第百六十一話 マクベス一家、従魔とふれあう
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
握手を済ませた後、ジュディのお父さん、クリストファーが咳ばらいをしつつ口を開く。
『さて、今日は到着した日と言う事で、特に予定はないんだ』
『そうなのですか。では、クリストファーさん達はこの後どうするんですか?』
『秋彦君、私の事はクリスと呼んでくれ、みんなそう呼んでいる』
『私の事はアンジュかアンでいいわ。長いものね』
『あ、そ、そうですか……わかりました』
笑顔で目上の人に驚くほど気安く呼ぶように言われてしまった。確かに呼ぶ時に長い気はするが、今度はかなり気安くなってしまった気がして正直ちょっと驚きではある。
『えー……でだ。なので今日はちょっと大阪を観光したいと思うのだが……』
『ああ、親子水入らずで大阪観光させてほしいってことですか?』
『ああいやいや違う、そうじゃないんだ。大阪観光の前に、ちょっと二人にお願いがあってだね……』
『お父様、はっきり言ってくださいまし』
煮え切らない態度のクリスにジュディが口を出す。
『うん、その、なんだ。今日は従魔とやらは一緒ではないのかな?』
『従魔ですか? 従魔のふれあいスペースに置いてきてしまいましたね』
『ええ、あの子たちってばはしゃいでいたからちょっと声を掛けられなかったのよね』
困ったもんだとばかりにため息をつくと、クリスとアンジュが鼻息を荒くしながら詰め寄ってきた。
『おお、そうだったのかね。実は我々、その従魔をぜひ見たいのだ』
『おとぎ話で出て来るような、ユニコーンにドラゴン! 幻獣と言うべきその存在、是非とも見てみたいの!』
二人とも目が輝いている。まるで、子供が欲しくてたまらなかったおもちゃを見るような眼だ。
『え、ええ。いいですよ。なぁ?』
『そうですわね、特にユニコーンは私の従魔。存分に自慢させていただきますわ』
『おお! ありがとう!』
すっかり興奮しているクリス、アンジュもさりげなくうずうずしている。様子が変わらないのは従者のセリーヌだけだ。
クリスとアンジュはうきうきと手荷物をまとめ、立ち上がる。セリーヌもそれに合わせて荷物を持つ。
『ではさっそく行こうか。タクシーを拾っていくとしよう』
『いや、いいですよ。場所は覚えていますから』
『あら? それはいったいどういう事かしら?』
どうやら、マクベス夫妻は秋彦がいるというのに、秋彦が行ったことのある場所へ公共の交通機関を使う予定だったようだ。
『僕は無属性魔法使いなんです。テレポテーションという瞬間移動魔法が使えるんですよ』
『……おお、そうだった、そうだったね! いや、珍しい属性だからすっかり忘れていたよ!』
『いやですわ、お父様もお母様も……』
『はーい、じゃあ荷物まとめてくださーい、用意が出来たら飛びますよー』
『ああ、分かった。実は魔法による瞬間移動は初めてでね、体験させてもらうよ。この年になってこんなに初体験を何度も行えるなんて貴重だなぁ!』
『勿論私もよ、ああ、ドキドキしちゃうわ!』
『お父様、お母様もう少し落ち着いてくださいませ……』
クリスもアンジュもすっかり遊園地のアトラクション気分だ。両親のはしゃぎようにジュディは顔を手で覆ってしまっている。
まあ秋彦達はもう慣れっこの物であっても初めての経験とあっては無理もないのだろうが。その辺は慣れてもらうしかない。
改めて荷物をまとめ終わったことを確認し、テレポテーションで再び公園に戻る。
………………………………
『おおおおおお……凄い、これは凄い! 何という立派な……そして美しい!』
『ええ、本当に! この目で見てみたいと思ってはいたけど、いざ目の当たりにするととても美しいわ!』
『光栄ですわ、お爺様、お婆様』
『あ、ありがとー……』
感動のあまり、これでもかというほどにエリザベスと龍之介を撫でまわすクリスとアンジュ。セリーヌまで遠慮がちであっても一緒に撫でているのだから、あこがれはよほどの物だったらしい。
秋彦とマクベス一家、そして従者の方と一緒に、再び先ほどの従魔ふれあいスペースへ戻って来ての念願のドラゴンとユニコーンとの対面である。
ちなみに龍之介達従魔の会話は念話であり、言語はあまり関係がないので従魔の二匹とも問題なくコミュニケーションがとれている。
折角だし、さっきまで公園にいた茜と優太にもあいさつしようと思ったが、あの二人はジュディの両親にあっている間にいなくなっていた。少し残念だ。
『この圧倒的な重量感、生命力溢れる体躯! 素晴らしい!』
『なんて美しい毛並みの白馬でしょう! こんなに凛として……セリーヌ、写真を撮って頂戴! この写真は家に飾るわよ!』
『わ、私も頼む! 龍之介君とのツーショットと、後全員が写ったものも欲しい!』
『かしこまりました、旦那様、奥様。少々お待ちくださいませ』
すっかり大はしゃぎだ。最早どっちが保護者だかわかりゃしない。
「楽しんでんなー……」
「あの、ごめんね、折角のお出かけだったのに付き合わせちゃって……」
「いやいいって。付き合わせたってんなら先に俺の方が言い出してるんだしな」
二人は大はしゃぎのクリスとアンジュの邪魔にならないように少し離れて様子を見ている。二人は全力で楽しむ二人を見守ることにしている。
しばらく楽しんでいると、龍之介からこんな提案をしてきた。
『おじちゃん、おばちゃん、龍ちゃんに乗ってみる? 飛んであげよっか?』
『な!! い、いいのかね?!』
『龍ちゃんはいいよ。パパ、乗せてあげてもいい?』
『おおっと、なら俺も乗る。そうじゃないと落ちた時がまずい。龍ちゃん用の鞍とかないんだから、一般人はちょっと支えてあげないときついかもしれないしな』
『やったぁ! こ、これは一生の思い出になるぞ……英国紳士の中で最初に龍に乗った人物として自慢できる!』
『ジュディ、私も乗るわ。私の支えをお願いできる?』
『はい、承知いたしましたわお母様。セリーヌはどうする?』
『私は旦那様と奥様の雄姿を撮影させていただきます。お気遣いいただきありがとうございます』
こうしてしばらくの間龍に乗っての空中散歩や、エリーでの乗馬を楽しんだマクベス夫妻。
その後も、秋彦達は大阪観光に付き合わされ、食道楽に買い物にと忙しなく動き回り、結局夜も遅くなってへとへとになるまで放してもらえなかった二人であった。
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