第百六十二話 大盛況の武器防具市、職人たちとの交流
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「ふぅ……終わった……親父さん達元気だったな……」
「ごめんなさいね、お父様たちってば魔物とか気にせずに街を歩けるのが久しぶりって言ってはしゃいでいちゃったみたいで……」
「ああ……感動してたなそういや」
あの後は結局マクベス一家の大阪観光に付き合う形となった。各地の観光名所もそうだったが、何より都市の中で魔物が出ないことに感動していた。
海外では都市部であっても、迷宮の管理が甘いらしく魔物の氾濫が時々起こるらしい。
より正確に言うと、管理のための探索者の数が不足しているせいで、少しでも迷宮の管理を間違えたり怠るとたちまち氾濫がおこってしまうのだ。
最近は氾濫による対処や、魔物同士による共食いによる強化、海外でいうボスチェンジにも対応できる探索者が増えてきていることで大事には至らないのだが、その度に巻き込まれる一般人からしたら堪ったものではないだろう。
氾濫が起こった時に町中になる警報の音を聞くたびに、慌てて逃げ、探索者や軍隊による鎮圧が行われるのを待つ事は市民にとっても非常にストレスになるのだ。
しかも地方都市の扱いは今の日本と同じく、人手不足から都市部に流れ込んでくる人が多いというのにそのざまなのだ。
軍隊も力をつけてきているし、探索者も数は増えてきてはいるものの、まだまだまともに氾濫に対応できる探索者などは不足しているのだ。
尚、日本は現在、地方都市奪還作戦に参加できないが、入門ダンジョンなどの制圧なら行えるレベルの末端の数を入れると、探索者人口は約10万人にも上ると言われている。今回地方都市奪還作戦に参加できる実力を持つ人数は2,500人。この2,500人はエリート中のエリートと言えるのだ。
自衛隊の隊員も探索者としての鍛錬を行っており、約5万人が平均レベル20という高水準を保っている。
だが、今回集まった探索者の平均レベルは25で、最高レベルは30であり、レベル20は最低レベルである。
そして肝心の装備も、5万もいては高水準の物をそろえ切るのも一苦労だ。今回一律で高水準の装備をそろえ切れなかった事も相まって、自衛隊を主力とするには一枚落ちる。
と言う訳で、自衛隊自体は今回探索者のサポートに徹することになってはいるが、軍における探索者としての実力も持つ人材と言う点ではこれでもかなり大きいらしい。
「なんてーか、苦労してんだなぁ……」
「本当に、どこでこんなに差がついちゃったのかしら……」
ふぅ、と二人はため息をつく。とりあえずしばらくジュディは、日本語のできない両親について回ることになってしまっているので、今日は早めに休むことになった。
ジュディは明日、どうも先に来た会社の重役さん達との懇親会があるようで、それについていくことになったのだ。
「まああれだ。手を貸してほしい事とかあったらいってくれよ?」
「ええ。ありがとう。じゃあお休み」
………………………………
次の日、電脳ギルドから連絡が入り、商人や職人たちが大阪に到着し始めた事や、それに伴うギルドローンの受付などが改めて開始された旨が通達された。
と言う訳で、今日は龍之介と一緒に会議場の別階に急遽設置された武器と防具の職人、商人たちの出張店舗を回ってみることにした。特に何か買うわけではないが、まあ賑わいを見に行くというのも悪くないだろう。
そうして向かった出張店舗。その盛況ぶりは予想の上をいっていた。
露天商の様に床にずらりと並べられた装備の数々、威勢のいい掛け声は上がっていないが、商人と客の値段の交渉や性能の紹介で常にどこかしらから声が上がっている。
「さあ、見ていっておくれよこの鎧! 戦闘力が何と5,000も上がる逸品だ。お値段相応の能力を約束するよ!」
「おいおい何だこれ! 投擲用の斧でこの値段は高くないか!?」
「馬鹿言っちゃいけませんよお客さん、この斧は肉体力が2,000も上がるんですよ。まあ確かに投擲武器としてはお高いかもしれないですけどね、いざと言う時に一本あれば安心感が違うと思いますけどね?」
「これが新しいポーション? ……多めに買うからもうちょっとまけてくれませんか?」
「いやいや勘弁してくださいよ。これ以上は下げられませんって!」
かかる声もそれぞれで、見ているこちらも空気に飲まれて何か買いたくなってきてしまう。
なのでとりあえず武器や防具などを適当に見ている。
と、見ていると、どうやら武器や防具だけでなく装飾品も売っていることが分かった。時々武器や防具ほどではなくても装飾品を置いてあるスペースがちらほらある。
装飾品なら秋彦も作ったりしているので興味が湧いてみてみると、装飾品は50万円以下の値段で売られている物が多く、それに伴って肉体力や魔法力の上がりもそれほどよくないものが多い。
大体が肉体力を100上げたり200上げたりする物だったりする。それが大体20万円前後で売られている。相場としてはそんなものなのだろうか?
いくつか装飾品を見ていると声を掛けられた。
「南雲さん、装飾品が気になるんですか?」
「え? なぜ私の名前を……って、あんだけテレビやらなんやらとかに取り上げられといてそりゃねーか」
照れ笑いでごまかしておく。いつになってもこちらが顔も名前も知らない人が自分の事を知っているというのは慣れない物だ。
「装飾品が気になるってのはそうですね。これがこのくらいするんだって思いまして」
「今手に取られている物は、鉱物系の素材から作ったものです。肉体力の上がりは100程度ですが、スキルの付与がなされるので20万でもかなり頑張っている方なんですよ」
「そうなんですね。やっぱりスキルがある物って高くなりますよね。そのうち俺の作るものもスキルを付けられるようになるかなー……」
秋彦の作るものは、今はまだ肉体力の向上がなされるものが多い。勿論普通の物に比べれば上がり幅はいいのだが、そろそろスキル付きの装飾品にも挑戦したい所ではある。
そうつぶやくと店員さんが喰いついてきた。
「……え? 南雲さん、何か生産スキルを持っているんですか?」
「ああ、僕は骨加工スキル持っているんですよ。えっと……こういうのとか作ってます」
「すみません、見せて頂いても?」
「構いませんよ。どうぞ」
そういって秋彦は、自作のドラゴンスケイルネックレスを見せる。軽率に物を渡している気もするが、ただの商人である目の前の人物が秋彦から物をすり替えたり盗んだりしたら、後が絶対恐ろしいことになる。
そもそもここに集められた人々は皆事前にギルドから信用、信頼されてここに呼ばれている人たちばかりだ。素性も完全に把握されているのにそんなことするわけがないのだ。
安心して物を見せていられると言う物である。
そしてドラゴンスケイルネックレスを見た人はかなり驚いていた。
「こ、これはすごいですね……これ、肉体力とかの上がり幅どうなっています?」
「これは最近作ったもので、うちの龍之介がチャイルドドラゴンに上がってからの物だから肉体力1500上がりますね。僕の加工能力もそれなりに腕も上がりましたし、こんなもんかと」
それを聞いた周りが一気にざわついた。
「な、なんですって……? そ、装飾品で1500……?」
「ええ、まあまだ骨加工はレベル5なんで、そんなに大層なことは言えませんが」
「いえ、謙遜してはいけません。骨加工レベル5の職人なんて、私の知っている職人たちと同等レベルです。そもそも骨加工の職人って少ないんですよ。あまり人気が無くて」
「そうなんですか?」
「ええ、あまりやっている人は見ませんね。そのうえでこの上がり幅なら私なら300万で売りに出します。500万でもいいかも」
秋彦、値段を聞いて噴出した。
「そ、そんなにしますかね?!」
「ええ、だいぶ安く見積もっていますが……今の秋彦さん、骨加工の職人としても旗揚げできると思いますよ」
「え、ちょ、え……」
いきなりそんなことを言われてかなり動揺してしまっている。もとはと言えば龍之介の素材を無駄にしたり、やみくもに売ったりしないで自分で有効活用するために始めた物だったのに、十分商品になるとか、売るとしたらとしてかなりの高値を付けられて、正直どうしたらいいかわからなくなっている。
「何でしたらいかがです? このネックレスを売っていただけませんか? 500万、いや700万出しますが?」
「い、いえ、今はまだそんな風に考えられないし、何よりそうした時の税金やらなんやら分からないので、ちょっとギルドマスターに相談します……」
「そうですか、まあ仕方ありませんね、秋彦さんは探索者であって職人として旗揚げしていませんし……」
「す、すみません……」
あからさまにがっかりされてしまった。
なんだか申し訳なくて、頭を下げながらドラゴンスケイルネックレスを受け取ってしまう。
「では、名刺だけでも……今後何かご縁があるかもしれませんしね」
「は、はぁ……」
なし崩しに受け取ってしまった名刺。
浪速商人連合加盟店、【武具のサイトー 店主 斎藤 正行】と書いてあった。
尚この後、話を聞いていた他の出張店の店主や職人に、自分の店に装飾品を置くつもりはないか、どういう風に装飾品を作ったか、更には商人や職人ではない探索者からも、作ったものを売る気はないのか等の話を散々されることになってしまった。
秋彦は、ここで自分が半分趣味で始めたような加工が、自分の新しい可能性として芽が出始めていることを知ったのであった。
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次の投稿は4月24日午前0時予定です。
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