第二百二話 一方その頃
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
とにかく、これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「キャー! みてみてアナタ! 私たちの息子がまたまたニュースになってるわ!」
「本当だ! おお! 新たに都市部を開放したのか!」
アメリカ、ニューヨークシティ。その片隅にて日本からネットを通じて送られてきたニュースに大興奮の夫婦がいた。
妻はおっとりとしているような、あるいは眠そうな表情が特徴的な女性だ。女性にしては背がかなり高く、ストレートな髪は暗めの茶髪であり、その色は染め上げている訳では無く地毛である。とある人物の髪の色と全く同じである。
夫は黒髪ではある物の、顔立ち、雰囲気と言ったあらゆる要素がとある人物そっくりだった。今日本で有名な人物である。
夫は南雲 早雲といい、妻は南雲 彩芽という。
彼らはありふれた、ごく普通の日本人夫婦である。
強いて違う所を上げるとするなら、彼らの間に生まれた愛の結晶たる息子は現在進行形で有名になり、そして日本を再建させる屋台骨となろうとしているところだろう。
息子の名前は南雲秋彦である。そう、この夫婦。アメリカに赴任している秋彦の両親である。
特に早雲と秋彦は見た目どころか雰囲気もそっくりであり、この二人を同時に見た時に親子以外の関係性を疑う人はいないであろう程である。
髪が黒く、背が低い南雲秋彦。それが南雲早雲と言う人物である。
元々は証券会社の一員として日本企業の株をアメリカの人々に買わせるのが主な仕事である夫婦であるが、今は別の意味で有名である。
何せ彼らの息子は、もはや日本どころか世界中で知らぬものの方が珍しい超新星と言える存在だ。それをこの世に生み出した親とあれば注目もされようと言う物である。
そして息子たちが参加する地方都市奪還作戦、その情報はアメリカにも速報で入ってくる。
アメリカはニューヨーク州、ニューヨーク市というアメリカ最大の都市の一つである都市のベッドタウンと言える場所。現在の夫婦の住まいであるこの場所にも。
「本当にすごいわー、私達の息子がまさかここまでの存在になるなんて……! うぅ……」
「泣いちゃだめだよ、こんな喜ばしい出来事に涙は似合わない、息子の成長を喜ぼうじゃないか!」
涙もろい母親の涙をやさしく拭う父親。とはいえ無理もない話ではあるのだが。
なにせ現在日本が必死になって行っている地方都市奪還作戦は、日本どころか世界中で関心を集めている出来事だからだ。
日本がいよいよ勝負を仕掛けた! 時期尚早では? 日本が本土にいる魔物をすべて掃討する最初の国になるのか?! 我が国も負けていられない!
といった感じでインターネットのツブヤイッターを始めとしたSNSでは日々大盛り上がりである。まるでスポーツ観戦のようなノリだが、遠くの国で試金石としていずれ通る道のりの大まかな指針を作ってくれると言うのだから、今はまだ対岸の火事を見ているような気分なのかもしれない。
「はぁ……アメリカももっと早くこうなってほしいもんだなぁ……」
「そうね……今のアメリカは本当に怖くなっちゃったものね……」
しかしそれらは確実にアメリカのみならず将来魔物のいる国全てで行われなければいけないことでもある。
ダンジョンが出現し、氾濫が起こって以降、アメリカも元々治安があまりよくない部分はあったが、大都市とそれ以外での治安の差が激しくなっている。
魔物に関していえば、民間人であっても銃を持てば大量の群れでなければなんとかできる。今はこのアメリカでは誰もかれもが銃を携行し、射撃の訓練をしている。
その甲斐もあってか、民間人のみであってもボスチェンジが発生しそうな大きな群れでなければ一応問題はない。
だが、これが初級ダンジョンからあふれた魔物であったりするともう大ごとである。雑魚魔物一体でさえ銃で倒せなくなってくる。だが、国土が広く探索者人口がまだまだ十分とは言えない今のこの国ではダンジョンが氾濫する前に潰し切ることもできないし、そもそも移動だけで時間がかかる。
そのせいで、氾濫が起こっても対応が遅れることが普通にあり、派遣された探索者がやってきたときには魔物が市中に入りこみ、凶行を起こしていることも少なくない。
その上、魔物をポロポロ取り逃がすケースも多く、魔物は昼夜を問わず路地裏などでは普通に見かけるし、大通でも安全とはいえないことも多い。夜になれば路地裏に潜む魔物が暗がりから襲い掛かってくることもある。
その結果、今のこの国では夜中に鳴り響く銃声も珍しい事ではなく、翌日に派手にぶちまけられた血痕が街を汚していることも少なくない。
そしてこのことを利用しようとする輩まで現れ始めるらしい。
今やアメリカでは人が行方不明になった、人が殺された跡があるなんて物はもはや珍しくもなんともなく、また、夜中に銃声が聞こえて来る事ももう珍しくもない。
人と人との殺人でさえ人と魔物が争い喰われた。そういうことにしてしまおうと言う物騒な連中もいたりするのである。
危険な物は魔物だけでもない。表ざたにならなかっただけで潜んでいた危険もそれに乗じて暗躍をし出すケースもある。
今、アメリカの夜はかなり危険である。元々あまり安全と言い難い所だったのにさらに恐ろしいことになっている。
「まあ、この分なら日本は大丈夫だろうし……もうここらが潮時だよ」
「ええ……今はもう早く帰りたいわ」
そんな事情も相まって、南雲夫妻は現状のアメリカからいったん撤退をし、日本に帰国しようとしていた。
今は、日本が地方都市奪還作戦を成功させて生まれるであろう、魔物のいない世界一安全な国日本を目指し、だれもかれもが日本に来ようとしていて移住をしようとしてもなかなかできない中、この夫妻は国籍が日本なのでただ帰るだけであり、そのことを同僚たちには羨ましがられている。
安全になった日本へ帰る。今はそれだけが心の支えになっているとさえいえる。
こうしてアメリカの恐ろしい夜は更けていく。その先に、心安らかになれる明日があると信じて。
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次の投稿は8月10日午前0時予定です。
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