第百四十六話 一時の休息、デート 前編
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翌日になっても待機命令は続き、現在探索者達は暇を持て余している状態になっている。
流石に一日二日で魔物達の動向云々が分かる訳もないが、あまり長すぎると手持ち無沙汰になってしまう。
今日は昼から街中をぶらぶらしている。しかし今回は秋彦一人ではない。
『流石に浪速商人連合のおひざ元。今ここは大阪一栄えている商店街と言えるわね』
『本当にな。こんな状態だっていうのによくもまぁこれだけ活発に商いやってられるよ』
英語で話しかけてくるジュディが一緒だ。
朝になって突然ジュディが部屋に押しかけてきて、映画を見にに行くことを提案してきたのだ。しかし勢いがすごく、つい押し切られてしまった。
折角なので今日はジュディが思いきり母国語を喋れるように、二人だけの会話の際は英語のみのしようと言う縛りをすることになった。
秋彦もずっと英語を聞くのが両親だけでは耳も忘れてしまうので好都合ではあったのだが。
『あ、見て。ここ、商店街なのに武器を売ってるわ!』
『お、本当だ。この刀、なかなかいいんじゃねーか? しかもこれ……肉体力千アップが百万円か。かなり安いんじゃねーの?』
『どうかしら? 武器というカテゴリである以上、もうちょっと頑張ってもらいたい所ね。というか、私が真崎君に用意した刀よりも下じゃない』
『……そういえばそうだな。でもこっちではこれが基本かぁ。やっぱり腕のいい刀匠とコネがあったりするのかね?』
『でしょうね……一応関東圏も刀匠はいるけど……歴史が違うわね、やっぱり』
目についた武器屋でこういう割と失礼なことを行っても英語でなら許されるのは買い物をする側にとっては割と気が楽だ。
尤も、秋彦が英語をバリバリ喋れることが衆目にさらされたのだから、あいどんとすきーくいんぐりっしゅ、という日本人の外国人に対する伝家の宝刀は使えなくなったも同然だが。
ついでに英語をかなり流暢に話しているせいで店員が近づき辛そうにしている。
ジュディはともかく、秋彦がこんなに流暢に英語を話していると、彫りの深さも相まって秋彦達ではない、外国人のカップルか何かに見えてしまうのか話そうともしない。
なので二人は周りを気にすることもなく、悠々とウインドウショッピングを続ける。
しかし互いにいつもとは雰囲気が違う。
少し気を抜けば、互いに目が行ってしまう。目があった時にごまかすような会話をして、しばらく沈黙する。さっきから秋彦とジュディは四回ほど繰り返していた。
ジュディは内心何をやっているのだろうと思う。
こんなことではだめなのに。もっと腕を組んだり、目を見てアピールしなきゃいけないのに。もっと異性になれておくべきだったのだろうか? それはそれで遊んでいる印象を受けそうで嫌なのだが。
秋彦も内心何をやっているのだろうと思う。
何なんだろう、ジュディのこの積極的さは。まさか本当に彼女は自分に気があるのだろうか?
互いに羞恥を胸に秘め、二人は少し前のことを思い出していた。
………………………………
時間は昨日の夜九時。
秋彦は散々人から名刺を渡され、あちこちの人から話しかけられ武勇伝を聞かれてへとへとになりながら部屋のベッドで倒れていた。
「うう……やばいな大阪。どいつもこいつもすげぇフランクに話しかけてくる……」
『パパ人気者だねー!』
「そんないい物じゃないって……」
ぐったりと龍之介と戯れていると部屋のチャイムが鳴らされた。インターホンを覗いてみると、茜がいた。
「茜? どうした?」
『……話がある。入っていい?』
「ああ、構わねぇけど……」
鍵を開けて茜を中に入れると、茜は遠慮なくお茶を淹れてお菓子を広げる。
互いにお茶をすすって一息ついた。そこで秋彦の方から話を聞いてみる。
「で、話って何?」
「……ジュディとはいつくっつくの?」
もう一度すすろうとした茶を盛大に噴出した。そして茶が呼吸器官に入った事で盛大にむせた。
「……大丈夫?」
「ぐぅぇっほ! だ、大丈夫ってお前いきなり何言い出すんだよ!?」
「……全然いきなりじゃない。正直しびれを切らしたと言ってもいい」
秋彦が驚きと羞恥で声を荒げるも、茜は全く動じていない。
「……秋彦がジュディを意識しているのは傍から見ていてもよくわかる。そしてジュディも秋彦を意識しているのはよくわかる。なのに二人ともいつまでもじもじしているの?」
「い、いや、だってお前、ジュディが、俺を?」
「……客観的に見て間違いない」
秋彦の顔がどんどん赤くなっていき、動揺して挙動不審になっている。
「い、いや、でもなんで俺?! 俺厳ついし怖いだろ!?」
「……日本人としてはそうかもしれない。けど外国の人にとってはそうじゃない。前に言われたでしょう。秋彦は顔が怖いのではなく顔が濃いだけ。そもそも顔で男性を判断するのは日本人の特徴。秋彦の体格が好みの国もある」
「そ、そうなのか……?」
茜はゆっくり頷くと続ける。
顔ばかりを気にするのは良くない。外国では顔が濃い人が多く馴染みある顔つきだし、特に秋彦は持ち前の筋骨隆々とした体つき、二メートルを超える長身はギリシャの女性にとってドストライクだ。
「……イケメンの定義は国によっても変わるし、その中でも人それぞれ。ジュディにとってあなたはイケメン。自惚れて、盛大に勘違いして」
顔を真っ赤にして頭を抱える秋彦に茜がさらに追い打ちをかける。
「……明日は二人で出かけて、そしてそろそろ決着をつけて」
「え、ちょ!」
そういうと茜は有無を言わさず部屋から出ていってしまった。
「あ! おい、ちょっとま……え、ええー……?」
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