第百三十二話 大阪入り、大歓迎の様子
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
飛行機に乗って空港を飛び立つ。
とは言っても飛行機の中では特に何もすることもないし、風景を楽しむこともできない。広がる景色は青空と雲がせいぜいで他は何も見えない。
「なんつーかあれだな。やっぱり暇だな」
「まあそうはいっても空港についちゃえばその後は嫌でも忙しくなるって」
退屈そうにする秋彦を優太がたしなめる。
流石にそういう気分じゃなかったからもっては来なかったが、携帯ゲームの一つでも持ってくるべきだったかと秋彦は今更ながらに少し後悔した。
にしても機内の周りを見ると流石に全員似たような年齢層、あるいは大人ばかりなだけあってそれなりに静かに過ごしている。
『わー! すごいすごい! お空飛んでるー!』
『龍ちゃんみたいに羽が動いていないのです! どうやって飛んでいるのかわかんないのです!』
「龍ちゃん、静かになさい」
「こ、コロナ。周りの迷惑になるからやめよう」
……秋彦と優太の従魔を除いて。
彼らは今サッカーボール程度の大きさのケージに入れられているが、それでも外の景色を見ることが出来ており、二匹は空を飛んでいる飛行機に夢中だ。やっぱりこの二匹は結構お子様っぽいらしい。思いっきりはしゃいでいる二匹を何とかおとなしくさせる。
しかし圧巻だ。これほどの数が全員探索者だというのだから。ひとによって差があるとはいえ全員一騎当千の兵ぞろいだ。
もしここでハイジャックなどがあっても、半数以上がグルでない限り取り押さえる事は出来るだろう。もっとも、今の飛行機では探索者が暴れたら暴れた衝撃に耐えきれずに空中分解しそうなのだが。
ともあれ到着までもう少し暇になるのは間違いない。取り合えず秋彦は優太と雑談を行って時間を潰す。ジュディ達とは席が離れてしまったので五人で話が出来ないのは残念だ。
………………………………
飛行機より、間もなく到着のアナウンスが流れた。飛行機の中は、約一時間半にわたる拘束が解けることによる弛緩した空気とついに戦いの舞台に到着にしたことによる新たな緊張感の入り混じった不思議な空気を醸し出していた。
関西国際空港。関西における空の玄関口であり、外国からの空の出入り口でもある。
今、この空港には多くの探索者がいる。今日という日の為、否、今回の作戦の為に全国各地から集められた精鋭、勇者達が集いに集う場となっている。
飛行機が完全に止まったことを確認し、全員降りていく。ここでジュディ達と合流した。
「お疲れ様。いや~遠くにいても龍ちゃんとコロナちゃんが騒いでるの聞こえたわよ」
「はしゃぐ気持ちもわかるけどさ、もうちょっと静かにしときなよ」
「……皆ひそひそ話してた」
念話というのは割と広い範囲まで話の内容が聞こえてしまうらしい。どうやら結構騒いでいる声が遠くまで響いてしまったらしい。
『ごめんなさい……』
『ごめんなさいなのです……』
二人ともしゅんとしてしまった。
「あー、もういいから」
「次は気を付けようね」
こうあからさまに落ち込まれると逆にしかりつけにくい。まあ反省しているようだし、これでいいだろう。
それからさらに進んで荷物の受け渡しの場に来る。ベルトコンベアに荷物が乗ってくる場所だ。
正直全員気が気でないだろう。マジックバッグもドレスアップリングも全員にとってそれぞれ重要な物や固有の物。持っているお金をありったけ投じて購入した道具がみんな入っているのだ。それが自分の手にないというのはやはり恐怖でしかないだろう。
全員自分の番号が括り付けてあるドレスアップリングやマジックバッグを手にしたらすぐに中身を確認したりドレスアップリングの中身を装着し、ちゃんと自分の物であるのかを確認している。
あちこちで、自分のものであるかどうかの確認が出来たことで安堵の声が聞こえてくる。
かくいう秋彦達も慌ててマジックバッグの中身を確認し、ドレスアップリングの中身を装備する。
「よし、中身確認できたぜ!」
「こっちも!」
「私も問題なしよ!」
「あたしもオッケー!」
「……異常、無し!」
レインボーウィザーズ全員が装備を装着すると、周りがざわついた。
「うわ……すげぇ……」
「あれが……現行最先端チームの装備……!」
「すごい……羨ましい!」
どうやら自分達の装備を見てレベルの違いに驚いてしまっているらしい。
ちょっと装備を見せびらかす気がして気が引けたのでしまおうとしたら雨宮が全員に声をかけてきた。
「そうだ。皆、折角だしこのまま装備をみんなに見せながら行こう。出迎えの人たちに関東チームの到着の宣伝になるしね」
「え、でも武器を持ったまま歩いて大丈夫なんですか?」
「今日は特別ってやつさ。今外は大盛り上がりしているみたいだしね」
「え? それってどういうことですか?」
「まあすぐにわかるさ。じゃあ行こうか」
少し府に落ちなかったがとりあえず武器防具をそのまま装着したまま外に向かう。すると……
人が山の様になって押し寄せてきた!
しかし警備員さんが道を潰さない様にガードしていて、とりあえず何とか進めるようになっている。黄色い声を上げてる年若い女性の集団、あるいは拍手をしている中年男性の人だかり、小学生くらいと思われる子供たちも大勢いる。
人によっては横断幕や旗をもっている。少し見てみるだけでも多種多様な歓迎の言葉が書かれていた。
≪ようこそ勇者たち!≫
≪日本の底力を見せてくれ!≫
≪目指せ! 地方都市奪還!≫
≪日本再生を果たす!≫
また、カメラや記者の姿もあり、大騒ぎになっていた。
「あー……これってもしかしなくても出待ちか?」
「決まってんじゃん、あ、あたし一旦引っ込むね。こっからはビューティフルドリーマーのリーダーやってないといけないしね」
「お、おう」
そういうと桃子はすぐに別の女子集団の中に飛んで行って、合流していた。
そしてこの出待ちの面々の中、真っ先に先陣を切る雨宮率いるチーム【悪夢の迷宮】から、どのタイミングで出ればよりいい位置に行けるかの相談をしているようだ。芸能人の性なのか、しょうもないと思いつつ、あれはもうそういう物なのだというその心意気は理解しておこう。
とにかく秋彦達はそんな事情には付き合わない、というか付き合いたくないので雨宮チームにぴったりくっつく形で一緒に出ていく。
まあどこであろうと騒がれはするので、とりあえず笑顔で手を振るくらいはしておこう。歓声は一層大きくなるが何というか秋彦達も桃子がいなくてもいい加減慣れた感がある。この大勢を前に、手を振る様子も表情もぎこちなくもなく自然だし、笑顔もひきつっていない。
そしてニュースキャスターの誰かの近くを通った時に急に質問をされても、きちんと答えられるようになっていた。
「すみません、レインボーウィザーズのリーダー秋彦さん、何か、何か一言を頂けないでしょうか!?」
「えっと、そうですね。うん、どんな局面でも我々は必ず勝ちます。勝利をご期待ください!」
その一言を聞いてカメラのフラッシュと歓声が一層大きくなった。
秋彦達自体は流れに沿って歩いて行き、そのまま大きな送迎用のバスに乗った。この後は会議場までバスで乗っていき、会議の開始となる。早くも少し気疲れしたが、まだまだ今日は始まったばかりである。
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次の投稿は1月28日午前0時予定です。
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