第百三十七話 突撃! サービスエリア!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
質疑応答の時間を終えた次の日、秋彦達は走る車の中にいた。ミニバスレベルの大きさの車だ。車体に番号が25と書いてある。
運転手から声がかかった。
「皆様、お待たせいたしました。間もなく皆様の担当サービスエリアに到着いたします」
「おおー、やっとか」
ミニバスの中は興奮と緊張に包まれて、空気がぴりついている。そんな中秋彦達はどこかのんびりとした様子でいる。
質疑応答を終えた次の日に、さっそく威力偵察を開始するべくそれぞれの様々な組み合わせの中から選ばれた組み合わせがそれぞれのサービスエリアに派遣されていく。
秋彦達も一定の組み合わせの中に勿論入っているので、電脳ギルドを通じて連絡がきた。組み合わせに入らなかったBクラスやCクラスの探索者は、まずは待機しこれからテレビ中継される戦闘の様子を観察するようだ。
レインボーウィザーズのチームはS、A、B、Cの全クラス4チームと言う人数的には少ないチームにつけさせられた。
尤も、Sクラスはどこもあまり条件がよくないところが多い様だ。例えばCクラスが9チームいる所もあるし、すごい所はSクラス単チームで派遣されるところもあったようだ。
しかしそれは仕方ないのかもしれない。何せSクラスは数が違う。
全探索者チーム500チームの内、Sクラスは10チーム程度しかいないが、他のチームはAクラスが50チーム、Bクラスが150チーム。残りのCクラスが約300チームと言う数でいるのだ。
当たり前だがクラスが下である程数が多い。これは現在の探索者がどれだけこの戦いに備え切れたかと言う現状の表れでもある。今日この日までに自分を鍛え上げ、その過程で得た物を金に換え、最高の装備を整える。それを高いレベルで行える人とはやはり一握りしかいないのだ。
そして今、その備えがどれほどのものであるかを試す時である。
つまりSクラスの戦力で一体どの程度なのか、Cチームと言う戦闘力一万を切る探索者と言う実力が低い人たちを連れていても大丈夫なのかという所を計る。
それはとても重要なのだ。
勿論、Cクラスだけのチームもあるが20、あるいは30チームも徒党を組ませているところもあり、安全面を考慮した上での手探りであることが見て取れる。
検証のためとはいえ、苦労することにはなるようだ。
などと考えていると、前方にテントや戦車、テレビ局の車が見えてきた。
車でサービスエリアに入ると魔物に襲われるから、少し手前の高速道路の路肩に拠点を作って、探索者チームの戦闘の観察、撮影。そして万が一探索者チームがやられた場合に即刻回収し、撤退を図るための自衛隊の部隊が配置されているのだ。
探索者として日が浅い、あるいは探索者として鍛錬されていない自衛隊の人々でも、装備を整えたうえで倒れた人の回収、そして撤退に徹することを前提にするなら、恐らく問題ないだろうとの事らしい。
秋彦達がミニバスから降りると、自衛隊の人たちが全員手を止め、こちらに向けてビシッと敬礼をしてくる。
張り詰めた緊張感がさらに引き締まる。
「すごい緊張感だな……」
「しょうがないよ、自分達の力が通用するかどうかを試す一世一代の場だもん」
バスから降りて秋彦と優太は割と暢気に構えているが、他の探索者達は装備に着替えて武器を振ったり、ストレッチをしたりと準備運動に余念がなく、気合の入りようがすごい。
また、それとは別に気合が入りまくっている人々もいた。
テレビ局の人々だ。
彼らは政府と探索者が行う一世一代の大勝負をカメラに映さんと気合が入っている。勿論ただ見世物にするだけではなく、敵の動き方や特性を記録に残すことはのちの魔物対策に大きく貢献するだろう。
一応魔物の死体は極力映さないようにしたりするらしいが、今回の放送は生放送で、しかも戦闘なのでどうしても暴力的であったり、グロテスクな場面が出て来るので、そのあたりの注意喚起を十分に行ったうえで、小さい子供には見せないように周りの大人が配慮していく形を取ったようだ。
それでも興味本位で見る子もいるだろうが、それは自己責任だ。
出撃が決まってから今に至るまで、テレビやインターネットなどのメディアはあちこちで、この時間に行われる生放送は非常に暴力的かつグロテスクになると散々警告しているのだ。知らなかったなどという言い分は通らない。
「にしても桃子はこっちではないから、いつもより少なく感じるわね」
「……向こうには向こうのチームがある。仕方ない」
ジュディがぽつりと漏らすと、茜がフォローを入れて来る。
今回桃子はビューティフルドリーマーのリーダーとしてこの戦いに参加している。しかも班が分かれてしまったので、今回はとりあえず桃子を除いた四人でレインボーウィザーズをやっていくことになる。
そのことに不安はない、と言えば嘘になるが前々から決まっていたことだ。今更どうこう言う事でもないだろう。
そうやってチームで話をしていると、今回班として共に戦うチームの方々が集まってきた。
「レインボーウィザーズの皆さん、今日はよろしくお願いします」
「これはご丁寧にどうも、【鋼の騎士団】の皆さん。こちらこそ本日はよろしくお願いいたします」
Aクラス探索者チーム、鋼の騎士団が最初に手を差し出してきたので握手をする。
堅いガード能力がウリである、今絶賛売り出し中の九州の探索者だ。メーツーで最近見た覚えがある。
「改めてよろしくお願いします、レインボーウィザーズさん。まさか探索者のカリスマ。日本最強との呼び声も高いあなた達と組んでいけるとは、光栄です」
「はい、【アンリアルコード】さん。よろしくお願いいたします。そこまで持ち上げられるとちょっと照れますね」
次に握手をしたのはBクラス探索者チーム、アンリアルコードだ。
東北出身の探索者チームで、素早い動きで敵を翻弄する戦い方を行うタイプの探索者達だと聞いた。クラスとしてはBに分類されたものの、地元では有名人らしい。
「あああああああのののあのあの……」
「すみません、まずちょっと落ち着きましょう」
「は、ははははい! おおお、お会いできて光栄です! 【アリアンタイムズ】です!」
「はい、よろしくお願いいたしますね」
最後に噛みまくりながら必死で声を掛けてきているのはCクラスチームのアリアンタイムズ。
近畿地方で活動している、シルバーランク探索者ではある物のギリギリの参戦となったタイプの探索者だ。
喋りは噛み噛みで、アンリアルコードの面々よりもガッチガチに緊張してしまっている。
秋彦の力量感知的にも不安になるくらいに強くなさそうだ。彼らの事は気にかけておかないと戦いの最中に倒れてしまうかもしれない。
緊張をほぐすためにもあいさつの後は、全員で会話を楽しむことにした。自分達が探索者になったきっかけやこの戦いにかける思い等、色々話しこんでいく。
そうやってしばらく時間を潰していると……ついにその時が来た。その時を自衛隊の隊員が伝えに来た。
「皆様、お待たせ致しました。高速道路解放戦線の威力偵察の方、準備完了いたしました。これより作戦開始となります!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は2月12日午前0時予定です。
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