第百五十三話 高速道路解放戦線、ネットで知る御霊具について
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さて、皆さん準備はいいですか?!」
秋彦が声を掛けると班の全員が勇ましい雄叫びを上げる。
高速道路解放戦線本格出動から二日目、ホテルから最後に攻略したサービスエリアに戻り、そこからさらに次の攻略対象であるサービスエリア前である。
昨日で既に三つもサービスエリアを解放したというのにここにいる全員はむしろ昨日よりも勢いと闘志に燃えていた。
「それじゃあ今日も張り切って……突撃―!」
その意気や良し。ならばこの勢いに乗じて安全を確保しつつも手早く開放を進めていこうと言う物だ。
………………………………
4つ目のサービスエリアの開放が成功し、高速道路解放戦線がまた一歩前進した。しかし……
「あー! また駄目だったー!」
「くっそー、折角のモンスターが……」
折角の勝利、高速道路を解放したというのに班を構成するそれぞれのチームの表情は思わしくない。サービスエリアのボスを倒したというの【御霊具】つまり魔物の魂が宿った道具が誰の手にも手に入らなかったからだ。
勝利を手にしたとは思えない、悔しさから苦悶の声を上げる声が響く。
「……ええいしょうがない! 次だ次!」
気分を変えるべく班の誰かが声を上げ、それに同調するように再び闘志を燃やそうと声を出す。
が、秋彦達はそんな逸る彼らのストッパーをしなくてはならない。秋彦達は手を叩く。
「はいはい、その心意気は大変結構です。ですが、そろそろ食事時としてもいい時間です。まずは英気を養いましょう」
まずは一呼吸つかせて、昂る心を落ち着かせる。心も常に昂っていては疲れてしまう。落ち着くときはしっかり落ち着き、体力を回復させるのも大事なことだ。
幸いにして時間も11時。少し早いが食事の時間である。
流石にSクラスにそういわれて強行できる訳はないので、渋々ながらも一旦落ち着きを取り戻していく。
そういう訳で解放後に魔物の死体を処理する自衛隊や、解放を見越して待機していたサービスエリアの従業員達の邪魔にならない範囲で、自衛隊から支給されたお弁当を食べることになった。
時間がたちすぎてほとんどの物が廃棄となるであろうサービスエリアの商品の中で、ほぼ唯一口に入れても怖くない飲み物を買って席に着けば、食事と歓談が始まる。
互いのチームが集まっての食事だが、やはり秋彦達のところには人が多く来ており、いろいろ話をしに来ていた。
「しかし……レインボーウィザーズの皆さんは流石ですね、それだけの良い装備を用意して」
「まあね、と言ってもジュディに任せっきりなんだけど。本当に頭上がんねーよ」
「あら、ありがとう。このチームの為になるんだもの、気合の入れ甲斐があるっていう物よ」
などと、他愛のない話をしていると、班の中でスマホをいじり続けていた人が声を出す。
「ねぇねぇみんな見てくださいよ、今高速道路解放戦線こんな風になってるみたいですよ」
「ん? 健司どうした?」
「ほら、陽介見てみなよ。この掲示板のまとめサイト!」
健司と呼ばれたメンバーから教えられた掲示板のまとめサイトをスマホで見てみると、どうやら昨日に書かれた高速道路解放戦線のことについて質問を募集したスレッドの内容をまとめた物らしい。
そこには他にも地方都市奪還作戦に参加している探索者がスレッドに書き込んだ内容が結構あり、いろいろな情報が出ていた。
こういったところでの情報は、ギルドマスターからも別に規制はされていないし、隠すべきことでもない。匿名での雑談のような場所である掲示板内の情報は、ある意味最新の情報ともいえるだろう。
そこから有力な情報を集め、書き込みをまとめたものがまとめサイトにすでに公開されていたらしい。
そしてそこを見てみると、やはり一日に一つのサービスエリア開放というペースで進めているような班はやはりあまりないらしく、どこも二つ三つは一日にサービスエリアを開放しているようだ。
そして、参加している探索者達が気にしている情報もあった。ずばり、この作戦にて御霊具を手に入れた人々の数である。
現時点で御霊具を手に入れた人数は約10名の様だ。これはあくまで匿名での情報なので不確かなのだが、優太やジュディの名前もしっかりあった。
「おいおい……ダレだ情報を流したのは……」
「まあ僕らはここら辺はもう諦めているから……」
「にしても次見てくださいよ、かなり詳しく御霊具について書かれてますよ」
次の項目には誰が書いたやら御霊具に対しての整理された情報及び考察が書かれていた。
そもそも今でいう御霊具が最初にこの世界に現れたのは、日本魔物大氾濫の時、南雲秋彦がフィールドキメラゴブリンというユニークモンスターと殴り合ったことで大量の返り血を浴び、その影響で偽装の為に着ていた只の衣装だったはずの服に魔物の魂が宿った事が始まりだ。
この衣装は魔法の宿ったアイテムなどではなく、本当に只の布で作られたものであり、防御力も何もない物だったが、当時ダンジョンで生まれた装備よりもはるかに優れた装備となっていた。
そうでなくても自分専用の強力な装備と言う物は誰であってもあこがれの的だ。当然あちこちで求められていたが、当時はユニークモンスター相手にどうすれば魔物の魂が宿るかがわからず、日本魔物大氾濫時に手に入れられた人物は秋彦を除けば、北海道のチーム、絶対零度所属の吹雪 氷牙と大阪のチーム、浪速商人連合所属の喜瀬川 由香里の二人だけだった。
そして今、あちこちで魔物の氾濫を放置した結果、各地で名前にパワードと頭に着くモンスターが現れ、これらの魔物も、アナライズカメラなどでステータスを見ると、一定の条件を満たすことで、魔物の魂が宿る装備を手に入れられる時があるという事が分かった。このころから御霊具と言う名称がダンジョンウォッチのライブラリに登録されるようになったのだ。
ちなみにパワードモンスターは条件を満たしてもある程度強くなければ魔物の魂が手に入らない様だ。
駐車場にいる様な、ボスレベルの魔物ではないパワードモンスターをどう倒しても魔物の魂が手に入らないことがその証だ。それが無ければもっと多く御霊具を手に入れた人々が現れてもおかしくないはずだ。
「成程なぁ……よくこんなにしっかり考察するもんだ」
「うう~……早く僕たちも御霊具が欲しいです!」
「そうですね……まあ、食事が終わってからですよ」
「はい!」
そうして食事と休憩を取り、秋彦達の班は改めて出発した。
そして、この日も秋彦達はサービスエリアを三つ開放し、明日もこの調子でいけば、自分たちに課せられたノルマをクリアできるところまで来た。
だいぶハイペースだが、高速道路解放戦線も終わりが近い。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は3月28日午前0時予定です。
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