第百四十二話 サービスエリア、倉庫にて待つボス
累計PV数219万突破、評価者数350人を突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さて、皆さん、準備はいいですか?」
ジュディが声を掛けると、その場にいる全員が頷いた。
休息を取る事数十分。体力も気力もすっかり回復できたことを見計らい、全員で倉庫前にやってきた。
ここを落とせば任務完了だ。一つのサービスエリアが開放され、日本の流通が少しだけ復活する。
先ほど自衛隊を通して、このサービスエリアを運営している会社に話をし、必要なら倉庫を平らに破壊してでもサービスエリアに巣食う魔物のボスを倒してほしいという文言を得ている。
つまり、武器や防具はいつも通り使っていいと言う事だ。もっとも、秋彦は破壊したものを復元する魔法【リペア】を持っているため、壊してもきっちり直しておくつもりだが。
ドアの前に立って、生命力感知をしてみると、奥の方にいるようだ。恐らく一匹。
先ほどの物販コーナーなどの様に漠然とした魔物の気配がない。つまり、ここは奇襲などの心配はないと言う事だ。
茜がドアにそっと手を掛け、全員の方を見る。
全員、無言で頷く。頷いたメンバーは、すでに入る順番に整列をしており、先頭は秋彦とジュディ、そしてアリアンタイムズの前衛という三人だ。
茜がゆっくりを息を吐く。そして……ドアを開けた!
素早く前衛組から詰まることなく奥へ入っていく。倉庫内には窓がなく暗いが、後がつっかえないように素早く奥へ入る。
中は死臭、あるいは腐敗臭とでもいうべきか、とにかくひどい臭いで充満していた。これだけで倉庫の壁を壊して換気したくなる程度には。正直鼻がもげそうである。
そしてその正体はすぐに判明する。
全員が中に入ったことを確認し、最後に入った茜が倉庫の電気をつけた。
……まず目に入ったのは大量の魔物の死体だ。恐らくボスが食料として食っていたものだろう。大量の死体と言うよりは大量の食べこぼし、食べのこしだろうか?
それがあちこちに捨てられている。そしてそれを行ったものの近くは黒い塊のようなものがあちこちに散乱していた。ハエのたかるそれが一体なんであるかは想像に難くないが、だからこそ目をそむけたくなる。最悪である。
そしてそんないろいろな意味で惨状を作った主であろう物は、倉庫の奥に、倉庫にある物を使って玉座の様に大きな椅子を作り、その椅子に座っていた。
鼻をフゴフゴと鳴らし、緑の禿げ頭に王冠を載せ、ゴブリンと言うよりはオークの様にでっぷりと太った体にマントを着込んだゴブリンの王の様な見た目をしたゴブリンだ。
中に入った際の惨状や余りの臭気に吐き気もするし、正直帰りたくもなってくるが、我慢してアナライズを掛ける。
ステータスはこの様に出た。
名前:パワード・ゴブリンキング
レベル30
肉体力:10,000
魔法力:2,000
戦闘力:15,000
有利属性:光
不利属性:闇
使用魔法属性:闇Lv5
スキル
魔法効率化Lv2
魔力制御Lv2
高速詠唱Lv1
配下召喚Lv4:(【モンスタースキル】【アクティブ】同種の自分以下の戦闘力の魔物を召喚し、戦いに加勢させる。その場にいる数が150匹を超えない限り何匹でも呼ぶことができる)
攻撃指令
防御指令
回復指令
自爆指令:(【アクティブ】自分の配下に自爆の指示を出すことで、配下を指定の場所で爆発させる。この指令を受けた配下は死ぬか、目標地点へ到達した瞬間に炎属性の爆発により敵にダメージを与える。爆発した配下は即死する)
身代わり指令:(【アクティブ】自分の配下、または仲間に身代わりの指示を出すことで、味方、あるいは仲間を自分の盾にすることが出来る。自分が受けるダメージを肩代わりさせ、いかなる致命傷でも自分が死ぬことはなく、指令を受けたものがダメージを受け、死ぬ)
王の背負う物:(自分の配下、または仲間が自らの出した指令系のスキルによって死んだとき、自らはその戦闘中にあらゆるステータスが向上し、戦闘力が上がる)
ハイゴブリンが同種を食らい合う事により強化され、変化した姿。
この姿の物は一様に部隊指揮に秀でており、召喚できる部下の数も桁違いである。見方を使いつぶせば使いつぶすほど自らは部下の屍を超えて強くなる。
尤も、スキルゆえに強くなるだけであり、部下に対する思いやりなどの感情は一切ない。基本的には玉座に座ったまま動かない。
自らの配下を大量に屠る者にその魂を捧げる時がある。
特記事項
パワード個体:同種の魔物を喰らう事で強化され、変化した個体。
まず最初に目につくのはやはり戦闘力だろう。一万五千という数字はわかりやすく自分達の目を引く。
そして配下召喚のレベルと呼び出せる配下の数だ。150匹も呼び出せるとは恐れ入った。
だがだからと言って退くわけにはいかない。そもそも自らの力量が通じるかどうかを確かめるための戦いだというのに、始まる前から怖気づいていては話にならない。
各員、戦闘態勢を取ると、パワード・ゴブリンキングは手に持つ大きな杖を振り上げ、ピギー! と大きな声で鳴いた。
それは配下召喚であった。パワード・ゴブリンキングの配下である魔物達が玉座の後ろからぞろぞろと現れ始めた。
どれも外にいたゴブリンの斧を持った戦士タイプのゴブリンの様だ。
「よし、じゃあまずは少し様子見してみましょうか!」
まず秋彦が補助魔法のセットを瞬時にかけた後に、前衛組が雑魚のゴブリンを軽く蹴散らし、パワード・ゴブリンキングの前に出て、それぞれ攻撃を仕掛ける。
が、パワード・ゴブリンキングは杖でうまく防御する。そして何人かは配下のゴブリンが身を挺してパワード・ゴブリンキングを庇い、パワード・ゴブリンキング自体にダメージが入らなかった。
やはり防御は固いらしい。そしてすぐにゴブリンの内一匹が前に飛び出してきた。体が赤く点滅している。それが何を意味するのかは直感的に理解できた。
前衛陣は全員その場を飛びのく。
すると、やはりというべきか。ゴブリンの体が大爆発を起こし、その体は四散し、肉片の一つも残らなかった。
驚くべくはその破壊力だ。
なるほど、自爆指令と言う名だけあって自爆行動なのは容易に想像がついた。しかしそれがまさか爆発などを見慣れている探索者チームも驚くほどの威力であるとは思わなかった。まともに喰らったら粉々とはいかなくても肢体の一部位もぎ取れそうな威力だ。
何せ今の爆発一発で倉庫の屋根と、両側の壁がすべて吹き飛んだ。それなりに距離は離れていたはずだが、吹っ飛んだ。見事なほどに。
換気にはなるだろうが、少々風通しが良すぎる。
「これはちょっと驚きましたね」
「ええ、結構威力あるみたいですね自爆指令」
鋼の騎士団と、アンリアルコードの人々も驚きの言葉を口にする。確かに想定していなかった攻撃力だ。
しかし、アリアンタイムズのメンバーの人々の言葉は全く悲壮感が無かった。
「でもそうはいっても我々の敵ではないですよね」
「ええ、当然ですね」
「はい。負けることはないでしょう」
「では様子見は終わりにしましょう。後から出て来るのかと思ったけど、どうやらそうでもないようですし、これはすぐに終わるでしょう」
それは鋼の騎士団もアンリアルコードも同感だったらしい。優太も笑顔で頷く。
「では、勝ちに行きましょう」
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