第十九話 初戦
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皆様のご愛読、誠にありがとうございます!
「いけえええええええええええええええ!!!」
マイクのない声だったが、混乱の中にあって雨宮の声はよく響いた。隣のメンバーと秋彦は、その声にすぐに行動で答えた。
舞台の中央に引き返し、秋彦は観客達の中に飛び込むつもりで、跳んだ。が、秋彦は観客達を軽々跳び越えた。自分の身体能力の向上に驚愕しつつも槍を振るう。
巨大ムカデに襲われていた人達からムカデをつかんで引きはがし、刃引きをしてある槍で頭を払う。
だが、払ったつもりの巨大ムカデの頭は意外なほど簡単に切れた。どうやら【槍術】がLv3もあると刃引きをしてある程度では普通に切れてしまうらしい。
しかし襲われていた人達の数は多くないが、向かってくる巨大ムカデの数が多い。
襲われている人は放っておけないが、このままでは袋叩きにあってしまう……!
「『炎よ、我が命に従い、我が敵を焼け』フレイム!」
どうするべきか迷っていると、巨大ムカデの群れに炎が上がった。
辺りを見回すと、先ほどのファッションショーで隣にいたメンバーがフレイムを放ったようだ。
「すみません、助かりました!」
「ここは私がもらい受ける、君はその人たちを!」
「はい!」
すぐに、残りの襲われている数人から巨大ムカデを引きはがし頭を潰していく。
この場で襲われていた人数は3人。全員についていた巨大ムカデを全員倒して確認する。どうやらいずれも軽傷で済んだらしい。
それを確認し、辺りを見回して、他にも襲われている人がいないかを確認する。
別で襲われている人もいないことを確認し、襲われていた人に声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「う、ううう……痛い……」
「しっかり。動けない人はいないようですね。なら取り合えず舞台の方へ行ってください。我々の仲間がいますので」
「い、いったい何が起こって……」
「質問は後で。説明は仲間がしてくれます、急いで」
「で、でも……」
「早く! またムカデ共ががこっちに来ますよ!」
「ひ、ひぃ!」
「さあ、こっちです!」
もたつく観客を脅し気味に立ち上がらせる。
非情と思うかもしれないが、脅威が目の前に迫っているのに非情も何もないだろう。それに秋彦本人も焦っている。
あの量の巨大ムカデを一人で受け持たせてしまっているのだ。早くしないと間に合わないかもしれない。
そして舞台の近くにいる観客に対して大声を上げる。
「皆さん舞台の方へ避難してくださーい! ああいうのが襲ってきますよー!」
そういって巨大ムカデの大軍を指さす。
一瞬静まり返ったと思ったら、たちまち会場は大騒ぎになった。我先にと舞台を目指し、駆け出す観客。その流れに逆らってこちらにやってくるメンバー達。
雨宮はマイクをもって避難の指揮を改めて執っていた。
避難し出した観客、遅れてきた増援、避難の指揮。そこまでを確認し、怪我をした三人を敵から離れた場所まで誘導して、改めて最前線のメンバーの元へ行き、加勢する。
「すんません、加勢します! みんなも動き出してます。増援も来ますよ!」
「助かる! ちょっと手に余るところだったが、これならいけるか……ここは我々で片づけるつもりで行こう!」
状況を報告し、本格的に戦闘態勢に入る。
まずはパワーによるバフを自分と隣のメンバーに掛ける。
「『力よ、我に宿れ』パワー! 『力よ、彼に宿れ』パワー!」
「お、おおお?! これは凄い! 力が溢れてくる!」
高速詠唱をLv3まで上げたおかげでここまで詠唱の言葉を減らすことができた。単純に魔法発動の時間が減ったのはいいことだ。余計な時間を使わずに済む。
メンバーは初めて受けるのか、パワーでの強化に興奮していた。
「残りを焼き払ってください!! しくじったのを俺が仕留めます!」
「分かった! 『炎よ、我が命に従い、我が敵を焼け』フレイム!」
メンバーが放ったフレイムはあっという間に巨大ムカデ軍団を火の海に沈めた。
辛うじて生き残った分を仕留めるのも全く苦でないほどの量しか残っていなかった。そもそもあの巨大ムカデ達は炎が苦手だったらしく、ほぼ死にかけしか残っていなかった。
と、思ったところで秋彦は一つ思い出した。今の自分は無属性Lv3であり、ちょうど待望だったあの魔法が使えるようになっていたのだ。せっかくだから使ってみよう。
「『力よ、こいつを調べよ』アナライズ!」
するとダンジョンウォッチが突然起動しダンジョンウォッチの機能の一つである【ライブラリ】が表示され、アナライズで調べたこの巨大ムカデの情報が現れた。
名前:大ムカデ
レベル2
肉体力:20
魔法力:0
戦闘力:30
有利属性:地、水
不利属性:炎、風
スキル
毒噛み:(【モンスタースキル】【アクティブ】魔法毒の牙で噛む事で、確率で対象に状態異常【毒】状態にする)
絡みつき(【モンスタースキル】【アクティブ】長い体で相手を拘束することで、状態異常【拘束】状態にする。拘束している間は自身も動けなくなる)
「やっぱり一匹一匹は大したことないみたいですよ。囲まれないようにだけ気をつけましょう」
「あ、ああ。しかしさっきの魔法と言い君は……?」
「ただの無属性魔法使いですよ。無属性ってちょっと方向性が特殊みたいなんで。攻撃能力は低いですが、いろいろ便利なことができるんです」
「な、なるほど……特殊だという説明は受けたが、そう言う事だったのか……おっと自己紹介を。矢場 健斗だ」
「南雲秋彦です」
自己紹介を済ませ、握手をすると優太と、他のメンバー。おそらく矢場のチームメイトと思わしき人達4名がこちらにやってきた。
「秋彦! 大丈夫!?」
「おうさ、こっちの矢場さんって人のおかげでだいぶ楽が出来たよ」
「矢場、無事か?」
「ああ。こちらの秋彦君のおかげでね」
「そうですか。すみません、助かりました」
「いやいや、お互い様なんで。それよりもう行って良いんですか?」
「その前にコレ渡しとくわ。二人に前線やらせてる間に雨宮さんから配られたものなんだけど」
「あ、秋彦も。はいこれ」
そういって矢場は矢場のチームメンバーの女性に片耳のイヤホンマイクを渡された。秋彦も優太から渡された。
その後で眼鏡で口調が固い男性が話し出す。
「それをスマホにつないで音声チャット機能のあるアプリで通信しながら、常に動く様にとのことだ。今回はスカイトを使ってくれ」
「よし、じゃあ設定する」
「……親友手伝って」
「はいはい。秋彦こういうのだめだもんね」
あまり時間もかけていられないので、さっさとイヤホンマイクと音声チャットアプリの設定を行う。
「よし、設定完了!」
設定の完了した音声チャットからは、すでにあちこちからどこへ行き、どこからあふれている魔物たちを倒したかの報告が怒号の様に上がっている。
「そこから応援要請などもあげられる。物資、まあマジックポーションだが、そちらも雨宮さんたちがある程度集めていたようだ」
「ポーションが足りなくなったり、負傷者や一般人見つけたら、適宜ここに戻ってきてって」
「おお、そこらへんありがたいですね。分かりました」
「よろしい。では我々はいくとしよう。君らは二人の様だが、決して無理はせず、死なないように」
「はい、分かりました。お互い、こんなとこで死んでられませんよね!」
「……うむ、そうだな」
「いや、秋彦君は凄かったぜ、なんせ」
「はいはい、リーダー行きますよー」
と言って矢場チームは矢場を引っ張っていってしまった。
ここようやくいつもの二人に戻った。初戦はこちらが圧勝した。残りの戦いでも必ず勝つ。
「よし、じゃあ……」
「うん、行こう!」
さあ、ここからが本当の勝負だ。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!