第十六話 束の間の日常
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拍手が鳴りやみ、罠の作成班は残ったものの、それ以外の人間からは、特に質問等もなく、解散。
二人は当然罠作成には加わらず、集会が終わってすぐのエレベーター待ちをする。
「さてっと、俺らは罠作成には加わらんし、さっさと帰るか」
「あ、でもさ、せっかく東京来たんだし、ちょっと寄り道しない?」
「え、まさかダンジョンか?」
「いやいや、そうじゃなくてさ。ほら、なんか用事でもないと東京ってなかなか来ないじゃない? せっかくだからちょっと遊んで帰ろうよ」
普段の優太らしくない発言だ。いつもならこういう事態だと、もっとビクビクしているのに。
それも相まって、秋彦は優太の真意を図りかねた。
「親友、そらちょっと呑気が過ぎるんじゃねーの? 明日がヤマだってのに」
「だからだよ。今から変にガチガチに緊張してたってしょうがないじゃない? それに雨宮さんが言っていたように、僕らが守ろうとしているのは日常なんだから。改めてそれに触れて、心をほぐそうよ」
「……うーん、そういわれるとなんかそんな気もしてくるな……じゃあなんだ。アキバのゲーセンにでも寄ってくか?」
「うん、そうしよう!」
上手く言いくるめられたような気がしないでもないが、急遽寄り道決定である。
確かに、自宅の最寄り駅から電車一本で来れるくらいには近いとはいえ……いや、なまじっか近いからこそ用事がなければなかなか来ない。来ようと思えばいつでも来れるからだ。
そんな訳で二人は明日の動乱に備え、極力いつも通りに振る舞うべく、ゲームセンターへ行くことにした。
その気配りと多少のずぶとさに優太の成長を見た気がして、秋彦は少し嬉しくなった。
………………………………
次の日、秋彦は自分と優太の武器と防具を魔法の収納バッグの中に入れて学校へもってきた。今日はそうする必要があるからだ。このバッグは本当に便利だ。これのおかげで武器や防具の持ち込みを疑われないのだから。
今日は週明けの月曜日。風紀委員の挨拶活動は一週間ごとの交代制なので、今日からしばらく挨拶活動に秋彦は加わらない。
入学してからすぐ辺りからの活動だったのでうれしい反面少し寂しい気もする。
なので今日はいつもと違い優太と一緒に登校する。他愛のない話をしながら待つ電車は、いつもと違い人が多い。少し新鮮だ。
「早くに登校してるからわからんかったけど、結構混むんだなここ」
「僕からしたら今更だよ。というかまだ慣れてなかったんだ」
「まーな。あ、来た……って、こりゃまたすし詰め……」
「うん、いつも通り。だからここ結構痴漢多いらしいよ?」
「男の俺たちにゃ関係ないけどな。このご時世痴漢ってする方もされる方も冤罪だなんだってなるし、極力関わり合いになりたくねー。俺口喧嘩苦手だし」
「いやいや、口喧嘩とはまた別だからね? ほら、出てくる人出てきたし、行こ?」
ぎゅうぎゅうの電車に揺られ、最寄り駅に付いたら歩く。そろそろ通い慣れてきた道だが、いつもと雰囲気が違うように感じるのは、学校が終わった後の出来事に緊張しているからなのか。
学校が見え、校門が見えると、週が明けるまでは自分がやっていた挨拶運動が見えてくる。二人はとりあえず元気よく挨拶しておいた。秋彦は特に、皆もこのくらい声出してくれというささやかな自己主張が見えるくらいに。
秋彦と優太はクラスが同じなので、まだ雑談をしている。クラスメイトも数名混じっては離れていく。今の所、優太が不良グループに絡まれた話や、秋彦がその不良集団をぶっ飛ばした話は他の人間には伝わっていないらしい。広まっていたらきっとこんな風に話をしようとするクラスメイトはいないはずだ。
二人が入学して2週間程度しか経過していない。ついこの間まで中学生だったクラスメイト達は、やっとグループを形成し始めていたところであり、二人の所にもそれなりに仲の良くなったクラスメイトもいる。
しばらくそんな友人たちと話をしていたが、予鈴が鳴った。つまり授業の時間だ。
大半の生徒がうんざりし、眠気を誘うであろう時間だ。しかも今日は1時限目から4時限目まで、午前中は座学のみなので、ますます眠くなる生徒が多い……だがそんな中にあって秋彦は眠気が吹き飛んでいた。
不自然なほどに授業の内容がするする頭に入ってくる。つい先週はまだ始まって間もない授業だというのに、頭が内容を入れまいとして、眠気を誘っていたはずなのだがちっとも眠くならないのだ。内容が頭に入ってくる感覚が心地よいとさえ感じる。
明らかに一昨日に学術的知力を上げた影響だ。もっとも、この変化は秋彦にしかわからないので、この感動は自分以外には優太としか共有できないのが残念だが。
午前中の授業が終わると、昼の食事休憩だ。
普段は優太と一緒に食堂へ行くのだが、今日は話したいことがあり、校庭にあるベンチでパンを齧ることにした。
「いやはや、しっかしまあ、学術的知力様々だわ本気で」
「秋彦が授業で寝ないんだもんね。すごいよね」
「手厳しいお言葉だがぐぅの音も出ないぜ……ははは」
菓子パンを食べる優太が意地の悪い笑みで言うと、秋彦は総菜パンを齧りながら乾いた笑いをこぼす。
秋彦が一つ目のパンを食べ切った所で優太が本題を切り出す。
「今日は東京で……あれやるんだもんね」
「ああ、とりあえず本格的にあふれる時間が19時ってダンジョンウォッチに表示されてるもんな。流石に全部がそうってわけじゃないけど、そういうところを重点的に害獣駆除用の罠とか仕掛けてるってよ」
「偽装のファッションショーの初めは18時30分からのスタートだったよね?」
「ああ。本格的にあふれても、モンスターが本格的にあふれ出してこっち来ないと体裁的には動けねーがな。事が本格化すりゃ、警察も交通網も麻痺しだすだろうし、俺らもそうなってからでねーと動けねーからな。一般人の避難場所にもするって、結構でかでか場所借りたってよ」
「へぇ~、用意良いね~」
「あの人はなるべく多くを生かしたいらしいし、俺らも生きて帰るつもりでいような」
「うん……! あ」
「おい、どうした?」
さっと秋彦の陰に隠れるように後ろに回った優太を見て隠れた反対を見ると、6人位の男女が話をしながら歩いていた。後ろにさらに何人か取り巻きを連れて。
秋彦が6人をよく見てみると男と女の2人、知っている顔が見えた。
一人は風紀委員長だ。短髪頭の凛々しい男性。この1週間とちょっとでよく会うので覚えた。だが委員長で通してしまっているため、名前は憶えていない。
もう一人、黒髪ロングな美女は確か生徒会長だったはずだ。入学式で挨拶してたのを覚えている。だけどやっぱり名前は憶えていない。
……要するにあれは委員会の役職の集まりだろうか?
もちろん向こうがこちらに用があったわけでもなく、そのまま近くを通り過ぎただけだったが、優太は過ぎ去るまで秋彦の後ろに隠れていた。
「行ったぜ?」
「あ、ありがとう……」
「親友……相変わらずダメか」
「うん……別にあの人たちが悪いんじゃないけど……どうしても人が集団で来られると怖くて身がすくむんだ……魔物はもう慣れたんだけどさ」
「まあ気持ちわかるし、俺らも人相手にするわけじゃねーからそれはいいんだが……でもそれじゃいつまでたっても……ああ、いいや悪い」
「……このままじゃだめなのはわかってるんだけどさ……よし、切り替えよう。とにかく今日は授業終わったらすぐ○○××公園。絶対生きて帰ろうね!」
「お、おう」
その後すぐに予鈴が鳴ったので慌てて教室に戻る。
午後の授業も座学だったが、午前と同様しっかり授業を受けられた。ホームルームの後に下校となる。挨拶が終わった所で、二人はカバンをひっつかんで教室を飛び出した。
間もなく開戦だ。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!