第二十話 惨状
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皆様のご愛読、誠にありがとうございます!
初の誤字報告もいただきました。お恥ずかしい限りですが、ありがとうございます。
本日投稿が遅れましたことをここにお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。
公園を出て、大きな道沿いに走る。
走る。走る。とにかく走る。
一息つくために立ち止まって外を見渡すと、街灯がひしゃげていたり、街灯の光る部分が壊れていたりしていて、街灯の光は、昨日と比べてそれほどない。が、夜の街は明るかった。
火を噴く車、焼ける魔物の死体が夜の街を明るく照らしていた。そしてその中には、人間の死体もあった。それもかなりの多さだ。
見慣れてもいない人間の死体に二人は総毛だった。
「う、げぇ……!」
「あ、あああ……」
そのあまりの凄惨な様子に思わず声が出る。絶望交じりの上ずった嫌悪の声が。
わかっていた。
こうなる事だって、想定はしていたのだ。
覚悟はしていた。
……覚悟はしていたのだ。
……そのはず……だったのだ……
だが目の前のリアルに五感に訴える本物の人間の死体を前に二人の膝は早くも崩れ落ちたのだ。
血の気の引き切った肌の色。
食われてむき出しになった臓物。
恐怖を浮かべた顔。
流れる血の生臭さ。
死んで緩んだことで垂れ流された糞尿の臭い。
全てが自然的、野性的本能に、死を訴えかけた。そのあまりの生々しさに耐えられるわけがなかったのだ。
膝をついた二人は思い切り、まだ綺麗なアスファルトに向かって嘔吐した。
「ぐ、ぐあぁ……おお……!」
「う、うう……ううう~……!」
余りの光景に、頭に靄がかかったかのようにうまくものを考えられない。
心臓が早鐘を打つ。
視界が歪む。
鼻水で鼻が詰まり、においが消えた。
吐瀉物で口元は汚れ、呻き声が漏れる。
目からは涙が止まらない
それは平和を生きていた二人には酷な光景だったのだ。
……だが、戦いに出た二人に、戦場と化した東京は無慈悲だった。
人の死に打ちひしがれている二人に悲鳴が聞こえたのだ。
「……きゃあああああ!!」
「げぇ……!! う、ぐ?! うう……くおぉぉぉおお!!」
秋彦は声を聴いた瞬間で気を持ちなおそうとした。
今しがた見たばかりの恐怖に蓋をし、揺れる足に活を入れ、吐き出した胃の中身で汚れる口元をポケットティッシュでふき取って、火にくべた。
ちらっと、優太の方を見たが、優太はまだ立ち直るのに時間がかかっている。このままでは戦力にはならない。が、おいていってやられるほど弱くもない。
そう思い立ち、秋彦はすぐさま声のする方向に駆け出した!
駆け付けた場所には集団の小さなヒトの形をした生物に囲まれた女性が数名いた。
女性は完全に腰が抜けており、這って逃げようとしていた。が、相手は容赦なく、腕を振り上げ、振り降ろそうとしていた。
その様子を見た途端、秋彦の背筋にチリチリと怒りが上ってきた。
……蹴散らす……!
「『力よ、敵を穿て』フォース!」
魔物が振り降ろそうとした腕は、振り下ろされることもなく、そのままの姿勢で後方へ吹っ飛んでいった。
相手には何が起こったかわかっていないようだったが、説明する暇も道理もない。
取り囲んでいた魔物は目算で10匹ちょっとといったところか。
この程度、何の障害にもならない
そう確信した秋彦が、円になっていた魔物を飛び越え、女性たちの目の前に割り入ってはいる事が出来た。
ならば、後はそう……殲滅だ。
幸いなことにこいつらはちょうど丸く女性たちを取り囲んでいた。距離を同じに保って。
そして魔物達は立っていて、囲まれた人たちは全員腰が抜けていた。つまりしゃがんだ状態だった。
これは好都合。まとめて始末できる。
秋彦はおもむろに槍の石突きと呼ばれる槍の刃の付いていない方の先端を持つ。
「こんのぉ……くそったれがああああ!!!」
そのまま円を描くかのように、敵たちの首を狙って薙ぎ払った。
元々、格下の雑魚の部類である魔物はそのまま成す術もなく、全員首を刎ねられた。
ごろりと落ちた首を見て、恐怖に声を上ずらせる女性たち。
荒く息をつく、秋彦。
おもむろに辺りを見回す。
近くに人の死体は……ない。
それを確認して一息つくと、先ほどまで囲まれていた女性たちの一人が声を掛けてきた。
「あの……助けてくれてありがとうございます……ですが、すみません。教えてください!いったい今何が起こっているんですか?! なんなんですかあの生き物は! なぜ私達を襲ってきたんですか?! どうして、どうしてこんなことに?!」
途中から、金切り声のような声でこちらに詰め寄る。
まるで自分たちに原因があるような物言いに一瞬困惑するが、彼女たちからしたら、完全に巻き込まれる形になっているうえに、理不尽極まりない状態に陥っている。
こちらに声を上げるのは筋違いとはいえ、当然といえば当然か。
「……すみません。それは僕らにもわかりません。詳しい説明は○○××公園にいる雨宮という人がしてくれるはずです。とりあえずそちらに避難していただけますか?」
「……説明はその人がしてくれるのですか?」
「あくまで我々の分かる範囲で、ですが」
「……わかりました。あの、すみません。連れて行っていただけませんか?」
「ええ、もちろんです。人命救助は最優先ですので。あ、すみません。ちょっと寄り道しますね。親友がまだグロッキーみたいなんで」
優太を拾って、そのまま一旦ファッションショー会場、今は東京の人を救出するための拠点になった場所へ被害にあった人たちを送り届ける。
送り届けたところを見計らって、秋彦は優太に声を掛ける。
「親友……大丈夫か……?」
「……うん……ゴメン、肝心なとこをやらせちゃって……」
「気にすんなよ。俺たち親友だろ?」
「……うん、ありがとう、親友」
「どういたしまして、だな」
少し気まずい沈黙の後、優太が口を開いた。
「ごめんね、ありがとう。僕に時間をくれて。秋彦だって、辛かったよね?」
「いや、あの悲鳴聞いて何とか我に返ったってだけよ。人を割と殴り慣れてる俺でさえ……な」
「……僕も……もっと強くならなきゃ……!」
「……そうか。親友がそう思えたんなら安いもんさ。さあ、行こうぜ?」
「うん!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!