。
しかし、ある一方によってそれは間違いであったことを思い知らされる。
突如枝野の個人スマホに連絡が入った。今は電話に出ている場合ではないが、何かあった時の為にスマホの電源は入れていたのだ。
「ああ、何だこの忙しい時に?!」
電話を取らずに切ろうとしたが、電話の主を見て枝野は即座に電話に出た。
『もしもし枝野。俺だ』
「黒部師匠! この忙しい時にどうしたんですか?!」
電話の主は黒部 翔太。枝野がまだ一オカルトマニアに過ぎない事からの付き合いの人物であり、驚くほどのオカルトの知識と教養を以って枝野にあれこれとオカルトの教育をしてきたまさに枝野にとっては先生であり、師匠と呼ぶべき存在だった。
『……なるほどな、その口ぶり、枝野お前計器見てないだろ?』
「それが何か!? 今忙しいんです!」
『いいから計器見て見ろ! 日本全土バージョンのをだ! とんでもねぇことになってんぞ!!』
忙しさにめまいがしそうになっている枝野が泣きそうな顔で叫ぶと黒部は大声で怒鳴り返してきた。
その大声に驚くと同時に師匠の怒鳴り声なんて聞いたことが無かった枝野は驚きすくみあがり、思わず作業の手を止めて計器を見る。
ちなみにこの魔法解析装置、この機器の作成には黒部の尽力によるものがかなり大きい。それ故に黒部もこの魔法解析装置を所持している。恐らく何か異常を検知したのだろう。
そして計器を見た時、枝野の顔から血の気が引いた。
「な、こ、これは……師匠! これはいったい?!」
『……まあこれは俺の仮説だがちょっと聞けや、これは恐らく……』
枝野は次に語られる黒部の予想を聞いて膝から崩れ落ちた。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は9月5日午前0時予定です
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