第百二十八話 地方都市奪還作戦の発令。各地の有力探索者の反応
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北海道、札幌。
大通公園や時計台やテレビ塔が有名だったりする北海道きっての繁華街だ。そんな繁華街から少し外れるとマンションなどの住宅地もある。そんな住宅地の一角に建つマンションの一部屋が舞台である。
その部屋は冷房がないにもかかわらず、また夏真っ盛りだというのにやたらと寒い。そんな中で椅子に座ってテレビを見ている男が一人。
髪の毛はぼさぼさで、目元にはくっきりとクマが出来ており、無精ひげと血色も悪いのも相まって、病気持ちにも見えかねない。右腕には魔法文字が刻まれた包帯を幾重にも巻き付けられている。
この男、名を吹雪 氷牙という。寒い場所で生きることを義務付けられたかのような名前である。
氷牙が見ているのはバラエティー番組だ。地方都市奪還作戦発令からしばらくして放送される各局の特番、地方都市奪還作戦により、魔物が一掃されることによる様々な影響を討論したりしている物がほとんどだ。
「ヒヒッ、期待されてるねぇ俺たち」
そうつぶやいていると、男のいる部屋のドアが勢いよく開けられる。
入ってきたのは部屋にいた男とは似ても似つかない男だ。髪型はばっちり七三分け、髭のそり残し一つなく、日に焼けて黒くなりかかっており、血色のいい肌からは北海道とはいえ暑くなってきたことを証明するかのように汗が吹き出てきている。
「おい、氷牙! テレビ見たかよ?!」
「騒ぐな氷川、あったり前だろ。見てねー探索者なんているわけねーわ。てか久々の休みなのに探索者の副業後に上がり込んでくるなよ……」
勢いよく部屋に入ってきた男は氷川 伴次。氷牙の友人であり、チームメイトだ。
「だったら話は、はえーわ! もう、おりゃあワクワクしちまってよ! あの戦いから魔物どもがのさばっていたのをついに叩き潰せるんだ! 準備はしてるだろうな? いつ召集掛かっても向かえる様にするぜ!」
「一応準備はしているが……ギルドからの赤紙ねーと俺は動けねーからな。まああっても、帰って来たらグチグチネチネチ言われるんだ」
「ああもう! そんなとこさっさとやめちまえよ! このご時世で信じらんねーよそんなブラック企業!」
「だから何度も言ってるだろ……氾濫騒ぎが起こるまでは普通の会社だったからその時の恩もあるし、叔父の紹介だからやめづらいんだよ……」
「本当にありえねーよ! 北海道ナンバーワン探索者チーム【絶対零度】の大将が社畜なんて!」
「コネ入社ってこういう時大変だわな……辞めづれーわ」
………………………………
「さー、皆急ぎや! ニュースによると会議の開催場所は何とここ大阪! 日本の有力探索者に顔を売ってコネを得る大大大チャンスや!」
一方こちらは、大阪の下町にある、とある商店街。そこで多くの人相手に大声を張り上げる少女がいた。
少女が声を掛ける先には、忙しそうに物を持って駆け回る様々な年代の男女がいる。そのだれもが商人であり、興奮を隠しきれていない。
少女は目が猫の様にぱっちりしており、やわらかそうで人懐っこい顔立ちをしている。
服装は白衣を着ており、その下もスーツみたいな格好だが、見る人が見ればわかるが普通の白衣やスーツではない。探索者が着る服、布の防具だ。
そしてその中でもひときわ異彩を放っているのはナースキャップだろう。これは普通の人が見てもただのナースキャップではないのがありありとわかる。長い髪はナースキャップにしまわれており、清潔感もある。
彼女の名は喜瀬川 由香里という。
「ウチもいろいろ話したい人もおるし、物の売買も持ち掛けられそうな人が多い、腕がなるで! ここがウチら【浪速商人連合】最大の稼ぎどころやぞ! 気張ったらんかい!」
そう、彼女たちは全員探索者チーム、浪速商人連合の一員である。西の二大看板と呼ばれるうちの一つだ。
ギルドに所属している一つのチームとしては日本最大級の人数を誇るチームでもある。
とは言っても、大半はただの商人であって戦う力はない。戦う力があるのはその内の五人だけだ。彼女はその戦闘担当であり、戦闘チームを支えるポーション使いでもある。
「兄ちゃん、そっちはどないや?」
「おお、商品の仕入れも上々や。これやったら装備を整えきれとらん探索者相手によう売れる事間違いなしやで!」
「兄ちゃん流石!」
そういって由香里とハイタッチをするのは浪速商人連合の戦闘班の戦闘員にして副リーダーの兄、喜瀬川 縁だ。
探索者らしい引き締まった肉体、バンダナ姿にタンクトップと、土方の仕事をしているかのような格好をしているが、一応彼も商人である。
「しかし、上位の探索者が一堂に会するってことは、あの人も来るんやろな」
「ああ、南雲さんやろ? 兄ちゃんが大ファンの」
「な、なんやええやろ!」
「悪いなんてゆうとらんや無いの。うちもちょっと話してみたいし!」
「サイン色紙買っとかなな!」
「ええとは思うけど、商売優先やでー?」
「わーっとるわ! ワシかて浪速商人連合の一員やぞ、要らん心配すな!」
………………………………
「では、我が社からは君たち五人を派遣する。これで我が社は今の社会に対する社会貢献と責任を負ったことになる」
「「「「「はい! お任せください!」」」」」
「……無事を祈っている。戻ってきた暁には、君たちには特別手当を付けよう」
「ありがとうございます、失礼いたします!」
「「「「失礼いたします!」」」」
こちらは九州、福岡県福岡市。数多くのビルが並ぶビルの一室で、企業の社長が企業の社員を探索者として呼び、派遣した。
この会社は【株式会社北村建設】いわゆる建設業に位置する企業であり、探索者稼業にはあまり縁がないように見えるかもしれない。
しかし、ダンジョンとは場所に出来る物である以上、会社の所有している土地にダンジョンが出来てしまうと言う事もままある訳であり、建設が終わった後でダンジョンが出来てしまう事もままあるのだ。
そういった迷惑なダンジョンから起こる氾濫を防ぎ、物件や土地の価値を落とさないようにする役目も必要になってくるものなのだ。
それがこのチーム【北村建設魔物対策課】なのである。現在このチームは、実は九州における最有力探索者チームとしても名が知られている。
だが、チームを構成しているメンバーはどいつもこいつも堅気の人間に見えない位に強面だらけだ。これと比べるなら、秋彦などかわいいレベルで恐ろしい顔つきをしている。
中でも特に怖いのはリーダーだろう。
パッと見て目に付くのが、顔についた三本の傷だろう。目をふさぐかのような傷が一つ、鼻を横一文字に顔半分に切るかのような傷、そして頬についた一つの傷。それに加えて顔つきは険しくしかめ面の様だし、太い眉毛も相まって常に威嚇しているかのように恐ろしい顔になっている。体つきが普通の人の様なところはまだ救いがあるか。
彼こそは北村建設魔物対策課のリーダー、霧島 龍である。
今回の探索者の大会議も、彼らにとっては社長の命令で行くのであって、個人の私利私欲ではない。彼らにとって社長の意向こそがすべてなのだ。個人の主張や感情や欲も持ち合わせてはいるが、社長の命令の前にはすべて吹き飛ぶ。
何と言う事はない、彼らはいつも通りに仕事に出かけるだけなのだ。今までも、これからも。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は1月16日午前0時予定です。
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