第百七十七話 地方都市奪還作戦、モンスターキラーズの戦い!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
前線部隊の攻防は一方的な蹂躙にも等しいほどの快進撃だ。
その中にあっても引けを取らない勢いで敵をどんどんと倒していくモンスターキラーズの面々。
特に前衛三人のメンツの速攻ぶりには拍車がかかっていた。
「は!」
「はい!」
「よ!」
「ほ!」
「とりゃ!」
「せいや!」
まるで餅つきでも行うかのように息の合った動きを見せる笑屋と真崎。やっていることは敵をテンポよく倒しているだけなのだが。
真崎は攻撃力こそ高い物の、機動力を優先していて鉱物性の防具はあまり多く付けていないせいで防御能力が低い。それを笑屋がカバーしているのだ。
笑屋の常套手段は、敵に襲い掛かられたときは冷静に敵の行動を見切り、スキルによる防御を行い、守ると同時に相手の能力を下げる、または攻撃してきた相手を拘束するスキルで敵を足止めし、その隙をついて高攻撃力の真崎が一撃で敵を葬るコンボを主体にしている。
笑屋が止めて、真崎が斬る。笑屋が隙を作り、真崎が斬る。
それをテンポよく繰り返しているとまるで餅つきの様に互い違いにうまく行動が出来るのでとても軽快な戦いになるのだ。
「よし、この辺りの敵は終わり!」
「うんうん、いい感じ。俺とエミーは剣と盾としていい感じで専門性が分かれてていいね」
「まーね。やっぱりどんなのであっての敵を自分から殺しにかかるのは俺らしくねーしね」
「本当にエミーは変わらないな、全く……」
ニヤッと笑う笑屋は相変わらずで、真崎も思わず苦笑してしまう。
しかしそんな二人に奏が割り込んでくる。
「ちょっとちょっとお二人とも、感傷に浸るのはいいけど新手だよ」
「え、いつの間に?!」
すぐ近くの物影を見ると、確かにそこにはゴブリン系の魔物が数匹いた。言われるまで気が付けなかったところを見ると、気配を消せる、暗殺者タイプらしい。
「隠れてたみたいね。ただ馬鹿正直に向かってこないだけ敵もやっぱりそこそこ頭が回るみたいよ」
「あっぶね、ありがとう」
「いいわよ、これが私の仕事だし。それに、もう終わってるしね」
そういう奏はどこかいたずらっぽく言う。
そういえば敵がはっきり視認出来ていると言うのに敵が襲い掛かってこないし、逃げ出そうともしない。
よくよく見るとゴブリン達は全身が痙攣している。今このゴブリン達は、ピクリとも動けなくなっている。やったのは勿論奏だ。
「さっすがまっつん。仕事が早いね」
「いやー、大阪は御注射ナースさんの活動拠点だけあっていいポーションいっぱいあっていいね。状態異常付与ポーションも心なしか効きがいい気がするよ!」
嬉しそうに状態異常付与ポーション、要するに毒の入った小瓶を取り出して嬉しそうに手の中で転がす。
奏は、武器に毒を塗っての攻撃で、大量の敵相手に、わずかに傷をつけることで敵を挑発し、攻撃をかわし続けることで味方の盾になり、あわよくば、毒によるダメージで敵を倒したり、足止めしたりする戦法を使っている。
つまり敵をいち早く発見し、その上で敵を攻撃してヘイトを集めての回避盾となり、あわよくば状態異常でじわじわと倒していくのが奏のスタイルだ。
素早さこそが自分の最大の長所であると心の底から信じる奏が、戦闘においてどうしたら一番活躍できるかを考え抜いた末にたどり着いたスタイルである。
「じゃあ、いつも通りね」
「はい、よろしく」
そして真崎は、いつもの様に動けない敵の首を一瞬にして落とす。漫画の中で侍的な人たちが剣を振るい、鞘にしまうとたちどころに敵が斬られ、血が噴き出すシーンはよくあるが、真崎はそれを現実でやるのだ。今のところ真崎の妖刀の一撃で斬れなかったものはない。
こうしてみると前衛は、高火力ながらも紙装甲である真崎をいかに守り抜き、いかに最大限に利用するかに焦点を置いた構成になっていると言える。
直接的なダメージソースとなりえるのは前衛では真崎だけ。
奏は速度によって敵を翻弄するスタイルを、笑屋はスキルによるガードで敵の能力を下げたり体制を崩すことに重点を置いている。どちらも敵を倒すと考えた時には一手足りない。
このチームの前衛の核はリーダーの笑屋ではなく真崎なのだ。
「……そういえば後衛陣は?」
「いるよほら。あそこ見てみなよ」
「え? ……うわ、派手にやってるし」
後衛陣をまた置いてけぼりにしていないかと所在を聞いたのだが、奏に言われるがままに指さされた方向を向いた真崎は、そのもはや見慣れた惨状に感想を漏らす。
振り向いた先にあったのは、燃える銀世界だ。
そう、銀世界。この夏も佳境であると言うこの8月に。今日の気温は38度前後の予報を覆し、その一帯だけ0度以下まで下がっている。
言うまでもなくこれは魔法によるものである。石崎の魔法によるものだ。
元々石崎の得意な系統は水と土だ。どちらも質量こそが力であるゆえに、水や使える土を集めなければならず、挙動が遅い魔法と言うのが通説だった。
しかし、石崎が覚えた魔法は、そんな水属性魔法の常識を変えた魔法であると言える。
水魔法レベル12で覚える魔法、ブリザードだ。
これは辺り一帯に小規模の吹雪を発生させ、敵を凍らせる魔法だ。大気の湿気を雪に変え、凍える風を以って敵を凍らせ動きを鈍らせる。水属性が覚えることが無かった広範囲魔法である。
そして氷によるダメージと寒さによって動きが鈍った所に、言葉が炎魔法による爆発を打ち込み、炎と氷が入り混じるある意味幻想的ともいえる様な惨状が出来上がったのだ。
「ふう、結構数いたけど、僕とことちゃんならこんなもんだねー」
「ふふ、あたし達で止められなかったらもう逃げるしかありませんよ。あたしたちはチームの最大火力なんですから」
どことなく恐ろしげな笑みで笑い合う二人。
この二人はチームの中の魔法火力担当でもあり、魔法ゆえにちょっと出力に時間がかかる物の、広範囲の殲滅は今やお手の物である。
「派手にやったなおい。魔法力は大丈夫か?」
「お気遣いなく。これでもポーションや自然回復量も考えて撃っていますので」
「そっちは大丈夫だったー?」
「あたぼうよ! 後衛無しでも行けるくらいだ。楽勝楽勝!」
笑屋、余裕のガッツポーズである。そうして笑い合う五人はこの場にそぐわぬほどに年相応のふるまいだった。
しかしそれもすぐに収まる。
「皆!」
笑屋の一声で全員戦闘態勢である。新手がやってきたらしい。
そして五人は再び戦火に身を投じる。今の五人は凄腕の探索者であることに、もはや疑いはないだろう。
今日と言う一日は、まだ始まったばかりである。
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次の投稿は5月30日午前0時予定です。
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