第百九十六話 地方都市奪還作戦、都市部奪還!!
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
『いいですか! まず魔防壁持ちの方は一か所に集合してください! そして他の方はなるべく散開して攻撃を大人数で受けないようにしてください! その魔物は、人が密集しているところを狙って攻撃を繰り返しています! まずは一度攻撃を受け止め切らないことにははじまりません!』
小野崎から指示が飛ぶ。小野崎もまずは一度敵の攻撃を受け止める必要があるとみているようだ。
それは確かにわかる。相手がこちらを攻撃範囲から弾き飛ばすことで相手になかなかダメージが通らないと言うのであれば、敵の攻撃を受けきるか避けるかして弾き飛ばされないようにしなくてはいけない。
しかしその為に防御要因を一か所に集めると言うのもなかなかリスキーな話ではある。
『一か所に集まり次第、魔防壁は全員一斉に魔防壁を展開します! 高速道路解放戦線において魔防壁を持つ魔物が集団で現れた時に遠距離からの超威力魔法が防がれたことを覚えていますか?! あれを今度は我々がやります!』
懐かしい話を持ち出してきた。
そういえば確か、魔防壁は複数人が同時に発動することで効果を高めていた。優太の強化込みのファイアボンバーが、それで防がれていたことを思い出す。
『勿論それで防ぎきれるとは限りません、防御陣が全滅する可能性もあります。しかし足止めの魔法も通用せず、一人一人では守り切れないとあってはもはやこうするほかありません! 守り切れたら相手が動きを止めている間、攻撃陣は速やかに防御陣の元へ集合! その後に魔防壁の裏で守られた攻撃陣が敵を攻撃する! 作戦としてはシンプルですが、これ以上の策は現状ありません!』
確かに、何度も繰り返される吹き飛ばしの中ではピットフォール等の足止めに使う魔法や、地面を凍らせて攻撃の遅延を計った行動などもあったが、どれも意味がなかった。
それにもともとこの敵はシンプルな戦闘を求める敵だ。攻略するにはやはりシンプルにいくしかないのかもしれない。
把握したのちに覚悟を決める探索者達。そして再び鳴り響く爆音。また一か所探索者達が吹き飛ばされたらしい。もはや迷っている暇はないだろう。
『では行きますよ……それでは行動開始!』
小野崎の号令を受け、さっそく魔防壁持ちの探索者は動いた。一か所に集まるために。
誰の元に向かうか、それは全く問題にならなかった。なぜならジュディの元に誰が言わなくても集まってきたからだ。
流石のカリスマ性ともいえるし、魔防壁の上位スキルである聖馬の誇りを持つジュディに集まるのはある意味当然ともいえた。あるいはただ外国人として見た目が目立つからともいえるが。
他の探索者もそれに合わせて動き出す。といってもまず防御陣の守りが通用するかどうかを確かめなければいけないので、まずは他の探索者達は散開し、ボスの標的にならないように気を付けるだけなのだが。
「とりあえず行ってくる!」
「エミーガンバ!」
「漢の見せ所だぞエミー!」
笑屋は魔防壁もスキルとして持っているので、ジュディの元へ行き、一緒に防御する側だ。真崎の言う通り、ここが防御側の正念場と言えるだろう。防護者の二つ名を持つ笑屋にとっては猶更漢の見せ所だろう。
素早く、誰が指示した訳でもないのにすぐにジュディの元へと集まる。幸いにもさっき動いたばかりのブラックオーガバーサーカーはしばらく動きが停止している。動くべきは今だろう。吹き飛ばされた探索者達に心の中で合掌しつつも、ジュディの元へ集った。
「皆行くわよ! せーの、はぁ!!」
一呼吸合わせてのジュディの号令、笑屋を始めとした集まった探索者達が一斉に魔防壁を同時発動させる。
そして、しばらくのっそりとした後、再びブラックオーガバーサーカーが動く!
そして再び鳴り響く轟音。敵の攻撃が出した音である。
今回のは力が拮抗した分音も大きく、衝撃もすさまじかった。その衝撃は上がる砂埃からもうかがえた。防御陣がどうなったか、かたずをのんで見守る部分だ。
「くぅぅ……きっつい!」
「でも行けたわよ!」
「……やった、耐えられた……!」
だが、それでも。防御陣営は見事守り抜けた!
思わず歓声が上がる。今まで良い様にやられてきていた探索者側にとって、ここが反撃の糸口となる出来事である。テンションが上がらない訳がない。
後はやるべきことは決まっている。
『攻撃担当の皆さん! すぐに防御陣の元へ向かってください! 防御陣が耐えられる間にこの戦いに決着をつけますよ!』
小野崎からの指示に、速やかに従う探索者達。
後はもうシンプルな殴り合いだ。ブラックオーガバーサーカーの攻撃に、防御陣が耐えて、攻撃が終わって再行動をするまでの間、攻撃陣が全力で攻撃を行う。
それによってどちらが先に倒れるかのダメージレースである。原始的な、考え無しの殴り合いだが、向こうが強要してくる以上それに乗らなければ逆に勝機がないと言う物だろう。
そうして探索者と地方都市から生まれたボスの殴り合いが始まった。それはもう純粋かつ非常にわかりやすい位に。
相手のターンが終わればこちらのターンが始まる。その様子はあたかもゲームの様だ。わかりやすいほどに魔物のターンと人間のターンが繰り返されているのだから。
そして、いかに強大と言えどたった一匹で相手取る魔物と、弱いながらも集団で立ち向かう探索者達。勝負の行く末は明白だったと言うべきだろう。
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激しい削り合いの応酬の末、強大な存在はついに野太い声を上げる。断末魔の悲鳴だ。
そして次に上がるのは歓声だ。探索者の、いや、日本のみならず世界中がかたずをのんで見守っていた戦いだ。全人類が歓声を上げたと言っても過言ではないだろう。
地方都市奪還作戦、その初戦である今回の戦いは、かくして終焉を迎えた。探索者達の勝利という形で。
それは日本のみならず世界においても、魔物に支配された土地の奪還という意味では大きな一歩となった。
喜びに声を上げる者は世界規模でいる。この戦いに対する一つの終焉と言えるだろう。この戦いを基準に残りの他の都市での戦いが展開できるのだから。
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次の投稿は7月23日午前0時予定です。
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