第百六十六話 企業との交流パーティー 新たな出会い
累計PV数264万突破、評価者数460人突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「……今ので何人目だっけ?」
「先方はこっちで把握しているから大丈夫よ。ちなみに48社目ね」
「うおお……そんなに来てたのか、道理で途中で分からなくなるわけだ」
次から次へと押し寄せる企業の営業の人、あるいは人事の人達にもみくちゃにされ、すっかりげんなりしてしまう。まあ、ジュディによると述べ48社もの数の人々と代わる代わる挨拶をしていればそうなってしまうのも仕方ないのだが。
ため息交じりにぼやきがでても仕方ないと言う物である。
「しっかしよくもまぁこんなデカい場所借りてパーティーなんて開けたなぁ」
「たぶんだけど、ギルドが売り払う素材の買取先である企業がこういう場を開くようにごねたんでしょうね……」
「え? なんで?」
「それは当然、探索者と言う人材が欲しいからね。今探索者って超売り手有利の市場なのよ。今自分が探索者であると言うだけでも、探索者が生み出すお金や素材、そしてそれを持って作られる装備やアイテムによる利益を手に入れたい企業としては、探索者ってやっぱり確保したいものなのよ」
昨今、探索者達は急速に地位を得ている。
と言うのも、探索者達の活躍が大々的に報道される現在、探索者達の収入面なども目に付くようになってくる。
一つ何十万、何百万もする装備の数々を、命には代えられないと豪快に買い、その装備を使って研究や武器防具、道具の元となる素材を大量に手に入れて売り払い、巨万の富を手に入れる探索者達。
命の危険は常に付きまとうとはいえ、個人や一グループレベルの規模にも拘らず経済活動を驚くほどの規模で行う人々である。
この探索者達を相手に自分達も商売を行えば、自分達もこの活発かつ巨大な市場に一枚噛むことが出来る。そしてあわよくば高レベルの探索者達を顧客に持つことが出来れば、探索者が生み出す金を自分達も手にすることが出来るかもしれない。
そうなったら、それは会社の儲けだけでなく、自分達の評価にもつながるだろう。金蔓を手に入れたようなものなのだ、それはそうだろう。
企業は今、自分達が出来る中で、どうやって探索者達に自分達の企業業種が絡んでいけるかを考え、どうすれば探索者を顧客に持つことが出来るかを真剣に考えているのだ。
そしてそれを考えるためにはやはり探索者の目線で物事を考えられる人材が必要としており、そしてそれは、結局の所探索者以外にあり得ない。餅は餅屋に任せるべきなのだ。
故に今、各企業は探索者の業界に参入すべく、探索者を探し雇い入れることが使命になっていると言えるのだ。
「まして今ここにいる探索者達って、皆超有能な時代の先駆者であり、金の卵を産む鶏の様な物だもの。今はどこの企業だって探索者が生み出すであろう利益に一枚噛むために、一人でも多く優秀な探索者をより良い条件で雇用したり専属契約をするために必死になってるわよ」
「そうなのか? ……でもさ、探索者の仕事なんてダンジョン潜って素材や道具売るだけじゃない? だったら今まで通り依頼形式でもいいんじゃないの? 得意先の企業を作って定期的に依頼が来るようにするにしたって、そこまで必死になるようなことじゃないんじゃ……」
「ノンノン、それでいいのは個人経営の探索者だけよ。大企業が本気で探索者業界に乗り込むっていうなら探索者の仕事がそれだけな訳ないわ」
探索者が企業と組することになったら、ただ企業に素材を売り渡すだけという訳にはいかないだろう。
例えば試作品の試験運用。わかりやすい所では武器が分かりやすいだろう。試作の武器で敵に対しどのくらいの効果があったかや、付与できたスキルの実用と言った使い勝手をレポートにして提出する。それによって武器の性能を調べて販売に足る装備を作り出す。
防具も同じで、耐久テストや防御能力のチェック。道具はその効果の検証だったりするのだ。
また、レベルが高いほど生産スキルのレベルも上げやすいこともあって職人としての活躍も期待される。もともと本職の鍛冶士の人達もそれぞれのスキルを持っているが、探索者はレベルが高い事もあって習得が早く、本職の人をあっという間に追い抜いてしまう事も多い。秋彦の骨加工スキルなんてその典型の様なものだ。
探索者の業界に絡むなら探索者がいるに越したことはない。むしろ、そのどれもで探索者の目線になれるので、高レベル低レベル関係なく探索者は重宝されるのだ。
「そうか、まあそんなもんなのかな」
「そうよ、ほらあそこみて」
ジュディが指した所には熱心に勧誘しているスーツをビシッと着込んだ中年男性とそれにたじろぐ数名の男女。そしてその間に割って入っている男性がいる。
「うあー、あれ困ってんじゃん。あの中年の人ってひょっとして企業の人?」
「ええ。あれはお父様と参加した懇談会でも見た人ね。がっついちゃってるわ。みっともない……」
間に割って入っているのはギルドの職員らしい。普通の話をするときはまだしも、勧誘された時は基本的に必ずギルドが間に入るようにしているのだが、途中から勧誘に代わってしまってしまう事はままあること。
そこで変な契約を結ばないようにギルドの職員が巡回して勧誘をされている探索者がいるときは間に入って話をするようになっているのだ。
ギルドが間に入らないと探索者に対してかなり不利な内容の契約であるときが多いらしい。
それでも相手は営業活動のプロであり、交渉における海千山千の達人だ。ついこの間まで一般人だった人も多い探索者ではうまく言いくるめられてしまう事が目に見えているための措置である。
「はぁー、そんな詐欺まがいのことしていいのかよ……」
「いやー、企業も別に騙すつもりはないんやで? ただ、あれや。ジュディさんの言葉を借りるなら、探索者の目線が足りてないってだけなんや」
「そうなのか、へぇー……って」
急に話に入られて自然に返してしまった。声を掛けられた方を見てみると、男女のペアがいた。
男の方は柔和な笑みを浮かべている二十代中盤くらいの男性だ。スーツ姿がとても様になっている。全体的に狐を思わせるような雰囲気を発している。
そして男性が狐っぽいというなら女性の方は猫っぽい雰囲気だ。大きな瞳と人懐っこそうな笑顔でこちらを見ている。
この二人は見覚えがある。この二人はメーツーで見たことがあるのだ。昨今の探索者なら顔位はだれしも知っているはずだ。
「あ、どうも初めまして。浪速商人連合のリーダーさんとサブリーダーさんですね。初めまして、レインボーウィザーズの南雲秋彦です」
「秋彦さん、俺らは探索者であり商人です。ある意味身内みたいなもんですし、堅苦しいのはやめにしましょ。まあ名刺交換はしときましょ。よろしゅう。糸魚川言います」
「え、ああ、はい」
そういって名刺交換をしてきた男性は浪速商人連合、探索者リーダーの糸魚川 漸次だ。
「どうもー、お互い顔は有名でも顔を合わせるのは初めてやね。喜瀬川です。喜瀬っちって呼んでな」
「あ、ああはい。どうも……」
喜瀬川は人懐っこいというかやたら距離が近い気がする。
「秋彦さんとはぜひ一度ゆっくり話したいなー思ってまして。兄も秋彦さんのファンなんですよ」
「あ、ありがとうございます」
ずんずん距離を詰めにかかってくる。やはり商人とはたくましいと言うか押しが強くなくてはやってられない物なのだろうか。
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次の投稿は5月3日午前0時予定です。
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