第百二十四話 装備の受け取り(鉱物) 後編
累計PV数185万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さて、それでは早速撮影の方に入らせていただきまっす!」
「よろしくお願いいたします」
改めて全員撮影場所へやってきた。
先ほどまでの動画撮影の一部でも使われていた撮影所は、普段は彫金スキル持ちのリーダーの作業や他のメンバー全員の制作した完成品を撮影する場所でもある。今回はそこでレインボーウィザーズ一人一人の写真撮影とアギトのメンバーと一緒に集合写真を撮ることになる。
「じゃあさっそく始めさせてもらうっす、まずはそうっすね、こういう撮影に一番慣れているであろう桜さん、じゃなかった。えっと桃子さんからお願いしまっす!」
「芸名でも本名でもどっちでもいいですよ。わかりました」
「ありがとうございまっす。後続の皆さんは桃子さんの撮影の様子をよく見て、自分の撮影に役立ててほしいっす」
「はい、わかりました」
「皆よく見ときなよ、あたしの撮影、プロの被写体の撮影風景ってやつをさ」
最初に撮影に挑むのは桃子だ。まあ桃子は本業がアイドルなだけあって写真撮影はお手の物だ。まずはそれを見て自分たちの写真撮影の際に参考にするのが賢いだろう。
桃子も慣れたもので、プロの被写体と自らを豪語し、サムズアップと笑顔の余裕付きだ。
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「いいっすよ! 流石現役アイドルさん! 素晴らしいっすよ! よっし、これで終わりっす! お疲れ様でしたっす!」
「お疲れ様でした」
「お疲れ。やっぱりモモってアイドルなんだな」
「はっはっは、改めて本物ってやつを目の当たりにして再確認した?」
「うんうん、すごいよモモちゃん、かっこよかった!」
「えへへー、ありがとう」
男二人に褒められる桃子。だが実際撮影時の桃子は輝いていた。
元々アイドルを行っているだけあって桃子は美人だ。
ベリーショートの黒髪にぱっちりとした目が活発そうな印象を与える。化粧もピンクをベースに薄いがしっかりとされており、それがアイドルらしいピンクを前面に出したスカートにベストが可憐だった。マイクを持って決めていたポーズの一つ一つがきれいに決まっていた。伊達に今をときめくアイドルの上位陣ではない。
「じゃあ次は誰が行く?」
「あ、じゃあ……僕行きます」
「親友が行くのか?」
「まあね……こういうのは早くに終わらせるに限るよ……」
「ああ、うん、そりゃそうだわな」
ちょっと緊張しつつもそれほど重くはない足取りで撮影の為の場に向かう優太。結構積極性が生まれてきたのだろうか。
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「うおー、いいっすねー! イケメンさんっすねー! 最後にまた違うポーズ取ってみましょう! 杖をこういう風に構えてくださいっす!」
「え、えっと、こうですか?!」
「おお! いいっすねー! 一歩下がってくださいっす! 撮りますよ! ……はい、お疲れ様でしたっす!」
「お疲れ様でした!」
しばらく頑張って求められるままにポーズを取り続けていた。
それにしてもやはり優太は中性的なイケメンである。たれ目でいつも困ったような顔をした童顔に加え、身長162㎝という小柄な少年は、やはりおとなしそうに見えるし、少し弱々しそうではあるが、最近は毅然とした態度も取れるようになってきているおかげか、以前よりもとても頼もしく見える。
フード付きのマントにジャケパンの格好は、もはや魔法使いとしての風格が漂うほどに似合う格好だ。もはやコスプレなどと言わせない、現代の魔法使いとして胸を張れるだろう。
「えっと、じゃあ次は?」
「……私」
「あら、次は茜ね?」
「……二人はレインボーウィザーズの目玉にして本命。二人は後」
茜はそれだけ言うと撮影の場に向かう。相変わらず何を考えているかよくわからない。
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「はい! いいっすよ! 凛々しいっす! はい……はい! いいっすよ、弓を構えてくださいっす! ハイ、OKっす! 最後に髪をなびかせたポーズを! ……はい! ではこれで茜さんも終了っす! お疲れ様でしたっす!」
「……お疲れ様」
驚くほどに淡々と写真撮影を終わらせた。
おかっぱ頭に眠そうな目つきをしており、実家での着物姿は市松人形が動いているような印象さえ受けたのは記憶に新しい。
今は弓道着を纏っているから凛々しく見えるのだがどことなく不思議な雰囲気を纏っている印象は変わらない。
ほとんど撮影のコアラさんが喋っていて、茜はひたすら何も言わずにポーズを決め続けていた。何というかシュールである。
「お疲れさん、ひたすら黙ってポーズ取り続けてたな……」
「……必要ない、いちいち面倒」
「茜ったらクールね……」
「……次はどっち?」
「あー、じゃあ俺行くわ」
「え? アッキーが行くの?」
「男女の順番で来てるしな。それに俺みたいなムサイ野郎が最後じゃカメラマンさんが可哀想だぜ……」
足取り重くも、これも装備の為と自分に言い聞かせて撮影場に向かう。背中を丸めている様子はその長身も幾何かマシに見えるというものだ。
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「いいっすよいいっすよ! くっはー! あの南雲さんをこの手で撮影できるとは動画畑出身とはいえ、カメラマン冥利に尽きるっすよ!」
「ああ……どうも……」
「よし、では最後にビシッと決めましょうか! 槍をこういう風に構えましょう!」
「わかりました……こうでいいですか?」
「バッチグーっす! ……よーし、これで終わりっす! お疲れ様でした!」
「はい……お疲れ様でした……」
思った以上にたくさん撮影されたような気がする。槍を構えた格好から演武の様に体勢を変え、時に変顔をして、時に格好つけたような気障なポーズをしたりとだいぶいろいろなポーズを取った。
思わずため息をつくと、コアラさんが寄ってきて話しかけてきた。
「いやー、ありがとうございましたっす! あの南雲さんをこの手で撮影できるなんて本当にうれしいっす!」
「いえいえ、俺は他のメンバーと違ってイケメンじゃないから華がないですし、やりづらかったでしょう。お疲れ様です」
「何言ってんすか! 南雲さんだってすごいカッコいいっすよ! さわやかイケメンや中性的なイケメンじゃないだけっすよ。こんな彫りの深い顔立ち……髭とか生やしたらさぞかし似合いそうっすよ!」
「そ、そうなんでしょうか……? よく顔が怖いとは言われますが」
「あー、それ顔の彫りが深いからっすね、顔の凹凸がはっきりしてるから目元が暗くなりがちになるんっすよ、それのせいで怖いと思う人もいるんすよ」
「そ、そうなんですね……知らなかった」
「そうっすよ、もっと自信持ってくださいっす!」
顔立ちについて褒められたことがなかったので、思わず否定したが、秋彦の顔はそこまで悪い物ではない。
秋彦の顔立ちは、眉毛とまつ毛が太く、目は大きく目力が強い上に、眉毛と目の距離が近いので意識して柔らかくしておかないと、少々きつめの表情に見える。
鼻筋も通っており高く、骨格がはっきりしているし、口も少々大きく唇も少し分厚い。そのせいか顔の彫りが深い。
言ってしまえば典型的な顔が濃い人間なのだ。体格と相まって一度顔を見られれば、大抵覚えられるほどに。
とりあえずその場を後にして、チームの元に戻る。
「戻ったぜ」
「お疲れ様、かっこよかったよ」
「おう親友、あんがとな」
「お疲れ様。じゃあ最後は私ね」
「おう、行ってらっしゃい」
「ええ、ばっちり決めて来るわね」
………………………………
「うはー、素晴らしいっすねー! 外国人モデルさんみたいっすねー! はい、それでは最後にこういうポーズ取ってみましょう!」
「はい、では……はっ!」
「おお! いいっすねー! 目線下さいっす! 撮りますよ! ……はい、お疲れ様でしたっす!」
「はい、お疲れ様でした」
最後の一枚を取り終えて戻ってきたジュディ。気負った様子もなく、いつも通りの様子で写真撮影を行っていた。
だがやはりジュディは美しかった。
陶磁器の様な肌、眉は綺麗にはっきりとしており、唇はふっくらとしていて張りがある。頬骨がはっきり見えるが穏やかなタレ目が、知的で優しそうな印象を与えている。
ブロンドヘアーをポニーテールにし、頭にティアラをのせ、ドレスアーマーを身に纏う姿は剣と盾が無かったらおとぎ話のお姫様の様だ。
今日日お姫様がドレスの様な鎧を身に纏い、剣と盾をもって戦うアニメや漫画は珍しくはないだろう。だがそれが現実として目の前にいるのはやはり圧巻と言わざるを得ない。
「戻ったわよ。ただいま」
「おお、おかえり。いや、ばっちり決まってたぜ」
「うふふ、ありがとう」
「いやいや、どもっす、これで本日の撮影はすべて終了となります、皆様お疲れさまっした!」
コアラさんが頭を下げ、最後のあいさつに来た。
「撮影されたものは今後、ジュディさんとの取り決めに従って動画の中で紹介をさせて頂くことになってるっす、画像や動画は著作権に従って節度のある写真の公開をさせて頂くっす。基本写真はアギトの公式ホームページ以外には載せませんし、動画もヨウチューブに載せるだけとなってるっす」
「わかりました。ありがとうございます」
「できた動画は必ず載せますので、完成を楽しみにしててくださいっす!」
こうして全員の装備が整った。地方都市奪還作戦発令から時間を十分に使って仕入れた、個人で用意できる、現時点での最高の武器に防具が出そろったと言えるだろう。
地方都市奪還作戦は間もなくである。
「にしても結構淡々と撮影終わっちゃったね」
車に乗って出発後、優太がぽつりと口に出す。
「ユータン、それはユータンが被写体初心者だからそう見えただけだって」
「え、そうなのか? なんか俺も結構淡々と撮ってたような気がしたんだけど……」
「はー?! そんな訳無いじゃん! 特に二人はカメラさんにだいぶ気を使われてたんだよ!」
「え? マジで?」
秋彦がうかつに言ってしまった一言で車内の空気が凍り付いた。直感スキルを発動させていなくてもわかる。この寒気、明らかに言ってはいけないことを言ってしまったらしい。
どうやら今回、秋彦達はプロの被写体たる桃子にとって大分踏んではいけないところを踏み抜きまくっていたらしい。秋彦達は被写体としては素人なので仕方ない一面もあるのだが……どうやら藪蛇だったようだ。
「あっそ……ちょうどいいや。次の所に着くまでに、皆に被写体の何たるかっていうのを教えてあげるよ!」
「え、ちょ、ま、ま、悪かった、悪かったって!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は1月4日午前0時予定です。
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