第百二十五話 装備の受け取り(装飾品)前編
累計PV数190万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さて、これで武器と防具の受け取りは終了いたしました。ですので本日最後の目的地へ参りたいと思います」
「え、まだどっか行くのか?」
田村崎さんが、車を走らせてのアナウンスに秋彦が首を傾げた。装備品はすべて揃ったはずだが、まだ何か装備品があるのだろうか?
「ええ、最後にみんなで美容院に行くわよ」
「おおー! いいねいいね!」
「……身だしなみは大事」
女子陣は大盛り上がりだが、半面男子陣の反応は鈍い。
「え、ええー……美容院?」
「髪なんて千円カットの奴で十分だろ……」
「秋彦、それはちょっと極端だよ。でもわざわざ全員で行くの?」
「勿論ただの美容院じゃないわよ、今最新の美容院、探索者のための美容院。その名も【探索者専用戦闘美容院 ビューティーサーチャー】よ!」
どや顔でサムズアップするジュディだが、秋彦と優太はぽかんとしている。
「探索者専用……?」
「戦闘美容院……?」
思わず顔を見合わせてしまう。言葉はわかるのに意味が分からない。だが、そんな二人を差し置いて女子は興奮しっぱなしである。
「ええーーー!! あ、あそこの予約とれたのかよ?! うっそだろ!?」
「……流石ジュディ。この手の交渉で右に出るものはない」
「え? お前ら知ってんのかよ?」
「「こんなの当たり前でしょ!」」
……どうやら女子陣にとっては当たり前の様だ。正直訳が分からない。美容なんかが探索者の仕事に一体何の意味を持たせるというのだろうか。それが男子にはさっぱり理解できなかった。
「まあ男の子だものね。あんまり興味ないでしょう?」
「そらそうよ。適当にメンズなんちゃらって書いてあるの使ってるだけだし」
「僕もお母さんが買ってくるのを使ってるくらいかな……」
「まあそれはいいのよ。ただ、美容院と言ってもただ髪を切ったり、髪染めを行うだけじゃないのよ。探索者用の美容院を謳っているだけあってね」
「え?」
「探索者用の美容院はね。装飾品の販売、装着なんかも行ってくれるの。魔力のこもったタトゥシールに、髪飾りにウィッグみたいに、装飾品の中でも髪とかに関係する装飾品を扱う場でもあるの。もう地方都市奪還作戦が近いんだし、身だしなみを整えて、綺麗にして、ついでに魔法の装飾品も見てみましょ」
やはり身だしなみが第一にあるとしても、自分たちが持っている、あるいは作れる装飾品とはまた毛色の違う装飾品の入手が目的だったようだ。
「そういう目的だったか……まあ、だったらいいか」
「うん、そうだね。それにそろそろ髪も切った方がいいだろうし、ちょうどいいか」
「じゃあ決まりね。まあ、もう予約とっちゃってたから引っ張ってでも連れていくつもりだったけどね」
「無茶苦茶しやがるぜ……」
………………………………
東京渋谷、一行は車を駐車場に止めて、徒歩での移動になった。駐車スペースのなさは相変わらずの東京だが、奪還作戦発令が近くに迫っている今は以前よりも活気がある。
それにしても自分たちはもう歩くだけで周りの目がこちらに向くらしく、あちこちでスマホを向けられている。
とはいえ、こういった視線もいい加減慣れたものだ。特に気にせず、歩いていく。
「秋彦達もすっかり慣れたもんだね」
「もういい加減な……慣れないといつまでビクビクしてんだって話だし……」
「ねー……なんか慣れていく自分がちょっと悲しい」
それにしてもこの辺りにもずいぶん探索者用の装備を販売している店が増えている。
自分たちが今日手に入れた武器や防具には及ばないが、割と肉体力などの上昇が高いものが多い。
服屋では探索者用の肌着や下着も値段は高いが売られているみたいだし、金属系の武器や防具も売られているようだ。
「結構武器や防具も売られてるんだな……」
「それはそうでしょ。今回はすべてオーダーメイドで作ったから直接取りに行く形になったけど、量産品でいいならこういう所に来る方が早くて楽だわ。でも質にはそこまで期待は出来ないわよ? そうね……あ、ほら、これを見て?」
そういうとジュディは周りの店の近くへ行き、肌着を手に取る。
手に取っているのは男用のブリーフだ。説明書きを見てみると、こう書いてあった。
【フェンサーブリーフ】
≪軽戦士の為に作られたブリーフ。防御性能はあまり無い物の、あるかないかでは大違い。まずはここから。肉体力+50魔法力+100≫
自分達が今日手に入れた肌着の約半分程度の性能といったところだ。性能を見た後で値札を見てみると、驚きのお値段。何と十万円とあった。
普通のブリーフの相場からしたらあり得ないくらい高い。たとえ普通のブリーフではないにせよ、たったこれだけしか肉体力などが上がらない割にかなり割高に見える。
「うお?! たっけぇ……」
「うわ……本当に高いね。あたしが使ってるのの何倍よ」
「それだけじゃないわよ、ほら、あそこ」
そういってジュディが指をさした場所は、金属の武器と鎧が売られている別の店だ。渋谷だけあって服屋などが充実している場所だけあって、こういった場所にも武器と防具の店が進出するのはおかしい話ではない。
そしてジュディが指をさしたのはその中で、剣と盾が展示されているショーウィンドウだ。よく見ると秋彦はあれに見覚えがある。
「おいジュディ、あれって……」
「秋彦には以前見せたわよね。量産品の剣と盾よ」
「え? いつの間にそんなの見せてもらったの?」
優太の質問はともかく、一旦店を出て、ショーウィンドウを覗いてみると、説明と値段が書かれている。
【ホワイトソード】
≪白鋼で作られた、白い刀身が美しい剣。威力はそこそこあり、扱いも比較的容易で使いやすい。肉体力+500魔法力+250≫
簡素な説明文だが、お値段なんと百万円。軽自動車の新車が買えるレベルの金額である。
「こ、こんなにするんだ……機械製の量産品のくせに……」
「仕方ないわよ、白鋼がダンジョン産の素材だから、それを集めて作ろうと思ったらどうしてもこのくらいにはなるのよ」
そういわれると納得せざるを得ない。ダンジョン産の素材は、手に入れようとするといつも命懸けだ。命を懸けて、素材を手に入れて、さらに強い道具を手に入れてを繰り返しているのだ。何のリスクもなく手に入れようとするなら、やはり金をかける必要があると言う事か。
「……ところであたしらの武器とか防具ってどのくらいしたの?」
「共有資産が心配? 大丈夫よ。材料をある程度こっちでそろえて、足りない部分をお金で調達したから、実はオーダーメイドなことを考えると割安になっているのよ」
「……それでもオーダーメイドだから高いはず」
「まあそれはそうね。チームの共有財産は大体半分になったわ」
秋彦と優太、思わず吹き出してしまった。
「え、共有財産って確か億以上なかったっけ?!」
「あったわよ。出し惜しみする場面でもないし、命あっての物種よ」
「……それにあれは探索者としての活動のための資金。個人の財布は痛まない」
「そらそうだけど……やっぱこの金勘定の感覚だけは慣れられないぜ……」
そうこうしていると、やたらと長い行列が目に入ってきた。
「お? なんだなんだ? 何の列だ?」
パッと見ると探索者達が並んでいるようだ。発せられている魔法力や生命力で、探索者だと辺りがつく。
すると今まで黙っていた田村崎さんが口を開いた。
「えー、では皆様、長い徒歩の移動、お疲れ様でした。ここが目的地である探索者専用戦闘美容院 ビューティーサーチャーとなります」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は1月7日午前0時予定です。
よろしくお願いします!