第二百三話 順調
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Roo・Cthulhuさんからレビューを書いて頂きました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
『……うん、わかった。……大丈夫。父さんたちが帰ってくる前には決着付けておくさ。……うん、わかってる。うん……うん……じゃあまたね……うん、バイバイ』
秋彦はかかってきた電話を切ると、ふぅっとため息をつく。
アメリカにいる両親からの電話を取った時に聞いた話の内容を聞いて思わず疲れてしまった。
英語の会話に疲れはしないが、問題は話の内容だ。どうやら海外の出張から帰ってくることになったらしい。
まあ今では海外と言えば何かと物騒だし、帰って来てもらえるなら秋彦としては安心の一言なのだが。今まで勝手気ままに生活していたのが、両親と一緒になれば、また細かい事をギャーギャー言われるのだろうなと思うと、ちょっと名残惜しくもある。
電話を切ってため息をつく。ちなみに現在秋彦は地方都市奪還作戦の真っ最中である。
この戦いの要と言っても、秋彦は戦闘部隊ではない。ちょっとした電話だったら受ける程度の余裕はある。
「あ! 見てお父さん! あそこにバフが切れた人がいる!」
「本当だ。じゃあちょっと行きますか」
「了解!」
進化によってさらに腕を上げ、目がよくなった龍之介が、バフの切れた人を更に素早く探し出し、秋彦が援護の為に魔法をかけ直す。
散々補助魔法を撃ち続けた結果と言うべきなのだろうか。もう無属性魔法の補助魔法ならそれなりに上空にいようとも遠くから掛けられるようになってしまった。
空を飛びながら広範囲を見まわる秋彦達にとっては便利でいいが、それほどまでの広範囲補助をばらまけるようになるまでが辛かったので、正直あの苦労が割にあったかと問われれば口を閉ざさざるを得ない。
そしてしばらく空を飛びつつ見回りをしていると、都市部の方で大きな爆発音が聞こえてきた。
そして雨宮から通信機越しに連絡が入る。
『秋彦君、龍之介君。そろそろ従魔隊が都市部の環境結界内に入る。君たちも補助を中断して向かってくれ!』
「はい、了解しました雨宮さん。お父さん!」
「おっし、じゃあ一旦俺らも急行しますか!」
「わかった! 飛ばすよ!」
雨宮の指示を受け、一目散に都市部へ向かう秋彦と龍之介。
………………………………
都市部はやはりと言うべきか、魔物が作り上げた環境結界が構築されていた。前回足止めを喰らったあの魔物が強くなり、人間が弱くなるあの結界である。
だが今回はそれを見越してさっさと結界を解除すべく、戦闘班から新たに【従魔隊】という従魔を持つ探索者で結成された部隊が先行している。
威力偵察時に潜入工作班として活躍した人たちの代わりというべき人々である。
この環境結界内では、従魔が結界の影響で強化されることで、他の補助魔法を受けることで従魔の方が主より強くなると言う本来あり得ない状態が発生する。
故に結界内での戦闘を従魔に任せ、従魔が戦闘を行っている間に環境結界を解除すべく、従魔の主が掃除を行うと言う役割分担によってスムーズに作戦を進めることが出来るようになった。
この環境結界の解除の為に従魔持ちは総出での出動となる。それは補助を任されている秋彦達も例外ではない。桃子でさえ引っ張り出されている。
都市部突入を確認したら秋彦も桃子も一旦持ち場を離れて都市部の環境結界解除の従魔隊に参加するのである。
「お父さん! 着いたよ!」
「よっしゃ! 龍ちゃん思いっきりやれ!」
「はーい! ばああああああああ!!!」
都市部へ到着して真っ先に放たれるドラゴンブレス!
かけつけ一杯のようなノリだが、威力はそんなノリで出していいレベルをはるかに超えていた。
喰らった魔物は漏れなく大ダメージもしくは死亡である。環境結界内で強化されているはずの魔物達がである。
「いやー、すっげーな龍ちゃん」
「ありがとうお父さん。でも、他の皆も頑張ってるみたいだよ、ほら!」
龍之介が指をさす。
その先では火柱が上がっていた。吹きだす炎の魔法力から、あれは恐らく優太の従魔であるコロナが上げた物だろう。コロナは初めは関西チームに混ざって補助強化を担当するはずだったのだが、強化が行える従魔が予想以上にたくさんいた事で、あえて別チームに分ける必要なしと判断されてレインボーウィザーズと同じチームにいることが出来たのだ。
また、遠くでは巨大なカモメが隊列を組んで、空から爆弾の様なものを落として絨毯爆撃を仕掛けている様子が見えるし、この闇が支配する薄暗い空間で空から光がさしていたり、赤い光が辺りを照らしていたりしていた。
従魔隊達の中でも特に強い第二進化を終えた従魔達、要するに秋彦達の従魔達が大暴れしているのだろう。空から見るとそれがよくわかる。
主も、従魔もこの戦いに参加することで強くなっている。そのおかげでこういったところでの活躍がさらに出来る様になっている。
茜の従魔である豊芦原は今回の進化で非常にゆっくりだが陸上でも行動が出来るようになった。勿論基本水上でなければ動きが鈍いので固定砲台としてしか使えない。
……かと思ったら、豊芦原は今回の進化で驚きの技を覚えており、今回はそのおかげで豊芦原も戦闘に参加できている。
それが、【艦載カモメ発艦】である。
この技名にある艦載カモメと言うのは、先ほどから編隊を組んで空を飛んで空から爆撃を行っているカモメたちの事である。どうやら豊芦原は空母の様な能力も手に入れたらしく、艦載カモメは豊芦原の能力で生まれた物の様だ。
確かにゴブリン系の上位種は指揮する部下を呼び出して戦わせたりもしていたが、今回の進化で豊芦原もそれと同じような事が出来るようになったと言う事の様だ。
そうは言っても小野崎女史曰く、正確には違うらしい。尤も素人には同じにしか見えないが。
そして小野崎女史は、魔物が自ら生み出した魔物を【トークンモンスター】と命名。そして今日はその試運転の様な形でもあった。
結果は御覧の通りの絨毯爆撃である。現在最大10体のトークンモンスターを操作しての戦闘は、一方的な爆殺と化していた。これが敵だったらぞっとする光景である。
「皆好き勝手やってんなー……」
「進化して初めての戦いだよ、そりゃあ羽目も外したくなるってものだよ」
「まあそうか。龍ちゃんも普通に日本語をしゃべるようになるとは思わなかった」
そう、先ほどから龍之介は普通に秋彦と念話ではなく自分の口でしゃべっていた。
これも進化のなせる技なのだろうか、とりあえず耳で話を聞くのはやはり安心できるからいいのだが。
「まあ、いろいろ出来ることも増えたしね! でもまあ、こんなよわっちいのに見せるまでもないけどね!」
「そうかそうか……あ! 結界解けた!」
「本当だ。あーああ、もう終わりか」
「そんなこと言わないの。さあ、この戦いも援護に戻るよ」
「はーい……」
龍之介はまだ暴れ足りなかったらしいが、あのドラゴンブレスだけでも十分な暴れようだ。ここらで補助に戻らねば、そろそろ補助魔法が切れかける人も多いはずだ。
………………………………
そうして今日、再び魔物の手に堕ちた都市は人間の元へ戻ってきた。まだ日本全体の2割に満たない数ではあるが、着々と進む地方都市奪還作戦。
その期待の熱量は上がる一方である。
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