第百六十四話 企業との交流パーティー 入場
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「どうも雨宮さん、こんにちは」
「やあ秋彦君。よく来てくれたね。さあこっちだ」
子供たちとの交流を図った次の日。秋彦は指定されているホテルへやってきた。今日はここで企業と探索者の交流パーティーがあるのだ。
秋彦達レインボーウィザーズも、今をときめく探索者のトップクラスの一人としてここへ招待されたのだ。勿論レインボーウィザーズ全員である。
尤も、招待と言うよりは強制参加なのだが。雨宮曰く「君らがいなきゃ始まらないまである」のだそうだ。
「しかしパーティーか……俺そういうのとは今まで無縁でスーツも何もないんですけど……」
「まあ君の年齢なら仕方ないさ。それに、そうだろうと思ってこちらでパーティースーツを用意したんだ」
「すみません本当に、いつも助かります」
「何、いつもこちらが助けてもらっているから。こういう時はこちらが助けなければね。それに探索者の中にはパーティースーツを持っていない人は結構いるんだ。君の様な高校生だったり、スーツが必要ではない業界にいる人なんかね。そういう人の為にこういう場を用意したんだ」
そういいながら案内されたのは、ずらりとパーティースーツが用意された部屋だ。大小様々なサイズのスーツを取り揃えているらしく、探索者達も結構な数がここで着替えをしようとしていた。
「おおー、壮観ですねー!」
「だろう? ちなみにスーツは本当にただのスーツだから、あまり無茶な動きをしちゃだめだよ? 破ったら強制で買い取り、弁償だからね」
「わ、分かりました……」
「特に君のは特注品なんだから。気を付けてね?」
「はい。でも、どうやって僕のスーツを特注したんですか? サイズとかよくわかりましたね?」
「忘れたのかい? かつて君に鎧の元となった衣装を手配したのは誰だっけ?」
「あ……そうかそこか」
「そういう事。では受付で受け取って着替えてきてね。レインボーウィザーズは君が最後の入場だ」
「あはは……本当に申し訳ございませんでした」
言われて思わず頭を掻いてしまう。実は秋彦、今日のパーティーにおいて会場入りがレインボーウィザード中最も遅かったのだ。
前日だったと言うのに夜遅くまで人に見せたり配る用のアクセサリーを作っていたのが原因だ。そしてこのパーティーにおいてメンバーがそれぞれ会場入りの時間がバラバラだったのもある。
例えばジュディは様々な企業と顔を繋ごうとして受付時間ぴったりに会場入りをし、茜と優太も少し遅れた物の時間通りの会場入り。桃子と秋彦がパーティー開始時間ギリギリに会場入りとなった。
とはいえ仕事で遅れかかった桃子と自業自得の秋彦を比べるのは少々酷と言う物だが。とにもかくにも慌てて着替えを受け取ってから着替えて出て来る。
秋彦に用意されたのは、いわゆるブラックスーツと呼ばれるスーツだ。文字通り黒いスーツであり、どこであっても問題なく着ていて問題のない汎用性の高いスーツだ。シルバーのネクタイがよく似合っている。
「おお、よく似合っているね。そのスーツなら、カジュアルなパーティーもフォーマルなパーティーも問題ないよ。それは君にあげるから、これからは何かあったらそのスーツを着てね」
「わかりました。はい」
「じゃあ早く会場にいこう。みんな君を心待ちにしているから」
「あ、ハイ」
そこからまた雨宮が先導して秋彦を会場へ連れていく。
正直秋彦にはさっきからやたら上機嫌に見えるがそれは何故なのか。疑問に思いながらも二人は大きな扉の前に到着する。
「さあ、ここが交流パーティーの会場だ。そうそう、秋彦君名刺は持っているかい?」
「あ、いえ……」
「まあそうだよね、その年齢で名刺がいるなんてそうないもんね。という訳で、はいこれ」
申し訳なさそうにしている秋彦に対し、雨宮は笑っている。
名刺なんて物、昨今大人でもなかなか縁のある所にしかないようなものだ。まして未成年の少年と言える年齢の人が持っている物でもないだろう。雨宮はそこを分かっていたようだ。
雨宮が内ポケットから小さい透明なケースと皮で出来た定期入れの様な大きさの物を渡してきた。透明なケースにはトランプのように大量の紙が入っている。皮のケースはどうやらカードを入れるためのカード入れであり、そちらにも同じ紙が入っている。
「あの、これは?」
「よく見て御覧。それは君の名刺だよ」
「え、これ、俺の?!」
慌てて確認すると、パッと見えるところには雨宮のギルドである悪夢の終焉が掲げているギルドのマークが書かれており、裏を見てみると、秋彦の名前、ギルドの住所と電話番号等様々な情報が書かれていた。
「君に用があるときはまずギルドへ話が行くように、君の個人情報は名前だけだ。名刺を渡したってだけの変な輩から話が来ても嫌でしょ? 僕らギルドは君たち探索者を守る義務がある。話はまずギルドへにして、そこから話を聞いて大丈夫かどうかを精査しなきゃいけないからね。だから、聞かれても個人情報は渡さないようにね」
「ええ、ありがとうございます」
「うんうん、じゃあ最後に名刺交換のやり方だけ今ここで教えよう。名刺を渡されたらこれから教えるやり方で名刺を渡してね。こういうのにも作法ってあるんだよ」
「あ、わかりました。よろしくお願いします」
そして教わる名刺交換の手法と作法。念入りに何度もやって雨宮からOKを貰えたところで、最後に雨宮から声がかかる。
「最後になんだけどさ。ここにいる人って本当は悪い人たちじゃないんだよね。まあ中には本当に悪い人もいるのかもしれない。でも本当に全員がそうじゃない。今は目の前にある利益や人材と言った魅力的な物に目をくらんでがっついてきちゃっているんだよね」
「は、はぁ……」
「僕たちはそういった人たちを落ち着かせ、君たちがそんな人たちに使いつぶされることが無いように守りもするし、変な輩に絡まれたらそれからも守る。この場で大人の嫌な部分を見ることもあるかもしれないけど、僕らギルドは必ず君たちの味方だ。それを忘れないでね」
「は、はい!」
「よし、じゃあ、行こうか……!」
そうして、雨宮は扉を開けた。絢爛豪華な眩い光と人々が、それを出迎える。
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次の投稿は4月30日午前0時予定です。
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