第百九十五話 地方都市奪還作戦、都市部から生まれたボスモンスター!
累計PV数320万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「来るぞ!」
「うわああああ!?」
「きゃああああ!!」
再びの爆音と同時に地面が爆ぜる。いや、そう見えただけだ。実際には地面がブラックオーガバーサーカーの一撃によって大穴を開けさせられただけである。
すでに二、三回ほどの攻撃を受けており周りは穴だらけ、近くにあったビル一つが倒壊と言う深刻な被害が出ている。
驚くほどに速く、重い一撃である。正直叫び声をあげている時間すら惜しい状態だ。
ブラックオーガバーサーカー自体は何度も戦闘を行った事はある。何度戦おうとも敵ではなかった。
戦闘力もそこまででもなかった上に、ただただ攻撃力と体力が高く、遠距離攻撃が通じにくいだけの相手であって、攻撃が当たれば脅威であったがわざわざあたりに行かない限りは向こうがどう頑張っても当たらない程に動きが鈍い敵だった。
しかも向こうは体力こそ高い物の防御力もそこまで高いわけでもない。オークやゴブリンと言った系統に比べれば高い部類なのではあるのだが。
しかし、先ほどアナライズをしてみた時のデータを見て全員が驚愕した。
何とこの個体、戦闘力が18万だった。肉体力は驚きの15万であり、今まで見たどの敵よりもぶっちぎりで高い。そもそもエリアボスとして出てきたときは戦闘力5万だったはずなのに、まさかまさかの三倍以上である。
しかも、探索者達自体戦闘力が10万を超えた敵をそもそもまだ見ていないのに、それを余裕で通り越している。もうすぐで20万と言う前代未聞の数値である。
「くっそ……デカいくせになんて早いんだ!」
敵の棍棒が放つ余波に吹き飛ばされた誰かが毒づく。
先にも述べた通り、本来パワード・ブラックオーガバーサーカーは動き自体、それほど早くなく、その上で接近戦以外を許さない相手なので、当たらないようにさえ気を付けて行動していれば何も問題のない、比較的危険度の低い当たりと言われてきた。
だが今はどうだ。
あの巨躯で、あの電柱を無造作に引っこ抜いていくつかに束ねただけの様な無駄にでかい武器を、探索者が剣を振るのと同等並みの速度で振るっているのだ。しかも接近の速度もこの場の探索者と同等レベルである。
しかし、当たれば即アウト並みの攻撃力は変わっていない。むしろその攻撃力にもさらに磨きがかかっている。全体的にも防御力も強化が入っている探索者達が一撃で死ぬ、とまではいかない物の、まともに受ければ遠くまで吹き飛ばされるか戦闘不能近くまでに体力をもっていかれ、守った個所は骨折まで行く。
ポーションや回復魔法でごまかしているが、いつまで続くかもわからない。一昔前の漫画の描写でよく見かけた、市中で吹き飛ばされた相手がビルをいくつも突き破って遠くに飛ばされ止まるような描写がある。
まさか現実の世界でそんなものを実際に見ることになるとは思わなかった。
「クソが! うりゃあああ!!」
探索者の渾身の足を狙った近接攻撃! 相手はそれを避けもしないで喰らう。
緑色の血が攻撃を喰らったか所から噴き出しているからには全くダメージがない訳では無い様だが、何故か避けようとしない。
そして、ブラックオーガバーサーカーが緩慢な挙動でググッと構えだす。
次の瞬間、探索者の持つ危険感知が自らに全力で警報を鳴らす。
「来るぞ!」
「ぎゃああああ!!」
「うおおおおおおおお!!」
ブラックオーガバーサーカーの狙った場所にいた人は残らず吹き飛ばされる。さっきからずっとこの繰り返しである。
普通の動きの時はそれほど早くない。むしろ今までのブラックオーガバーサーカーと比べてさえのっそりしていると言える敵の動きが、攻撃の挙動だけ異常に速くなる。
一度動き出すと目にもとまらぬ速度で標的にまで走り抜け、目にも映らぬ速度で棍棒を振りぬくのだ。
一度振りぬけば標的となった探索者達は吹き飛ばされ、それによってブラックオーガバーサーカーの周辺に探索者はいなくなる。そしてしばらく動きが緩慢になる。
探索者達がブラックオーガバーサーカーを攻撃する隙はここしかない。が、またすぐに別の標的を定め、唐突に超スピードと言うべき速度で別の探索者を狙い攻撃を行う。
ブラックオーガバーサーカーに一番近い探索者が急いで走り寄って攻撃を行っても、相手の移動速度と移動距離が桁違いすぎて、探索者達が距離的に追いつくより前に敵が動き出してしまう。
「まずいわね……庇うのに追いつけない!」
後手に回っている現状を、悔しげに歯噛みするジュディ。ジュディはこの状況を打破するにはとにかく一度相手の攻撃を防ぎきる必要があると言う気がしている。だが、あのブラックオーガバーサーカーの走る速度と走る距離はジュディではどうあっても追いつけないのは明白だ。
それに正直あの速度、あの戦闘力18万が繰り出す攻撃力を防ぎきる自信はあまりない。が、今のジュディは防ぎきれるかどうかの勝負すらさせて貰えていない状態だ。
その時、通信機から小野崎の声が響く。
『皆さん、賭けになりますが、一つ状況を打破できる策を考えました! 指示に従ってください!』
どうやら一連の動きを見ていた魔物研究家でもある小野崎が何か策を思いついたらしい。
『個人的には安全確実な策という訳ではなく、もしこれが失敗したらその場の全員が全滅の可能性があります、しかし現状これ以上の策がありません! 従ってください!』
安全確実な策ではない。その一言は引っかかる。だが、またも爆音が響き渡る。生命力感知で吹き飛ばされた方向を感じ取れば、とりあえず生きてはいるようだがどんどん探索者のその場の数が減っていっている。
もはや迷っている余裕さえない。探索者達は、作戦を聞くことにした。反撃開始である。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は7月20日午前0時予定です。
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