第百九十四話 地方都市奪還作戦、ラストバトル!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
一時間の休憩ののちに再び始まった侵攻。
しかしそれは最早侵攻とは呼べなかった。一方的な虐殺である。
『みんな頑張ってー! ガオー♪』
『私も支援するのよ! えーい、宝玉光のヴェール!』
それを後押ししたのはひとえに龍之介とルビィの成長による補助スキルのバージョンアップ及び新補助スキルの習得と言えるだろう。
元々レベルが10ちょっとの状態で既にかなりの影響を与えていた補助スキルである。桃子の従魔のルビィも防御とはいえ補助スキルを使えたことも発覚し、更に勢いを高めている。
もうこの猛攻を止められる魔物はもういないだろう。最後の最後を除いて……
しばらく戦いを続けていくと、魔物が突如戦闘を放棄し、一目散にどこかへ向かい始める。
その光景を見ると、その光景を見た事のない者は狼狽する。が、この光景に見覚えのある者達は一も二もなく魔物達の後を追いかける。
「な?! 魔物達が退く?!」
「ボケっとしてんな! 急いで後を追え!」
「ボスチェンジだ! ついに始まる、いや、終わるぞ!」
「ええ?! あれが!?」
「な、なんでお前らそんなことわかんだよ?!」
「ばっかおめー俺らはあれ一度生で見てんだぞ! 見間違えるもんか!」
ボスチェンジ、その言葉にある者は恐れおののき、またある者はついに来た終わりの始まりに心を滾らせる。
何せこれは戦いの終着長らく時間のかかった一つの都市の終わり、人々が魔物に対してあげる反撃の狼煙がついに上がるのだ。気持ちが昂らない訳がない。
「急いで後を追うぞ! これが最後だ! 気合入れろ!」
「よっしゃあああ! 行くぞー!」
勇み足で向かう探索者達、長かった一つの都市の戦い。その終幕は目の前だ。
………………………………
ここは一地方都市の中心部ともいえる繁華街。魔物達は今まさにここへ集結し、今まさに最後の一匹となるべく互いを食らい合う。
初めてこの様子を見た時はだれもが戦慄し、意味の分からなさに怯え動きを止めていた。だがしかし今の探索者達はこの行いの意味が分かっているからこそ、怯むことはない。
「撃て、撃てー!」
「弱っていそうな魔物を狙え! 一匹でも生きてる魔物を減らすんだ! ボスに取り込まれる魔物の量を減らせばこちらが有利になるぞ!」
「うおおおおおおおおお!!!」
ギルドマスター達が必死に指揮を執り、遠距離攻撃の術を持つ探索者達はこの蟲毒が如き争いの中に対し躊躇なく遠距離攻撃を放つ。
流石にこの闘争の渦に人を飛び込ませることも、飛び込む事も出来ない。一匹一匹の戦闘力が高くて、下手を打てば自分が魔物の餌になりそうだからだ。
しかし遠距離による広範囲攻撃、あるいは射撃攻撃ならば話は別だ。これならば敵は近くの魔物にだけ攻撃範囲にしかいないせいでこちらを攻撃することはないので、こちらは一方的な攻撃を加えられる。
魔物同士の共食いのための同士討ちであっても、探索者達が魔法もしくは射撃攻撃を加えて人間がとどめを刺せば、その魔物を喰らう事はない。
つまり、共食いによるボスチェンジをある程度弱体化できると言う事でもある。正直に言って効果がどの程度見込めるかは疑問ではあるが、やらないよりはましと言う物だろう。
探索者による激しい攻撃さえ見向きもせずに互いが互いを食らい合う。
正直に言うとこちらまで攻撃を仕掛けることで敵を弱めることに加担している気もするが……それでもとどめを刺せれば共食いの量を減らせるのは魅力的だ。ただ傍観していては強くなる一方であることを考えれば、無意味ではないはずだ。今はそう思って攻撃を続けるしかない。
ここで生まれるボスモンスターと呼べる魔物。果たして鬼が出るか蛇が出るか……
………………………………
そうして探索者が積んだ魔物の死体その中心で生まれたボス(まもの)は、完全体となった今、けたたましい産声を上げ、その場のすべてをにらみつける。
それは、今まで見てきたボスに似てはいる物のやはりどこか違う。都市レベルのボスと言うべきものとして表れた。
そこに佇むのは大きな黒い魔物である。
パッと見は、モンスターキラーズも戦った、パワード・ブラックオーガバーサーカーだろう。しかしその身に放つ威圧感や覇気と言うべきエネルギーは尋常ではなかった。明らかに今までのエリアボスで済むレベルの存在ではない。
敵がどのように動くのかを、前衛を担当する物は瞬き一つせずに注視していた。
そのはずだった。しかしその一瞬。爆発が如き轟音があたりに響いた。
「ぐあああああ!?」
「ぎゃあああああ!!」
悲鳴を上げて吹き飛ぶ数十人。吹き飛んだ場所にはその恐るべき威力の攻撃は、吹き飛ばされた探索者の血痕以外にそれを窺い知る術はない。
それは、その場にいた全員が一瞬何が起きているのかが理解できなかった。
気が付いたら前衛の一角が吹き飛んでいたのだ。勿論見過ごした訳でもなければよそ見をしていたわけでもない。
ただ、恐るべき質量の敵が恐るべき速度で攻撃を仕掛けてきただけである。
しかしそれを理解するまでに探索者達はしばらく時間がかかった。そしてそれを理解した瞬間、探索者達に現れた感情は恐慌のみであった。
高レベル探索者でもギリギリ見切れるか否かと言う速度による攻撃。恐れない方が不自然と言う物だろう。
しかし、やはり同じような経験をしていたものはここでも格が違った。日本魔物大氾濫を彼らだけは、かつて一度味わった絶望を前にむしろ冷静な心境に立っていた。
かつては怯えて竦んだその一瞬、今度はしっかり見極め見切よう。そんなある意味無謀な、しかしてそれをなさねばあるのは全滅のみであると理解した心境が生み出した落ち着き。
それこそが経験によって得られた一つの力と言うべきものだろう。
その力一つをもって、強大なボスモンスターに挑む。その先にある勝利を信じて、戦いの火ぶたは切って落とされた。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は7月17日午前0時予定です。
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