第百六十九話 企業との交流パーティー 大人の事情
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
改めて吹雪とあいさつをした後、吹雪は改めて秋彦達を見てうんうんと頷いた。
「しっかしまあお二人とも偉いですなぁ、こんな大人の事情全開の場に文句も言わずにやってきているんですから」
「あ、やっぱりそういう物なんですかね?」
「そらそうですよ。企業でいえば零細的な探索者にとってもこういう場は嬉しいんでしょうけどね、でももっと嬉しいしやって欲しいのは他ならぬ企業さんの方ですからね。俺が給料人やってる会社の営業さんも来てるくらいですからねぇ……」
そういうと吹雪はまたため息をつく。普段吹雪にある、メイクの様な目元の隈が、本当に寝不足による物だとすると、普段の仕事がいかに過酷であるかと言うのが透けて見える気がする。
そう思うと秋彦はどうしても聞きたくなってしまった。
「吹雪さんって、どうしてそんなにこき使われているのにお仕事辞めないんです? 探索者の方がよっぽど稼げるでしょう?」
「……まあね。普通に考えればそうなんですけどね……」
そういう吹雪の目はどこか遠くを見ている様に見える。
「これは俺の会社だけって話じゃないからお二人とも覚えておいた方がいい。うちの会社はね。今でこそ俺でさえこんな扱いだけど、実は最初っからこんなブラックってわけじゃなかったんですよ」
「え、そうだったんですか?」
「そうですよ。最初っからこんなブラックな会社だったらこっちから願い下げだって話です」
吹雪の叔父が経営している会社は、元はと言えばただの食品の製造業であり、業績も不振な所もなく、良くも悪くも平々凡々な一企業だったらしい。
しかしあの魔物が氾濫し、世にダンジョンが知れ渡ったあの時に社員の中に家族を氾濫で失った人々が現れ、それ以降理由は様々だが、仕事を辞めざるを得ない状況になる人が増えたことで人手が激減。
そしてその負担は既存の社員に上乗せする形になり、社員一人一人の負担が増加したらしい。
その状況をしり目に離職などできず、そもそも吹雪は叔父の会社と言う事で入社した、いわゆるコネ入社である。
本人はその立場に甘えず一生懸命に仕事を覚えたうえで一人前になっていったようだが、やはりいい顔はされない立場であり、そもそも叔父の会社と言う事で入社した引け目もあって、探索者となった今でも心情的に会社を辞めづらい状態が出来上がってしまったらしい。
「そ、そんなことが……」
「それに、うちの会社はもともとだいぶホワイトな会社だったんですよね。あの忌々しい氾濫騒ぎのせいで人手が減るまではね。そこも含めて自分が広告塔になれば求人的にもいい人が入ってきて、自分達の負担も軽くなるんじゃないかなって気もしているんですよ」
「そうなんですね……吹雪さん我慢強いです……」
「なーに俺よりも古株で頑張っている方々に比べればまだまだでさぁ。それに最近になって状況もまた変わってきていますしね」
「状況が変わって?」
「ええ。なんでもうちの会社もこの迷宮探索の業界に大きく興味を持っているみたいでね。何とか一枚噛めない物かと画策しているんですわ。そこで俺がいること自体が利益にもなって来てましてね」
嬉しそうに語る吹雪。
どうも自分以外の探索者を引き込めれば、探索者用の新商品を開発し、会社の製造ラインの一部を探索者用に回し、探索者相手に商売を始める目途が立ちかかっているらしい。
会社にとっては事業拡大のチャンスであり、吹雪にとっても、事業拡大は人手不足解消の足掛かりでもある。双方にとってメリットがあることで、吹雪が広告塔として表に立つことになったらしい。
「まあ、俺もなんだかんだ叔父の会社は好きなんでね。何とか元のホワイトカラーに戻って欲しいってのがあるんですわ」
「おお……何というか本当にお疲れ様です」
「ありがとうございます。そしてその最後の仕上げになるのが、地方都市奪還作戦の完遂な訳なんですわ。今回の作戦、日本の皆さんにとっても、我が社にとっても、そして俺自身にとっても進退が決まる大事な戦いになる訳ですよね」
力を込めて語る吹雪。その眼には完遂への意思と決意が漲っていた。
「だから秋彦さん、次の戦いからは決して気を緩められません。これは俺たち日本人のすべてをかけた戦いであると同時に我が社の社運をかけた戦いでもあるんです。必ず成功させましょうね!」
そういって力強く手を握ってくる。
手を握りつぶさんほどに力強く握られる力は、必ず成し遂げる思いが込められているようにも思えた。
秋彦はその思いにこたえる様に握る手を固くする。
「ええ、勿論です。これで終わり。次の戦いで終わりなんです。負けていられませんよ!」
「はい、今度こそ、この日本には魔物の居場所なんてないと言う事を教えてやりましょう!」
秋彦が答えると優太も一緒に声を上げる。それに対して満足げに頷き、手を離した。
「ああそうそう。ちなみに、地方都市奪還作戦の内容については明日話があるみたいですね。恐らく今日が最後のゆっくりしていられる日になると思いますよ」
「え?! そんな話ありましたっけ?」
「ああ、これは北海道ギルドのマスターからこっそり教えられたことなんで、まだ公ではないです。このパーティーが終わった直後位に電脳ギルドから通達来ると思いますよ」
青天の霹靂である。
もうそこまで話が進んでいたことに驚くと同時に気分が高揚してきた。作戦の発令は明日。明日からついに魔物の掃討作戦が始まる。そう思うと気分も昂ると言う物である。
「まあ、てなわけで、話もそこそこに明日はしっかり備えましょうねと言う話です。じゃあすみませんがそろそろ行きますね。今更ですが仲間を待たせてますし」
そういって吹雪はその場を去った。爆弾の様な大きな一言を残して。
尚、これ以降は特に何もなくパーティーは無事終わったが、その日の夜に本当に電脳ギルドから連絡があり、再び会議室で地方都市奪還作戦の本格的な内容についての説明があると通達があったことに驚くことになった。
間もなく決戦である。
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次の投稿は5月6日午前0時予定です。
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