第百七十八話 地方都市奪還作戦、疲労と移動速度!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「よし、また一つ進んだね!」
「ふいー……しっかしまぁ本当にきりがないな……ちょっと行っては敵が出てちょっと行っては敵が出て……」
「ちょ、ちょっと休憩しようよー……」
「さ、賛成です……」
モンスターキラーズの面々は先ほどから走っては敵を倒し、走っては敵を倒しを繰り返している。もう何度目のエンカウントかは覚えていない。
それでも意気揚々と剣を掲げる真崎に対し、笑屋は少し疲労がたまってきているらしい。
後衛の石崎と言葉に至ってはもうへとへとである。
「まだ始まって一時間ってところだけど、疲れたのかい?」
「へとへとだよー……今までこんな長い間ぶっ続けで動き回って敵を倒したことなんてないじゃないかー……」
「なんで……真崎君にまっつんは……そんなにけろってしてるんですか……」
「探索者になる前から鍛えていたからねぇ。そんなもんさ」
後衛による疲労困憊ながらの抗議は、さらっと流されてしまった。
真崎は道場での剣の稽古から、奏は陸上部でのトレーニングから、それぞれ体力には自信がある。
笑屋もアイドルの追っかけやっていて、全国あちこちの会場に足を運ぶタフさから体力には自信があるが、二人に比べれば一枚落ちる。
後衛の石崎や言葉も探索者を始めて体力は大分ついたのだが、それでももともと運動をあまりしていなかった二人。
体力に差が出るのも致し方ないと言う物である。
「俺も体力にはそこそこ自信あるけどやっぱ疲れるさ、俺のスタイルは結構疲れやすいもんでね」
「体力ないなぁ……っていいたい所だけど、エミーは相手が動いてから動くから精神すり減らすもんねぇ」
「これが俺の選んだ道とはいえ、俺が主力として使ってる防御系のスキルって結構タイミングシビアだから……常にだしときゃいいタイプの魔防壁とかと違ってブロッキングや真剣白刃取りはそうはいかんし……」
しかし、それを差し置いても笑屋が疲れ気味なのは笑屋の選んだ戦闘スタイルに原因がある。
防御系のスキルと言うのは大体二種類ある。
一つは魔防壁などに代表される広い防護範囲を活かし、一度展開したらひたすら守るだけのガードタイプ。そしてブロッキングや真剣白刃取り等の、守るだけでなく反撃を行うカウンタータイプ。
普通に考えれば、守るだけでなく何かを行うことの出来るカウンタータイプのスキルの方が能力としては上の様な気もするが、実はそうではない。
なぜならカウンタータイプの防御スキルは総じてスキルの発動タイミングが非常にシビアだからだ。
ボクシングのカウンター等も、うかつに決めようとすれば一方的に殴られるだけだし、格闘ゲームでいう当て身技もタイミングよく攻撃を受けることが出来なければただ攻撃を喰らうだけになってしまう。
これらは相手の攻撃を見切り、その上で当てられるべき場所に当てられるべき攻撃を当てられることで初めてその攻撃を利用し、自身の攻撃に利用し、強烈な攻撃を繰り出したり出来るのである。
笑屋が持っている防御スキルは、守りに活かせるものは装備から手当たり次第に修行しているおかげでそれなりに数はある物の、使いこなすのはやはり難しい。
特にカウンタータイプは気を使う物が多く、カウンタータイプで実戦使用できるのはブロッキングと真剣白刃取りだけと言っていいだろう。
それでも十分すごい事ではあるし、伊達に防護者と呼ばれてはいないのだが。
「しょうがないわねー、ちょっと休憩しますか」
「おー、さんせー!」
「はぁー、くったくたです……」
「わりーな二人とも」
「いざって時に疲れていて力が出ませんじゃしょうがないしね」
という訳で、体力が低かったり消耗が激しい人の為に、その場に座り込んで休憩を取り始める。
体力に余裕のある二人の内、真崎は、それぞれ昂った精神を落ち着けた後、武器を砥石で研いで次の戦いに備える。
奏は休憩しつつも適度に柔軟体操を行って体を冷やさないように適度に動いていた。
そうして各々休憩を取っていたら、奏がふと興味を覚えて笑屋に尋ねる。
「それにしても移動を始めてから、かれこれどのくらいまで来たっけ?」
「えっとちょっと待って……ああ、スタート地点から今いる場所で、道を指定してっと……あ、出た出た。大体30㎞ってところみたいだね」
「そんなに走ってたんですかあたし達?!」
笑屋がスマホの地図アプリを使ってちょちょいと測ってみると、そのように出た。
その答えに奏より言葉が驚愕する。だが、奏どころか真崎も笑屋もどこ吹く風だ。しかもさらに驚愕の事実を突きつけて来る。
「そうみたい。ただ、地図上での話であって実際はどうだかわからないよ。寄り道とかいろいろしての30㎞だからね」
「そうそう。私達はただ走ってただけでなく、合間合間に戦って止まったりしてたから……それに速度的にはもっと走っている時のスピード出てるはずだけどね」
「だよねぇ。一時間の移動距離が大体そんなもんなら時速30㎞ってところだし、それじゃゆっくり走る原付と変わらない」
「……まずローラースケートでそんな速度でないですよ普通……」
「そんなことないさ。探索者でなくてもローラースケートで時速64㎞出した人とかはいたらしいし」
「その人本当に人間なんですか?!」
事も無げに言い放つ三人に驚きを通り越して呆れてしまう。
これでは例え探索者であっても疲れると言う物だ。なにせ開始一時間で既に車並の走行距離をローラースケートで走り抜けつつ敵と交戦しているのだ。
常人ならとっくにぼろ雑巾になっている。正直疲れない方がおかしいともいえる。
「まあついてこれているあたり、もうことちゃんもいっしーも常人の範疇じゃねーから、そこは自覚しときなよ?」
「わ、分かってます!」
「……知らない間になんか俺ら遠くに来ちゃったなー」
ちなみに、彼らは知る由もなかったことだが、彼らの瞬間最高時速は100㎞を軽く超えている。いちいち止まっての戦闘を繰り返していたことで移動距離が伸びなかっただけなのだ。
こうして休憩が終わり、五人は再び猛スピードで戦場を駆け抜けていく。初速も時速も、ローラースケートのレベルではない速度で。
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次の投稿は6月2日午前0時予定です。
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