第百三十六話 威力偵察!
累計PV数208万突破しました!
みく@JK魔法少女様(@majo_1920)より、ファンアートを頂戴いたしました!
こちらになります。
とてもかわいらしいタイトル絵となっております。ライゾンですね。秋彦達の前に現れてダンジョンの説明した人です。
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
会場が静まり返る。
威力偵察、小規模の攻撃を行う事によって敵の内情を把握するための軍事行動だ。今回はサービスエリアに複数の探索者チームが徒党を組んでサービスエリアにて一当てを行うことになる。サービスエリアの制圧を含むので威力偵察としては多少戦闘を大量に行う事にはなるが、地方都市に対する威力偵察と言うにはまさしくうってつけかもしれない。
これは緊張の一瞬だ。試金石宜しく自分達の力量が、地方都市奪還作戦に通用するのかを試す。この成果いかんで自分達が本当に地方都市を奪還できるかどうかがわかるのだ。緊張しない訳がない。
「探索者チームの割り振りについてはこれから今作戦において人事管理を行っている東北ギルドマスターである鬼塚女史から説明を受けて頂く。私からは以上だ」
千田はそういうと一礼して席へ戻っていく。そして交代に東北ギルドマスターである鬼塚が演壇に上がってきた。黒髪ロングが美しい凛々しい女性だ。
「皆様、初めまして。東北の方々はこんにちは。ご紹介に預かりました、東北ギルドマスター、鬼塚です。今作戦において千田氏は各地方都市及びサービスエリア等々の偵察を担当していましたが、私は今作戦における皆様の部隊配置などの人事管理を担当させていただきます。皆様どうぞよろしくお願いいたします」
先ほどの荒っぽいながら硬い口調の中国ギルドマスターの千田とは違い、こちらは口調こそ丁寧だがどこか冷たい印象を受ける。いわゆるクールビューティーという人だ。
「ではさっそく始めましょう。今回の威力偵察ですが、まず最初にここにいる皆様のチームの平均戦闘力によって階級を分けました。高い順からS・A・B・Cの順ですね。この階級とチームの人数を組み合わせて様々な戦力の組み合わせを作成し、それをサービスエリアへ制圧を前提とした威力偵察を行い、実際にどの程度現在のサービスエリアに通用するかを試験していただきます」
そしてさらに鬼塚の説明が入る。まずはシルバーランク探索者の階級分けの説明だ。
探索者チームの平均戦闘力が三万を超えていればSクラス
探索者チームの平均戦闘力が二万を超えていればAクラス
探索者チームの平均戦闘力が一万以上二万以下であればBクラス
探索者チームの平均戦闘力が一万以下だとCクラス。
シルバーランク探索者はこの様に分けられるらしい。
そして分けられる探索者チームの組み合わせだが、実に様々だ。
例えばAクラス一、Bクラス三、Cクラス六の10チームのところもあればSは単体のチームの所まであるようだ。
基本Cクラスは必ずSかAクラスのチームと一緒に組まされるらしい。雑魚一体の戦闘力が五千まで行くなら、戦闘力一万以下では現状確かに不安は拭えない。妥当な判断だろう。
尚、秋彦達はSクラスに属することになった。あれだけ金に物を言わせてがっちり固めたのだ。むしろそうでないといけない。
といっても装備の関係でどうしても布装備の多い後衛を差し置いて、鉱物装備の多い前衛が大きく戦闘力を伸ばした結果と言えなくもないが、とにかく前衛の戦闘力が高いのだ。
攻撃を受ける機会が多い分、装備にも気を使ったというべきだろう。
ちなみにSクラスに属する探索者チームは、どれもこれも音に聞こえた実力者ばかりだ。数としてはわずか10チームと言う少なさである。
しかしそれは当然だ。
何せ戦闘力三万越えを果たす程装備に金を掛けられる探索者はそうそういない。現状探索者達の中では、戦闘力は二万を超えていれば一流とされている中、三万を超せるほどに装備を充実させられるのは、よほど探索者として成功しており、資金が潤沢にあるチームになる。そんな探索者は世に数える程であり、そんな存在に会えることなどそうないだろう。
しかし今、そんな探索者が一堂に会している。恐らくこのような事態で無ければ決して会う事のなかったであろう、まさに日本の探索者の最高戦力と言えるだろう。
「そして、皆様には電脳ギルドを通じてこちらで行った班分けに従って、様々な組み合わせでサービスエリア及びパーキングエリアの制圧を行っていただきます。当然制圧まで行ければそれでいいのですが、今回はあくまで威力偵察です。どういう組み合わせで向かうのが効率的かを図るためのものです。戦力的にわざと難しいであろう組み合わせもあります。なので自分の命を最優先に考えてくださいね。しかし決して手は抜かない様に。この戦力ならばこのくらい討伐できるという所も観察、記録していきますので」
鬼塚女史はあくまで、この作戦は威力偵察であることと、逃げていい事。そして命を最優先することを強調している。冷淡に見えて案外情はあるのかもしれない。
「それでは私からは以上です。最後に、関東ギルドマスター、雨宮氏より一言頂き、質疑応答の時間とさせていただきます」
鬼塚女史は優雅に一礼をすると席へ戻っていく。
そして一回目の会議の締めを務めるのは雨宮の様だ。もはや慣れた様子で演壇の前に立つ。
「えー、今回の高速道路解放戦線の最初の作戦行動の説明はこれで以上となります。残りの時間は質疑応答の時間となっております。この後いったん食事休憩を挟んでの質疑応答に移ります」
やはり今回も質疑応答の時間はあるらしい。まあこれからの動きの中でも不明瞭な部分や今後についても聞いておきたい人は多くいるだろう。マスコミなどは、もう早く質問したくてうずうずしているようだ。
会議の発表からだいぶ待たされたのだ。その分の質問もきっと多い事だろう。
もっとも、秋彦達からすれば、今回は気楽な物だ。最悪寝ていたって指されることはないだろうし、この会議が中継されている以上後でだってネットで見ることだって可能なはずだ。
まあだからと言って寝る様なことは極力避けたいが。寝ているところをテレビに映されたら堪った物では無い。全国に恥をさらすことになる。あんな風に盛大に送り出された身としてはそれを人に見られるところは避けたい所である。
「では最後に、もう何度目になるかわかりませんが、何度でも言いましょう。これは、今回の戦いは、日本を魔物の手から取り返す戦いになります。ここに至るまでに、我々は数えきれないほどの物を失い、大きな犠牲を何度も払い、そのうえでやっとここまで来ました」
その言葉を聞くと会場が一気に沈痛な空気を出す。
誰もがこの時自分達が失ったものを思い返したのだろう。それは家族かもしれない、仲間かもしれない。あるいは恋人かもしれない。誰もが心に闇を、傷を抱えてここまで来ているのかもしれない。
あるいはそんなこともなく、ただ名誉や承認欲求の為にここにいるのかもしれない。しかし、それはいい。大事なのは、思惑はどうであれ、戦う意志をもってここにいる事だから。
「故に、我々はここに宣言しましょう、我々はもう魔物におびえない、魔物に屈しない、この国は、我々人間の世界なのだから!」
会場から拍手が起こる。やはり雨宮の言葉には力があるのだろう。
「では、日本探索者ギルド連盟会議、いったん休憩をはさみます。休憩後は質疑応答の時間となりますので、各自食事やご用意の方をお願いいたします!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は2月9日午前0時予定です。
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