第百四十話 サービスエリア、売店に潜む暗殺者
累計PV数216万突破、ブックマーク数3300人を突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
秋彦達が駐車場の魔物を掃討した後は、自衛隊の人々が倒した魔物の数を確認したり、辺り一帯の警戒及び拠点を高速道路からサービスエリアへ移動したりと大忙しだった。
とはいえ戦闘を担当する探索者には特に関係はない。この後はまだいるはずのこのサービスエリアのボスを探さなければならない。今秋彦達が行ったのはあくまで雑魚の掃除であり、本命の魔物を探し、倒さねばならない。
しかし一段落ついたのだ。まずはそれぞれの労をねぎらい合うとしよう。
「いや、皆様まずはお疲れ様でした!」
「お疲れ様でした。いやー、いけるもんですねー」
「ええ、秋彦さんのバフがあったのは勿論ですが、敵もあまり連携が出来ていなかったですので存外付け入るスキがありました」
鋼の騎士団リーダーの言葉に頷く。
始めは防壁を展開するための連携こそしていたものの、個々における連携は結構杜撰であり、落ち着いて一体一体倒していけばそれほど対処に追われるような相手ではなかった。
尤も、アリアンタイムズの面々は苦戦したようだが、Cクラスと言う事で純粋な地力が不足していることを考えれば、例えバフがあったとしても食らいついてこれたことは凄いとは思う。
「さて、まずは一戦終わりましたんで、回復タイムといきましょうか」
そして始まる休憩タイム。怪我を治したり、スタミナを回復させたりする時間は重要だ。出来るなら、常に万全の調子で事に挑みたいのは当然なのだから。
そうしてそれぞれのチームは、それぞれ持参のポーションを飲み合いながら談笑しつつ体力の回復を待つ。
「ふう、ちょっと魔法力を使いすぎたからありがたいよ」
「親友派手にぶっ放しまくってたからな……」
「いや、でも魔法をメインに使うとどうしてもそうなっちゃうんですよね」
秋彦と優太が話しているとアンリアルコードの人々が話に入ってくる。
「あーわかりますわかります。なんだか魔法を使うと不思議と楽しくなってきちゃうんですよね」
「そうですそうです。使ってるときってなんか気分よくなって。つい配分とか忘れちゃいがちなんですよね」
「魔法使いあるあるなのか……にしてもポーションだって無限じゃないんだから配分してくれよ?」
「大丈夫ですよ、ご迷惑はおかけしませんので!」
「僕も大丈夫だよ、途中で魔力を枯渇させるようなことはしないからさ」
他愛のない話をしつつも、気遣いは忘れないようにしておく。こういうコミュニケーションが、道中の助け合いに必要になることもあるからだ。
………………………………
「よし……皆さんどうですか? そろそろ行けそうですか?」
「鋼の騎士団は大丈夫です、もういけますよ」
「はい、アンリアルコードも問題ありません。大丈夫です」
「はい、アリアンタイムズも大丈夫です。いけます」
そうしてある程度体力や魔法力が戻ってきたところで、秋彦がその場の全員に声を掛ける。
もう全員体力も魔法力も回復できたようなので、武器や防具を持ち直し、改めてサービスエリアの建物内を見てみる。
入り口はガラス製の自動ドアという見慣れたもので、建物の中もそれなりに見通しは利き、中を覗き見ることもできる。
しかし外から見ると魔物の姿が全く見えない。空っぽでもぬけの殻になっているのだ。
「なんでしょうね? 外から見ると敵がいないんですが……」
「ふむ、隠れているのでしょうか?」
不審に思いながらもゆっくりと自動ドアに近づき、ドアを開ける。扉は音を立ててゆっくり開く。
だが、その扉から中に入ろうとしたら、思いきり止められた。止めたのはアリアンタイムズのメンバーの一人だ。どうやらチームの斥候らしい。
「ちょっと待って下さい!」
「おお!? ど、どうしました?!」
「罠があります、ほら、細い線が!」
言われてよく見てみると細くて透明な糸が張ってあるのを発見できた。本当に見えづらく、太陽の光が反射してようやく見える様な程度である。そしてその糸の先には鳴子の様なものがくっついていた。
「これ、罠のダンジョンでもありました。引っかかったら敵が突然現れて引っかかった人を囲むんです。解除しちゃいますね」
どうやら秋彦達の知らない魔法の罠だったらしい。自身を攻撃するタイプの罠ではなかったからなのか、秋彦の危険感知には引っかからなかった。
とりあえず、斥候役の人はそういうと、身を乗り出して罠の解除をしようとした。
その瞬間秋彦の危険感知が突然警報を鳴らした。すぐに真上を見ると、口元を隠し、手に短剣を握ったゴブリンの暗殺者が斥候役の人に襲い掛かろうとしていた。
「あ、危ない!」
思わず槍を振るってゴブリンの暗殺者を切ろうと振りまわす。
が、自動ドアが邪魔をしてしまい、自動ドアを壊しただけで、すんでのところで躱され、そのまま店の中に入られてしまった。
だが、幸いなことに斥候役の人は無事ではあった。そして更によかったのは魔法の罠を発動しなくて済んだところだ。
「あ、あぶねー……二重罠かよ……罠に気付かなけりゃ罠と一緒に殺して、罠に気付けば解除しようとしたところを殺すってか」
「あ、ああ、ありがとうございます、気づきませんでした」
「大丈夫です。僕もギリギリでしたし……しかし……」
秋彦はうんざりする様な顔で広い店内を見渡す。
「ここ全域に罠か、隠れた敵がいるってことになりますよね?」
「ええ、はい。そうなると思います」
店の中は物がいっぱいある。どれも食べ物や売り物だが、ものがいっぱいあると言う事は隠れるところ、あるいは隠すところもいっぱいあると言う事だ。
「この中を草の根分けるかのように罠と敵探せってことですか……」
「はい、そうなりますね……」
これは流石に少しうんざりすると言う物だ。しかもさっきの奇襲を防いだ一連のやり取りで気付いたことがある。
「しかも、ここじゃ長物って相当使いづらいですよね……」
「あ、そういえば……」
そう、先ほど思わず秋彦は槍を振るったが、持ち前のリーチは、逆を言うと広い空間でないとその真価を発揮できない、店の中なんて言う狭い空間ではあまりにも邪魔になる。下手にふるえば逆に罠を作動させ、いらぬ窮地を招くやもしれない。
「しょうがない。とりあえず俺は槍じゃなくて徒手空拳で行くか……自動ドアも後で直さなきゃ……」
ここから秋彦達は、しばらく奇襲と罠に振り回され、狭い所で戦う面倒さをいやというほどに味わうことになる。剣士組も狭い所ではやはりリーチがネックになって動きづらく、かなりフラストレーションをため込むことになる。
こういう場所で必要なのは短剣くらいの大きさの物だと言う事を思い知ることになった一行であった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は2月21日午前0時予定です。
よろしくお願いします!