第百五十四話 高速道路解放戦線、増える御霊具所有者
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「じゃあ、今日も皆さん、お疲れ様でした!」
秋彦が声を掛けると全員で、お疲れ様でした! の掛け声とともに弛緩した空気が流れだす。
そして落胆の声も上がり出す。今日一日、結局御霊具を手に入れることはかなわなかった。
チャンスは勿論あったのだ。手下を多く倒すことで魔物の魂を手に入れるタイプのボスもいた。だが、条件を満たす前にボスを倒してしまったり、上手く条件をクリアできるボスではなかったりして、結局ジュディ以外で御霊具を手に入れられた人はこのチームには出なかった。
「これはちょっとせっかくの機会を無駄にしすぎているよな……」
「なんとか……作戦を立てて、一人に対して確実に御霊具を手に入れられるように協力しないとだめなんじゃ……」
と言って他のチーム同士で真剣に話し合っているところが多い。
明日は本気で作戦を練っての御霊具を手に入れようとしてくるかもしれない。確かにこのチームはみんなそれぞれ御霊具が欲しいせいか、特にボスの魔物では結構協調性を欠くことが多かったような気もするし、ここで少し協力していく形を取るようになればいいのだが。
とにかく一旦ホテルに戻ってよく休んでからの出直しである。
「じゃあ帰りますよー……はぁ!」
秋彦がテレポテーションをかけ、再び大阪のホテルへ戻ってきた。
昨日はこの後、それぞれのチームごとに固まって帰っていったのだが、今回は秋彦チーム以外全員集まっていってしまった。
「うーん、皆最早殺気立っているまであるねー」
「……仕方ない。ここで御霊具を手に入れられなければ次に手に入るのはいつになるかわからない。正直私も焦っている」
「まあやっぱそうだよなぁ……いくら死んだら元も子もないって言ってもなぁ」
「……持っているといないとでは自分の実力に大きく差が出る。探索者としても箔がつく」
「やっぱりそうだよなぁ」
ため息が思わず出るが、正直気持ちはよくわかる。
当然だ。自分専用の自分が強くなればそれだけ成長する上に、様々なスキルも生まれてくる魔法の武器、防具なんて、持っているだけで羨望、注目の的だ。また戦闘力にも直結すると言う事は戦闘力の増強が定期的になされるなんて、欲しくない探索者なんていないだろう。
だからこそあまり強く御霊具にこだわるなとは言えないし、手に入れようとする姿勢自体には何も言う事が出来ない。
そうは言っても、流石にそれを手に入れるために足を引っ張り合い、味方同士での争いに発展しようものなら流石に御霊具を手に入れること自体を禁止せざるを得ないが、そういう動きもない。
まあ、モチベーションに繋がるならいいのだ。正直足を引っ張り合うなどの明確な被害が出ていない以上、秋彦達が何を言っても持てる者の余裕としか思われないだろうし。
「てか、茜。お前はむしろあっちに行かなくていいのか?」
「……私はいざとなったら当てがある。今ここで無理をしなくたっていい」
「当て? 何だ当てって?」
「……海。豊芦原と一緒に海に出る」
「海?」
茜は頷く。
海は魔物が出るようになってから基本的に野放しだ。海洋の守護像がある以上海の上で戦いを回避すると言う事は出来る。だがそれ故に海なら探せばいくらでもパワードモンスターやユニークはいるはずだ。そこから探していけば、自分にとって最も相手取りやすい相手を探すこともできるはず。
それに茜は水属性が最も得意とする属性の上に、茜の従魔である豊芦原は、海での戦いはお手の物だ。
海での戦いは望むところ。故にここで無理をして勝負をかけるよりも、無理をしないで出来る範囲でチャンスがあればそれにかけ、ダメであっても最悪この戦いが終わった後、海に出てパワードモンスターかユニークモンスターを探せばいいだけの事。
茜はそういう風に考えているらしい。
「成程なぁ……よく考えてんな」
「……やっぱり欲しい物は欲しい。でも無理をする必要はないというだけの事。豊芦原もレベルが上がって進化もした。もはや海、いや水の上は私の領域と言っても過言ではない」
「おおう、そこまでかよ……」
「……海に行くなら任せて」
鼻を得意げに鳴らしながら胸を張る。よほど自信があるようだ。
「じゃあ茜は無理しなくても目算ついているってことでいいんだが……やっぱり彼らがちょっと心配だな」
「本当にね、下手を打たなければいいんだけど……」
………………………………
翌日、秋彦達は再びサービスエリアの開放を行うべく、割り当てられたサービスエリアにやって来ていた。
すでに駐車場にいる敵を倒し尽くし、残るはボスのみだ。気合を入れつつ準備運動をしていると、アンリアルコードのメンバーである女性、名前は確か吾妻 真美。がこちらに向かってきた。
「あの! すみません皆さん!」
「え? どうしました?」
応対したのは優太だ。そして真美はしばらくまごまごしていたが、意を決したように言い放つ。
「今回のボスはパワード・ゴブリンキングですよね。昨日解散した後、レインボーウィザーズ以外のチーム全員と話をしたんですが、全員で協力してパワード・ゴブリンキングの魂を手に入れようという話になりまして!」
どうやら話し合いはうまく言ったらしく、何とか一人に対して全員が協力する形を取れたようだ。
「ほうほう、それで?」
「それで、話し合いの結果、今回は私が魂を手に入れることになったんです! ですので、どうか条件を達成するまで、パワード・ゴブリンキングを倒さないでいてほしいんです!」
どうやらレインボーウィザーズはもうチームの半分以上が御霊具を持っていることを考慮し、積極的に御霊具を手に入れることはないであろうと踏んで、御霊具を手に入れることに協力してほしいらしい。
「ああ、それは全然かまいませんよ、話し合い上手く纏まったんですね。よかった」
「やっぱり欲しいですもんね。協力は惜しみませんわ」
「手を貸してほしいなら貸しますからね。遠慮なくどうぞ」
「……今回は譲るから、頑張って」
「あ、ありがとうございます!」
そういって優太を少し見つめた後、嬉しそうに走っていった。
この後、真美はこの班二番目の御霊具所有者として名を連ねる事となる。
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次の投稿は3月31日午前0時予定です。
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