第二百五話 探索者格差
累計PV数341万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「よーし! また新たに都市奪還だあああああ!!」
「うおおおおおおおおお!!」
戦いの終わった半ば廃墟の様な都市に勝者の雄叫びが響く。夏の日差しに負けない熱気がそこにあった。
「明日も一つ! 取り返すぜえええ!!」
「おー!!」
地方都市奪還作戦も地方の制圧は今日も続く。一日に一都市奪還のペースがだんだんと板についてきたこともあり、もうすでに近畿地方はすでに開放が終わり、中部地方も残りわずかである。
地方都市奪還作戦は、当初の予定通り二手に分かれ、西と東に分かれての制圧となったが、驚くべきことに秋彦達のいないチームも苦戦はあまりしなかった。
驚くべきことではあるかもしれないが、補助が無かろうと武器と防具の新調、何よりレベルとこれまでの経験から手に入れた経験値が違う。今までが慎重すぎたくらいだったのだ。
今の地方都市奪還作戦に参加している面々からすればこの地方都市奪還作戦、これまで培ってきた修羅場の数々から得られた経験を総動員して事に当たれば対処は出来る範囲なのだ。
それに従魔部隊も着実にレベルアップと進化を行っており、もはや結界の解除に潜入部隊は必要のないレベルにまで成長した。探索者を分けたスプリット体制における唯一の懸念材料もおおむね解消され、快進撃を繰り返している。
尚、ギルドマスター達は地方ごとにも魔物がボスチェンジする物だと思っていたが、意外な事に、地方ごとでのボスチェンジ現象は起こらなかった。
人間たちの制圧している県や都市もそこそこあったからなのか、はたまた別の理由なのかは今の時点ではわからないが、なんにせよありがたい事ではある。
この調子で国単位でのボスチェンジも起こらないでおいてほしい物ではある。だが、流石にそこまでの楽観視はまだ出来ない。引き続き制圧の済んでいない他県は監視を置き、動向を見守る姿勢である。
ともあれ今日も地方都市奪還作戦参加の探索者達は進撃を繰り返す。
人の手に町が、故郷が戻ってくるのはあらゆるメディアの格好の視聴率稼ぎのネタらしく連日連夜探索者の功績を称え、これからの日本が探索者とどう寄り添うかを討論する話をするテレビ局も増えてきていた。
現在八月半ば。地方都市奪還作戦も半分を過ぎた頃である。まだまだ取り返すべき都市は多いと言うのに気の早い話である。
………………………………
「はぁー……今日も終わった……」
「へとへとだねー……」
支援に回っているとはいえ、レインボーウィザーズも疲労の色が隠せない。体力や魔法力はポーションで回復できるが、ポーションをいくら飲もうと疲労感はどうしてもぬぐえないのだ。
しかしそんな中でも元気な連中はいる。
「うおお……は、初めての地方都市奪還作戦……! ここが俺たちの大舞台だぜ!」
「まあ、先輩方の活躍についていくのが精いっぱいだったけどね」
「なに、ここからだ。こっから経験を積み重ねていけば……俺らならやれる!」
疲労しつつもどこか余裕のある表情の探索者。彼らは最近増えてきた新顔たちである。
彼らは地方都市奪還作戦発令後に地方都市奪還作戦に初級ダンジョンを攻略した人々だ。初級ダンジョンを攻略したと言う事は、この地方都市奪還作戦に参加できる資格を得たと言う事でもある。
元々探索者の数もあまり多くないままにもたもたしていられないと言う判断の元に発令された作戦だ。人手の補充はいつだって大歓迎だ。
ここ最近の地方都市奪還作戦に参加する探索者達の活躍、注目ぶりに感化されたのか、かなりの人数の探索者が奮起したらしく、新しく200チームが地方都市奪還作戦に参入となった。元々参加していた探索者チームは約500チームだった。半分近くの追加である。これによって東西に分かれても大丈夫なのかと言う懸念材料を吹き飛ばす要因ともなっている。数が増える。つまり戦力が増えると言う事はそういう事なのだ。
頼もしくある一方、彼らは高速道路解放戦線などの修羅場をくぐっておらず、戦闘力自体は、ギルドローンによって手に入れた装備によって高い物の、どこか危なっかしい印象を受ける。
何というか随分と浮ついているのだ。
まるで地方都市奪還作戦が始まった直後辺りに一定数いた、名誉欲と承認欲求に駆られていた連中のようだった。
勿論そう言う奴らは今となっては大分おとなしい。何せもう奮起してアピールするまでもなく注目されるからだ。
だがこれから活躍しようと言う新顔たちは、やはりどことなく落ち着きがない。それがこの戦いのモチベーションになるのはよくわかるので強くは言えないが、戦いになれてもうちょっと落ち着きを持ってもらえれば万々歳なのだが。
「でも人が増えたってことは俺らの負担はマッハな訳なんだよなぁ……」
「本当にね、最近どうもきつくてきつくてね」
数が増えると言う事は純粋に補助魔法をかける相手が増えると言う事でもある。まあ補助要員の苦労が増えるのはやむを得ないのだが。
彼らの参戦無くして班を東と西へ分けての戦いを実現させるのは危うかったかもしれない。
ありがたい反面、その戦いにも終わりが見え始めている。
この調子で進んでいけば全国の4割はすぐだろう。そしてそうなった時の最悪。それは国単位でこの日本に巣食う魔物が勢ぞろいしてのボスチェンジだろう。
それが起こるまでは、少しでも新顔たちに経験を積んでもらい、この戦いに適応してほしいと、今は願うばかりである。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は8月15日午前0時予定です
よろしくお願いします!