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第二十一話 新魔法

累計PV50000突破、評価人数40人突破、ブックマーク数が400を突破しました!

今日もブックマークと評価を頂いたことで、月間ランキングローファンタジー部門で42位でランキング順位を更新しました!

また、四半期間ランキングにて86位で初のランキング入りを果たしました!

皆様のご愛読、誠にありがとうございます!

 秋彦と優太は一旦被災者を公園に送り届け、改めて魔物の討伐を開始する。

 右を見ても左を見ても地獄としか言いようのない光景だが、今は心を痛めている場合ではない。それはさっき思い知った。今はそれらを押し殺し、敵を倒さねばならない。


「くっそが、敵はどこだ?!」

「わかんないけど……とにかく探して回ろう!」

「畜生! 本当にどこに人がいるかわからない状態ってのはきついな! どこに助けに行きゃいいかわかりゃしねぇ!」


 当てもなく、とりあえず周りを見回しながら東京を走り回る二人。

 いくらダンジョンで鍛え、普通の人間より身体能力が高いとはいえ、東京23区を走り回るにはまだまだ心許ない。とはいえあちこちで火の手が上がっている今自動車だのバイクだのに頼ることはできない。

 そもそも二人は免許もないし、それらの操作方法もわからない。そもそも敵や被災者を探しているのにそんなものを使っていられない。

 第一、あちこちで車が横転、炎上しているのだ。今の東京に置いて、交通網は死んでいると言って良いだろう。必然的に、大量の人の運搬は実質不可能だ。

 しかし、他の人が取り逃がしたのか、群体からはぐれたのか、ちらほらと単独、あるいは数匹単位で動いている魔物は確認できた。秋彦たちはそういった、はぐれ魔物、とでもいうべき魔物を倒して回り、大声を張り上げて被災した人たちを探していた。

 被災者。雨宮率いる救助隊が、魔物の氾濫に置いて救助が必要な人たちのことを被災者と呼ぶのは、このダンジョンモンスターの氾濫は人災でもなく、ダンジョンというものが生み出した天災と捉えているからだ。

 そうしてあちこち声をかけながら走り回り、現在四ツ谷駅を超え、新宿駅近く。常人なら歩いて2、3時間の距離だが、二人はわずか30分で走破している。身体能力の向上を感じるが、今はそれどころではない。


「はぁ……はぁ……誰かいませんかー! 救助に来ましたー!」

「だれかー! やっぱこう……単純なやり方じゃ限界が……親友!」

「どうしたの?! あ!!」


 呼びかけられた優太が振り返ると、マンホールからネズミの大軍が出てきたところだった。

 当然だがただのネズミでは無い。

 小型犬ほどの大きさ、爪や前歯、そして眼光の鋭さ。なにより毛の色が赤黒い。間違いなく魔物だ。

 というかこれらは地元にあるマンホールのダンジョンで一回見たことがある。雑魚だ。

そんな化けネズミ達は、マンホールという狭い穴から這い出し、まるでカーペットの様に、道路を埋め尽くしてこちらに向かってきている。距離がある上にそれほど早くはないが。

 自分だけなら手に余る数だが、優太がいるなら逆に好都合。だが、もうひと押し欲しいか?

 と思った時、秋彦は一つの魔法を思い出した。【アナライズ】と一緒に覚えたもう一つの魔法について。


「親友、せっかくだからちょっと試させてもらっていいか?」

「え? なにを?」

「俺の新呪文。【ストロング】っていう攻撃力を上げられる代物さ」


 秋彦は今の所魔法に関してはレベル1ごとに2つの魔法を覚えている。

 Lv1で力を籠める【パワー】と力の塊を飛ばして攻撃する【フォース】

 Lv2で対象の防御力を上げる【バリアー】と力を込めたものを操作する【コントロール】

 という具合だった。そしてLv3になって覚えたのが

 以前にライゾンから聞いていた通り、対象のことを解析する【アナライズ】

 そして同時に覚えたのが対象の攻撃力を上げる【ストロング】である。


「……ああ。あの数だから? 僕もようやく覚えた爆発の新魔法を試したいんだけどな」


 優太は炎魔法で最初に覚えたのは炎の範囲魔法の【フレイム】と炎の単体攻撃魔法の【ファイヤー】だけだった。それがLv6になってやっと一つ追加されたらしく、爆発をする火球を放つ【ファイアボンバー】と言う物らしい。範囲や威力は籠める魔力で調整が効くらしいが、使用感がわからないと何とも言えないので、実際に撃ってみたかったようだ。


「そうか……んー。よし、この際だ。合わせ技と行こうぜ!」

「あ、それいいね!」


 結果折衷案となった。結局のところ、二人とも単純に使ってみたかっただけなのかもしれない。そろそろ魔物達も近くなってきているので、早速始めることにする。


「よし、じゃあ『力よ、宿れ』パワー! んでもって『力よ、強まれ』ストロング! よっしゃ、ぶちかませ親友!」

「分かった! ついこの間でやっと習得した新魔法を見せてあげるよ!」


 【パワー】と【ストロング】による強化を受け、気合いが入った優太が杖を掲げると、優太の足元に突如、魔法陣のよう、というより魔法陣が現れた。


「いくぞぉぉー! 『炎よ、爆ぜよ!』 ファイアボンバー!」


 と大声で叫ぶと優太の杖から火の玉が現れた。小さい火の玉がどんどん大きくなっていく、が、大きくなる速度が速い上にかなり膨れ上がってきている。

 その火球が秘める力もどんどん強くなっていく。魔法を使える秋彦と優太はその力に若干の恐怖を覚えるほどだ。


「お、おいおい親友大丈夫かそれ?!」

「魔力制御が利くから巻き込みはないよ、けど……なにこれどこまで膨れ上がるの!? あ……!」


 気づくと火球は優太の杖から離れ、化けネズミの軍団に放たれていた。

 そして火球が軍団に着弾した瞬間、ネズミの軍団どころかあたりのビル街を覆いつくす程の炎が大爆発を起こした。

 爆発による閃光は目を焼き、吹き飛ぶ威力は暴風を呼んだ。まさに大爆発。

 その凄まじい程の火力は、例えるならそう、タンクローリーでも突っ込ませて火をつけたかのような光景だった。

 しかし、これほどまでの威力なら爆風や熱の影響がこちらにも来るはずなのだが、秋彦達にはこの目を焼き尽くす程の光は、白熱灯のようにやさしく、暴風はそよ風の様に柔らかかった。

 暴風の影響でバス停が吹き飛ばされ、道路に散らばっていた壊れた車まで転がっているというのにだ。

 これも、魔法制御のなせる技なのか。


「うおおおお!!!?」

「わああああ!???」


 あまりの威力に二人は思わず叫ぶ。

 魔力制御は利いていようと思わず大声が出るくらいにはすさまじかったのだ。


「や、すげぇなおい……これがファイアボンバーの力だってのか?」

「単体でこうなる訳ないって! パワーとストロングの合わせ技の上乗せのせいだと思う! だってLv6で習得する技がこんな強力な訳ないじゃん!」

「そうか……そうだよな……うん」

「それに、今気づいたんだけど、たった一回魔法を撃っただけなのに、パワーの効果が切れてる。たぶんストロングはパワーで込められた力で攻撃力を更に上げるんじゃないかな?」

「え、マジで?! じゃあ防御力のバリアーも?」

「たぶんね……秋彦のパワーって、予想以上に重要かも。これが正しいなら、パワーは大部分の魔法の起点になってるもん」

「うーん……まあ、そこら辺は要検証だな」


 そして、再び被災者の捜索を開始しようとしたら、突如後ろから声がかかった。


「助けて下さい!」

「うお?! な、なんだ? どこから声が!?」

「あ、あそこ!」


 優太が指さす先には一軒の食事処。しかしそこには数人の男女の姿があった。

 二人は急いで駆け寄る。


「皆さん、大丈夫ですか!?」

「はい、ずっと隠れていたんです! あのなんだかよくわかんない大きなネズミやら蛇やらから隠れるために……」

「大丈夫です。俺たちは救助に来たんです。他に人は?」

「わ、私たち以外には……」

「助けてください!」

「僕らも助けて!」

「私たちも!」


 突然あちらこちらで声が上がるようになった。

 狼狽するが、連れて行かないという選択肢はない。とりあえず救助を求める人々を一か所に集める。

 集めてみて驚いたのは新宿駅のバスターミナル周辺だけで100人近く人がいたことだ。

 あれだけ大声で声を上げ、救助のために動いていたのにである。

 秋彦と優太は避難の為に、ファッションショー会場まで、歩いて避難誘導をすることになった。

 その道すがら、秋彦は気になったことを口に出した。


「ところで、皆さん、僕らがさっきから救助に来た旨告げてましたよね? 何で答えてくれなかったんです?」

「……き、決まってるじゃないですか! 怖かったからですよ!」

「怖かった?」

「そうですよ! あの化け物たちに襲われないように息を殺して隠れていたのに、出て行く訳ないじゃないですか! みんな、皆あいつらに食われてしまった……あんな化け物共に勝てっこない……ならせめて、隠れられる場所に滑り込めた我々が、あの化け物の大軍がいなくなるか、あの大軍を倒せる自衛隊が来るまで待つしかないと思うのは当然じゃないですか!」


 なるほど、言われてみればそれはそうなのかもしれない。

 突如現れた大量の巨大生物。しかも一匹一匹が、ダンジョンに潜ったことのないやつにとっては割と強敵。秋彦も最初は一匹潰すだけで結構なダメージを負っていた。

 そりゃ逃げ隠れするし、隠れている奴は人間の、日本の自衛隊レベルの集団がこなけりゃその場を動こうとはしないだろう。動いたところでまたいつ奴らが現れて襲ってくるかわからないんだから。

 そんな彼らが、わざわざ隠れ場放棄してここに出てきたのは優太の起こしたあの爆炎を見たからだろう。

 あの群体を一撃で蹴散らしたあの炎を扱える奴が、より安全な場所へ連れて行ってくれる。

 そりゃついてくると言う物だ。

 少なくとも道中はある程度安心だ。秋彦たちが戦ってくれるから。

 それにあの場にとどまり続けてもいつまでも安心とは言えない。もし隠れているのが見つかったら? もし食料が尽きても救助がこなかったら? 隠れるという選択肢は最初からいつかは終わりにしなければならない。

 誰も助けてくれない、自分が生きるので精一杯な人々が差し伸べられた救いの手。

 カンダタがつかんだ蜘蛛の糸のようなものか。

 頼むから糸を切るような真似はしないでくれ。と願わずにはいられない。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
子犬位の大きさのネズミ・・・・・入門ダンジョンで1,2匹なら何とか戦えるだろうけど、これが5匹以上で襲い掛かってきたら普通の人間はまず食われますね。 ネズミ足速いから逃げられる気がしないし・・
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