第二百四話 夜の語らい
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「ああ……疲れた……」
用意されたホテルの秋彦に割り当てられた部屋で、ベッドに飛び込み思いきりため息をつく。現在秋彦達は東側の攻略担当として中部地方の開放を進めている。そろそろ中部が終わるとなれば次は関東地方の開放になる。
とは言えまだ先の話である。八月も前半が過ぎ、中間に差し掛かるこの時分。攻略を焦る必要はない。
だが、これはちょっと焦った方がいいと言う物がある。秋彦はそれを前にして疲れた体に鞭を打っているのだ。
全学生の夏休み期間の敵、宿題である。
秋彦達に関しては地方都市奪還作戦を遂行する事こそが何よりも重要であり、宿題は出すけどやらなくてもいい、と一応言われてはいる。
だが、日本人らしさと言うかなんというか。出された課題は忙しかろうが何だろうがついつい行ってしまうのだ。
秋彦本人でさえ、我ながら律儀な物だ。と、あきれてしまうくらいには自分に驚いている。それに折角DPを消費して学術的な知力を補強して、勉強がそれなりに出来る様になっているのだ。こういう時の為に使わなければならないと言ったところである。
ため息をつきながらもシャープペンシルの動きは目にも止まらないものがある。ついこの間、と言うか去年まではこのシャープペンシルの動きは非常に遅く、最終日に優太に泣きつくのが毎度のことだったのに。
今けだるげなのは、宿題が嫌なのではなく単純に補助魔法の使い過ぎである。それでもノルマはこなそうと言う気概はあるのだ。
「よし、今日の分終わり」
「お父さん、お疲れ様」
「……パパでもいいんだぞ?」
「……うん、ありがとう、パパ」
どことなく顔を赤らめながら嬉しそうにすり寄ってくる。分類上龍之介はチャイルドドラゴンからホワイトドラゴンへと進化したものの、まだまだ甘えたいらしい。
それは年齢から来る幼さなのか、あるいは元々の性分なのかは定かではないが。
ここで一度龍之介の進化による成長を見ようと思う。今の龍之介は、ステータスはこの様になっている。
名前:南雲 龍之介
種族名;チャイルドドラゴン→ホワイトドラゴン
レベル20(上限解放Lv30)
肉体力:4,000→16,000
魔法力:2,000→8,000
戦闘力:7,500→30,000
有利属性:無し
不利属性:無し
変身:(【従魔スキル】【アクティブ】主の望む様々な姿に変化することが出来る。大きさは最小蝿一匹程度)
羽飛行:(【モンスタースキル】【アクティブ】生えている羽を使って飛ぶ)
ホワイトドラゴンクロー:(【モンスタースキル】【アクティブ】白龍の強大な爪で敵を引き裂く)
ホワイトドラゴンバイト:(【モンスタースキル】【アクティブ】白龍の強靭な牙で敵をかみ砕く)
ホワイトドラゴンブレス:(【モンスタースキル】【アクティブ】白龍の息吹を浴びせる。超広範囲にダメージを与える)
ホワイトドラゴンウォークライ:(【モンスタースキル】【アクティブ】聞く者をすくみあがらせる勇ましい龍の咆哮は味方にとっては鼓舞の咆哮。聞いた味方の攻撃力を上げ、敵の攻撃力を下げる)
ホワイトドラゴンフォース:(【モンスタースキル】【アクティブ】凄まじき龍の気を味方に与える。その大いなる力、龍の気を得た物は守りの力を高め、龍属性を付与する)
ホワイトドラゴンゲイズ:(【モンスタースキル】【アクティブ】龍の眼光は目が合ったものを恐れさせる威圧の眼光。味方が見ても恐ろしげなその瞳は、その圧力が敵味方で正反対に働く。味方は監視するかのような瞳から逃れようと急いで動くし、敵はその恐ろしき眼光の前には振るえ縮こまるしかない。味方の移動速度を上げ、敵の移動速度を下げる)
龍が成長しきり、一人前として日の目を見た姿。もはや立派な龍であり、その潜在能力は成熟して尚底知れない。ホワイトドラゴンは大変希少であり、その鱗は一つ一つが強靭な武具や防具になり、喉仏や瞳はくり抜けば宝玉となり、美術品としても大変価値の高い代物である。
ただし、死んでも欲しいと言う人以外は挑まない方が賢明だろう。腕が立つものでもよほどにうまくやらなければ、文字通り死ぬだけだ。
進化ロードマップ
ベビードラゴン→チャイルドドラゴン(魔物の肉100㎏)→ホワイトドラゴン(魔物の肉1000㎏)→???(王者の冠)→???(古代の秘石)
恐ろしいまでの成長である。進化の際に戦闘力などは一気に4倍と化した。やれることも大幅に増えた事で龍之介の本領は戦闘力ではなく、育ての親である秋彦譲りのサポート能力の高さと言える事がより浮き彫りになったと言えるだろう。体長調整が成長したことで、ついに人間に化けられるようにまでなった。細かい作業もお手の物である。
しかし性格はまだまだ幼く、折角の人間変化も変身できる人間の姿は、両親が見れば5歳前後の秋彦の姿と瓜二つという形ではある。
だがそれ故に、かえって本当の親子のように見えてしまうのが何とも言えないところではある。一応秋彦は間違ってもこの年齢の子供がいる様な年齢ではないし、そもそも子供の面倒自体見たことなどないのだが。
「よし、今日はこんなもんでいいだろう。いい……はず……だ。うん」
とりあえずある程度進めて満足する秋彦。確かにそこそこは進んだので、その後は自分の裁量でいいのだが、どこか罪悪感を覚えるのは何故なのだろうか。
とにかく一息つこうとペットボトルのお茶を取り出す。
するとスマホが鳴り出した。とりあえずお茶を一口飲んでスマホを見る。ジュディからだった。どうやらこの部屋に来たいらしい。
嬉しい感情を抑えつつも、一も二もなく了承し……なんとなくそわそわしてしまう。
………………………………
「……で、この様ってわけ」
「律儀ねぇ、まあいい事だとは思うけどね」
ジュディを部屋に招いての夜のお茶会である。今回はありあわせの物ばかりでのお茶会だが、夜にお茶を飲みながら語り合うこの時間こそ何よりの癒しである。
「それにしても……思い切ったことしたわよね」
「相談してみんなで決めたろ? それにんなもん、結局遅かれ早かれバレるんだから」
ペットボトルの紅茶を飲みながら二人はつい先日の事を話題に出す。それは、優太の相談から始まった事である。せっかく新しく覚えた新属性魔法が使いづらいという相談である。
実はコソコソ新属性魔法を使って成長しようとしていたらしいのだが、優太が覚えている物で有名な炎と風と光以外の魔法を使って人に見られたらすごい勢いで、どうやって新しく属性を獲得したのかをすごく聞かれるらしいのだ。
確かに新属性魔法が手に入るのは魅力的だ。最初に魔導書を読んでも魔法を手に入れられなかった人が、後になって再挑戦したい場合も多いだろうし、気持ちはわかる。
しかしだからと言ってこちらの事を更に付け回されても困る。ただでさえ付け回されて困っているのに。
レインボーウィザーズ全員で相談した結果。雨宮に魔導書を持っていることを告白。雨宮に、この魔導書は匿名で誰かから貸し出されたものであり、自分達は本物かどうかを試験的に読ませてもらったものとしてもらった、と言う事にしてもらった。
当然魔導書は今回地方都市奪還作戦に参加している人々に改めてすべて読ませ、更に全体の戦力状況に充ててもらう。そしてしかるべきタイミングでこちらに返してもらう。と言う事にしてもらった。
自分達が今まで魔導書を積極的に使ってこなかったのも、秋彦が忘れていたと言うのもあるが、自分達で持て余していたからと言うのも理由の一つだ。そんな魔法力が上がるたびに未練がましくチャレンジしていられないし、ついつい持っているだけになりがちだ。
しかしかといって流石にもう二度と手に入らなさそうな道具をあげたり貸したりは出来ない。盗まれたり汚されたりしたら大変なことだ。扱いは慎重にしなくてはいけない。
なので一旦雨宮を信用し、任せる形を取った。
これでレインボーウィザーズも堂々と新習得した系統の魔法を使えるし、他の人々もそれに対して聞き出そうとはしないだろう。
一部提供元が自分達であることに気付いていても、ギルドも自分達も否定すればいいだけの事だ。
奪われたり盗まれたりした場合は、ギルド総出の捜索を行うと確約してくれた。
「なんつーか雨宮さんたくましいよなー」
「初めて会った時はずいぶんチャラ付いたイメージがあったのにね」
「それな、本当に思う」
談笑は夜が更けるまで続く。明日もまた闘いの日々なのだ。せめて今だけは穏やかに過ごせるようにと願いながら、二人は笑うのだ。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は8月16日午前0時予定です
急遽予定を変更して明日8月14日午前0時に投稿いたします。
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