第百二十二話 装備の受け取り(鉱物) 前編
累計PV数185万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「では次の受取先になります。次は武器防具専門工房【アギト】となります」
まだまだ続く装備受け取りの旅。今日の運転手にして茜の家のお手伝いさんである田村崎さんが次の行き先を告げると、真っ先に秋彦が反応した。
「おお?! 俺なんかそこ聞いたことあるぞおい!」
「……意外、知っていたの?」
「そういえば前茜の家に焼き肉しに行ったときヨウチューブよく見てるって言ってたよな」
「あらあらモモってば、不貞腐れちゃだめよ、今はよく知ってくれてるじゃない」
女子陣が話に乗ってきた。だが優太はよくわかっていないようで頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。
「え、有名な工房なの?」
「まあ有名だな。ヨウチューブ界隈では」
答えたのは秋彦だ。
武器、防具専門工房アギト、それは元はと言えば「漫画やアニメの中にしかない武器のレプリカ」をコンセプトに立ち上げられた芸術家集団【アトリエアギト】が前身であり、現在では「漫画やアニメの武器防具を現実に再現する」をコンセプトにした鍛冶士、彫金士、造形士などの集まる工房となっているのだ。
作る武器防具は、今はまだレシピ本になぞらえた物だけだが、それぞれの生産スキルがレベル10を超すと解禁される、オリジナル武器防具の作成を目指し、日々腕を磨き続けている。
そしてその腕を磨くための武器防具作成時の様子を動画編集、あるいは生放送してヨウチューブに投稿しており、その人気は探索者のみならず、一般人からも評価が高い。
また、動画内のコメントからアイディアを拾ってくれる時があり、今では一動画につき100万再生は固いくらいの大人気ぶりなのだ。
「へー、そうだったんだ。そんなすごい所によくアポが取れたね?」
「ええ、向こうも有名どころの探索者には結構声を掛けているらしくて、すごく喜んでいたわ」
「あ! 【よしりんの営業シリーズ】か!」
「そうそう、連絡を入れたらヨウチューバー名よしりんさんからすぐに返信とお願いがあったわ。武器や防具を選ぶ過程を動画にしたいんですって」
よしりんの営業シリーズ、というアトリエアギトから、アギトのお仕事にチャンネル名が変わった時に新たに始まったシリーズがある。
武器防具専門工房となった事で、そして生産スキルの登場によって、武器及び防具の生産が出来るようになった事で、銃刀法等で今まで規制されていた武器の売買が出来るようになったことで、自らが作った武器を販売する。これ自体がエンターテインメントとして成立するようになったらしい。誰に売るか。いくらで売るかが動画として盛り上がるようになったのだ。
なので、武器を必要とする高レベル探索者に声を掛け、売買交渉を行い、売買する。そういう様子を動画にしたシリーズ。それが営業担当のヨウチューバーの名前から、よしりんの営業シリーズと呼ばれるようになった。
関東にいることから、関東の有名探索者にはすでにかなり声を掛けているらしく、今回もジュディが声を掛けたらすぐに返事が来たらしい。
それを聞いて優太が気になったことを言う。
「でもそのヨウチューバーさんの腕は大丈夫なの?」
「正直ちゃんとした刀匠さんとかにも連絡したんだけどね。そういう人って刀一筋過ぎて、防具や私の欲しい剣みたいなのを作ってくれないのよね……剣だけじゃなく、防具もここは作ってくれているし、関東で鍛冶全般を総合的にやる人たちの中では腕がピカ一だったし、ちょうどよかったのよ」
「あー、成程ね……」
「大丈夫だろ、動画見ててもかなり腕がいいように見えたし。あの人たち作ったものを最後必ずアナライズカメラでアナライズするんだけどさ。今のところ肉体力プラス二千が平均行っていたから。そこまで心配しなくていいと思うぜ」
「そうなんだ。じゃあ大丈夫かな」
ともあれ、次の目的地に向かう一行であった。
………………………………
目的地周辺あたりに到着した。
工業地帯の一角にある工房、その中でも特に真新しい一角がある。氾濫騒ぎで破壊されていた部分と無事だった部分が、古い工業地と新しい工業地となって織り交ざっていて、上から見ると模様の様になっているのかもしれない。
目的地はもちろん新しい工業地帯だ。
以前のレプリカづくりの活動時にはプレハブ小屋で行っていたらしいが、武器と防具の作成という本格的な物になってからは、鍛冶スキル等の生産スキルの入手をした時の過程で稼いだ金を使い、本格的な設備を整えたらしい。大きな川が近くにある。
車の中から眺めていると、外からこちらを撮影している職人らしき集団を発見した。
いや違う、秋彦はその人物たちを知っている。
彼らこそ武器防具専門工房アギトのヨウチューバー達だ。
バンダナをした彫金士にして、さわやかイケメンリーダーの「アギト」。
厳つい顔をしたタンクトップのサブリーダーである「寿限無☆寿限無」略してジュゲム。彼は革細工のスキルを持った革職人だ。
ヘルメットに長袖の作業着に厚手のエプロンと手袋、長靴というバリバリの作業着姿の双子の兄「カイン」と双子の弟「アベル」。顔がそっくりで、弟が眼鏡をしている以外で見分けがつかない。兄弟で鍛冶職人をしている。
そして現在カメラを構えているバンダナとデニムのベストとジーンズを着た、素材調達の「あーららコアラ」略してコアラ。
最後に、販売担当にしてこのチームの紅一点、現在ビジネススーツを着ているザマス眼鏡の「よしりん」だ。
彼らはそれぞれがそれぞれの職人だ。最初はただの工作程度に過ぎなかったが、スキルを獲得してからは実際に使える武器を作れ、かつ現代人的な造形の感覚を持っており、探索者から評価されている。
「ようこそレインボーウィザーズの皆さん。武器防具専門工房アギトへようこそお越しくださいました!」
リーダーのアギトが手を出してきたので、それにこたえてがっちり握手をする。
「今日はよろしくな!」
「うわっと、はい、宜しくお願い致します!」
優太の背中を叩くサブリーダーのジュゲム。実際にははたく程度の軽い物だったが、優太の体が小さいので衝撃は大きかった。
「今日はよろしくお願いいたしますわ」
「ええ、お手柔らかにお願いいたしますね」
ジュディとよしりんも笑顔で握手をするが、その眼は互いに笑っておらず、すでに戦いが始まっているかの様相が見て取れる。
「あ、じゃあさっそくなんすけど、一人ずつ自己紹介宜しくお願いいたしまっす! あ、俺、動画撮影、編集と、素材の調達やってるっす、あーららコアラっす。コアラって読んで下さいっす!」
「よろしく、コアラさん。南雲秋彦です」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は12月30日午前0時予定です。
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