第百四十五話 一時の休息、待機命令
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場所は移り、再び関西国際会議場。
前回と同じメインホールだ。今回は自衛隊のお偉いさんと思われる人々の姿はなく、代わりにマスコミの数がずいぶん増えていた。以前は作戦開始に伴う緊張と興奮から殺伐とした空気が流れていたが、今はどことなく緩んだ空気が流れている。
それは作戦の中で確かに自分達の力が通じたことに対する高揚からくる物だろうか。
などと考えていると雨宮がマイクに向かって話し出す。今回、ギルドマスターは雨宮のみだ。他のギルドマスターはそれぞれ動いているのだろう。
「それでは第二回日本探索者ギルド連盟会議を開始いたします。今回の威力偵察に参加された方々、まずはお疲れ様でした」
そういって雨宮はまずは頭を下げる。
「さて、今回の威力偵察ですが、成果は上々、いや、むしろ予想以上の成果を出したと言っていいでしょう。今回様々なパターン、組み合わせにてこちらの戦力が通じるかどうかを試しました。そして、以前説明した通り、その中にはサービスエリアの開放は達成できないであろうと予想していた組み合わせもあったりしたんです」
そういうと雨宮はスクリーンに映ったスライドを切り替える。
そこには予想図と書かれた赤の面と、実行結果と書かれた青の面で分割されたスコアボードらしき図が書いてあった。それぞれ1から30までの数字と隣にまるやバツがついている。これが、ギルドマスターが当初の予想したものだったのだろう。どうやら当初は様々な組み合わせを試して大体半分程度が成功するとみていたらしい。
しかし実行結果の方に書かれた方は、明らかにまるが多かった。これは当初の予想を大きく超えて成功した班があったと言う事だろう。
「はい、お察しの通り、当初無理だと思っていたところが奪還までこぎつけたという所がたくさんあり、おかげで自分達の想像以上に苦しい戦いにはならなさそうですね」
会場から拍手が沸き起こる。みんな気分が高揚しているらしい。興奮気味だ。
「今回の戦闘結果などはすべてビデオカメラなどで録画してあります。このデータを踏まえ、また、サービスエリアの魔物の状況を鑑みたうえで最終的な人員を配分していくことになりました。戦闘分析班の沖縄ギルドマスターの小野崎さんの分析の結果をみて、東北ギルドマスターの鬼塚さんが人員を改めて整理し、改めて班を構成します。少し時間がかかりますので、その間皆さんは、昨日に引き続き京都と大阪にホテルを用意しています。そこで十分疲れや心を癒し、分析と人員配備の終了をお待ちください。それほど時間はかからないと思いますので宜しくお願いいたします」
どうやら会議と銘打ってはいるものの、要するに待機命令とねぎらいの言葉を掛ける場だったらしい。
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探索者の宿泊先は、かなりの高級ホテルだ。普通に泊まったら普通の人では奪還作戦終了まで持たなさそうな感じだが、今回は、地方都市奪還作戦参加者は無料なうえに、ルームサービス等もギルド持ちの様だ。
改めて探索者の優遇ぶりに驚くと同時に気を使わせているなと言う気はする。市民団体やらなんやらから抗議とかされなかったのだろうか。
まあ恐らく、単純にそれどころではないのだろう。ヘイト向けるべきは人ではなく今時はもっぱら魔物なのだから。
ホテルからしても昨今のダンジョン騒ぎですっかり旅行客が減ってしまっていたらしく、予約なども簡単に取れたことからわかるが、かなりありがたがられているようだ。
尤も、今現在となってはあらかじめホテルを確保したのは英断だったと言える。
何せ今の大阪は各地からやってきた探索者目当てにあちこちから人が来ている。単純にファンであったり、スポンサー契約を結ぼうとしている企業からの人々もいる。思惑も様々だ。
待機命令ではあってもうまく撒かないと安らげもしないはずだ。そこのところをどうするか少し考えなくてはならないだろう。
などと自分にあてがわれた部屋で考えていたら龍之介が声を掛けてきた。
『パパー、龍ちゃん遊びに行きたい!』
「お、おおそうか。そうだな。龍ちゃんは今日ずっと暇してたもんな。連れていけなかったから」
『うん、だから今日は皆で遊んでたんだよ』
嬉しそうに龍之介は秋彦に話す。龍之介が言う皆とは、レインボーウィザーズの従魔達のことである。
一応小さくなって誰かの部屋で遊んでいたようだが、さすがにつまらなくなったのだろう。待機命令が出たことで時間も出来た事だし、大阪観光にしゃれ込むのも悪くないだろう。
「そうだな、よし行くか」
『はーい!』
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ホテルのロビーを出て十分。秋彦は持ち前の巨体を丸めていた。
「……えーっと……はぁ……」
『パパすごーい! 大人気だね!』
街歩きを開始……する前にすでに秋彦の手には片手では持ちきれないほどの名刺があった。勿論大中小、様々な企業の営業の方々の物だ。要は秋彦に対し、探索者活動のスポンサー契約を持ちかけてきているのだ。
そういうのは仲間に任せているからと言っても、せめて名刺だけでも、と言われ、名刺を受け取らざるを得なくなっている。と言うか受け取らないと放してくれないのだ。
一応この名刺はすべてジュディに渡すと明言しているので、ジュディに渡して相談をする予定だが……
「この手の事って俺何にも知らないからな……要するにお金あげるから探索者活動の方針に口出しさせろ的な奴なんだろ? 困るなぁそういうの……」
『どういう事? 龍ちゃんわかんないよ』
「ごめん龍ちゃん、俺もよくわからない。後でジュディお姉さんに聞いてみような」
『うん!』
一応スポンサー契約は厳密にいうと違う物なのだが、秋彦達にとってはあまり変わらない。
うんざりした気持ちを切り替え、粉物の聖地たる大阪らしく、夜の大阪を主に粉物的な食事をしながら歩いてみることにした。
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