第百八十五話 地方都市奪還作戦、ひと時の休憩
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
地方都市奪還作戦、都市部。昼過ぎから都市部の魔法力調査を開始して一日が経過。
探索者は都市部を前にして足踏みを強要されることとなった。まあ幸い開放した土地も町と言える程度には発展した場である。
そのおかげか人こそいないが宿泊施設などもちらほらあったりするので、宿泊のためにわざわざ大阪などに戻る必要はない。
だが、それ故に暇を持て余してしまうといったところか。勿論、昨日散々走り回った疲労を癒すにはうってつけではあった物の、少々お預けを喰らってしまった感はある。
「あー、チクショウ! 調査はまだ終わんねーのか!!」
「グダグダ管巻いてる暇があんなら瓦礫どかすの手伝えや! 自衛隊の人たちにだけやらせねーで俺達もやるんだよ!」
「わーってんだよ! うるせーな!」
「すみません、お待たせいたしました。こちらですね。あの、これ直ります?」
「ええ、まあはい。直しますので」
なので暇を持て余している探索者は、自衛隊の人と一緒になって魔物や一部自分達が戦闘で破壊してしまった瓦礫の撤去や、今回の都市部の破壊を修復するための工事を行う会社の案内に臨時で工事における力仕事などを各々が買って出ているのだ。
不満げに作業する物もいるが、どこも手が足りないので仕方がない。そして何よりこういった力作業と言うのは探索者からしたら得意分野だ。
何せ一人一人がレベルアップや装備による強化によって、パワーもスタミナも一般人のそれをはるかに上回っている。もはやブルドーザーやトラクター並みの力を持っていると言っても過言ではない。
一応あちこちで文句はあっても手は止まっていないこともあり、破壊された場所の修復はもりもり進んでいる。
その一方で今日と言う日をひたすら休みに当てている探索者達ももちろんいる。
「成程ねぇ。やっぱり大変だねぇ前線も。でも後衛の支援部隊も楽じゃなかったんだよ?」
「わかってるよー、大丈夫大丈夫、後衛部隊ばっか楽しやがってみたいなこと言ってないじゃない」
今日と言う日を全力で休むことに決めたレインボーウィザーズとモンスターキラーズ、そしてビューティフルドリーマーの面々。
不幸自慢、という訳ではないが苦労や愚痴を言い合う会になってしまっている。ちょっとした小高い場所から都市部を見下ろしながら、ビニールシートを広げて、優太が作ったお弁当を広げてのピクニックである。
「支援部隊はどういう所が辛かった?」
「僕らレインボーウィザーズはさ、後方に作られた拠点でひたすら補助魔法掛けてるわけじゃなくて、あちこち走り回りながら、異常のある探索者がいないかどうか、探しながら補助をばらまいてたんだよね」
「……私達は機動力もあるし、やっぱり見回りって必要になる。異常に気付けずにそのまま死ぬなんてことになったら大変」
レインボーウィザーズは従魔による機動性も相まって、本来後方に作られた拠点のテントで補助魔法をかけていくのだが、一部の魔法を使った補助を行う人々は前線部隊から少し遅れて何か異常のあって立ち止まっている探索者がいないかどうかを探していたりもしていたのだ。
レインボーウィザーズも魔法力と従魔による機動力の高さからその役になったのだが、これがまた大変だった。
生命力感知があるとはいえ、戦場を駆け抜けるのは基本一人と一匹だ。勿論魔物の残党がいて戦闘になっても戦う必要はないが、囲まれる時はあった。包囲網の一部を切り開いて逃げたり、巻き込まれた探索者と協力したりしてその場その場を必死で切り抜けながらの攻防も一度や二度ではない。
それでも戦闘の回数自体は前線よりは少ないし、そこまで危ない状態と言うのはなかなかなかったのだが、精神的に気を配らなくてはいけないのでかなり大変だった。
「そうだったんだ……シャロちゃんお疲れ様」
「ありがとうまっつん。でも悪い事ばかりではなかったのよ?」
「え? なんかいいことあったの?」
「うん! コロナ達従魔にとってはおいしい経験値稼ぎになったみたいで、今回でレベルがかなり上がったんだ!」
ジュディと奏の会話に優太が割り込んでくる。
今回の戦いでは魔物と直接戦う機会は少なかったものの、従魔達の元のレベルが低かったせいかハイペースでレベルが上がり、龍之介、コロナ、エリザベス、はレベルが一気に上がり、次の都市部侵攻でレベルが上限に行けそうになっており、それによって龍之介とコロナは進化まで行けそうなのだ。
「えー! すごいじゃん! さらに従魔ちゃんが強力になるの!?」
「うん! 上限まであと一歩なんだ! ああ、楽しみだなぁ!」
「本当よ、茜にはちょっと悪いんだけど……もしかしたらエリーも先に行っちゃうかもしれないわ」
「……心配いらない。雨宮さんにローンの申請をした。魔法鉱物資源はすでにそろえた。後は届くのを待つだけの状態。みんなで一斉に進化しましょう」
流石に抜け目のなさに定評がある茜である。やはり見ているだけの女ではない様だ。
「桃ちゃんの所の曲、何度も聞いてたよ! ビューティフルドリーマーをはじめとした東西きっての有名アイドルたちを始めとしたさまざまな歌の生演奏! いやーテンション上がっちゃったよ!」
「ありがとうエミー。でもあたしらはまだまだよ」
エミーがビューティフルドリーマーに話を振るがどこか謙遜し気味である。
「やっぱりさ、このメドレー形式の歌支援、実際にやってみるとすっごくキッツいのよ」
「そうそう、次の歌に切り替わりで歌の途切れるところを限りなく無くしたりとか、後歌の技量によって強化の幅がぶれたりもするのよね……」
と、堰を切ったかのように次々上がるビューティフルドリーマーたちの苦労。
バードによる強化も重要な強化であり作戦の要所の一つである。歌を連続で続けることでバードの強化を途切れさせないようにする。
それはいいのだが、どうやらこのバード技能による強化は各々の歌の力量によって強化に幅が出来るらしいのだ。
わざわざ外部の人間が歌番組に張り付いて計測していたらしい。後から聞かされた時はだれもかれも憤慨ものだったようだ。
まあ確かに気分のいい物ではないだろうが、衆目の目に映るものとして仕方ない一面はある。
「それと、終わった時正直喉がかなり危なかったね」
「ええ、休みなしで連続だったりしたらちょっと危なかったわ」
「でも、このとっておきの喉のポーション貰えたからよかったじゃない」
しみじみと喉の酷使を語る桃子と金雀枝だったが、ビューティフルドリーマーのメンバーが割り込んでくる。手に持っているのは小瓶で、中身はポーションの様だ。
どうやらそれは喜瀬川が作った、喉の酷使に驚くほど効くポーションらしい。数はそれほどないが、アフターケアは万全といったところだ。
そしてその話題を聞いて、今まで一言も話さなかった秋彦が話しかけてくる。
「……頼む……今日はポーションの話は聞きたくないからその話はやめてくれぇ……」
明らかに顔色が悪い秋彦。
その表情にレインボーウィザーズのメンバー全員が哀れみ、と言うか同情の念を抱いていた。
「ど、どうしたんですか秋彦さん?」
よくわからなくてポーションの話をし出したビューティフルドリーマーのメンバーがジュディに聞く。
「秋彦は昨日、ずっといろいろな人にたった一人で強化魔法をかけていたのよ。当然すぐに魔法力は枯渇するわ。だから……」
と言って下を向く。
そしてそれを聞いてなんとなく状況を察した。恐らく秋彦は昨日延々と強化魔法を人にかけるべく延々とポーションを飲み続けたのだろう。うんざりするほどに。
飲みたくもない物を延々と飲んで強化に勤しんだのだ。流石に今日はもうポーションのポの字も聞きたくなくなっているに違いない。
「まあそのおかげか、魔法力も上がったりしたらしいし、無属性魔法のレベルも上がったらしいんだけどね……三つも上がったらしいわ」
それは確かに驚異的な成長だ。魔法のレベルを一日で3上げると言うのはなかなか尋常ではない上がりようだ。だが約2,000人前後に午前いっぱい、午後少しと延々強化魔法を人にフルで掛け続けたことを考えると……
正直たった一日でレベルを3も上げたのかと言うべきなのか、それだけやってもレベルが3しか上がらなかったのかと言うべきなのかは、疑問と言わざるを得ないだろう。
ともかく、その日はポーションの話題は極力出さないように気を付けながら、三チームのピクニック時間は過ぎていくのだった。
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