第百十八話 装備の受け取り(布) 前編
累計PV数180万突破、評価者数320人突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「で、結局引き受けさせちゃったの?」
「いやいやまだ返事貰ってないって、昨日の今日だもん。でもまあ引き受けてもらいたいよ」
「……強引」
翌日、久しぶりにレインボーウィザーズの五人が揃い、レンタカーで借りてきた七人乗りの車に揺られながらジュディ達に昨日あったことを報告していたのだ。
ちなみに運転主は茜の家で使用人をしている田村崎さんだ。
龍之介の背中に乗って、飛んで行ってもよかったのだが、それだとゆっくり話も出来ないし、飛んでいくほど遠い場所に行くのではないので、今回は車を借りたのだ。
「しかし、とうとう武器や防具の替え時かぁ」
「まあそれなりに使い込んできたしね。しかし秋彦の衣装が鎧になるなんてねぇ……」
「それぞれにサイズとかも合わせてあるわ。楽しみにしていましょ」
今日はジュディが以前から交渉や取引をしている会社や工房を少し回ることになっている。
地方都市奪還作戦の実行が迫っている中、武器と防具の見直しを本格的に行うことにしたのだ。装備を整えるためのお金は、チーム共用で貯めていた分を放出するので個人の財布は痛まないし、最新の武器防具などを装備することでどれほど戦闘力が上がるのか、今から楽しみなところである。
五人はピクニックか、小旅行の様なテンションで最初の発注元へ向かう。
………………………………
そうして最初に到着した所は、工場だ。小綺麗で工場には見えにくいが、看板に「探索者用布装備」と書かれており、ここが工場であることを主張している。
「さあ、皆さん付きましたよ。最初の目的地、株式会社カッソロの関東工場兼事務所です」
田村崎さんが到着した場所をアナウンスする。
カッソロの社長さんには以前もあったことがある。記憶が確かなら、化粧がきつめのパーマがかかった頭が特徴のおばちゃん社長さんだ。だが、結構人が良くて面白い人だった覚えもある。
車を止めて全員降りたら、まずは受付へ。
来館手続きを済ませ、全員待合室へ行くと、すでに待っていたらしく、社員さんが数名いた。
「いらっしゃーい、秋彦ちゃん達、お久しぶりね」
「お、お久しぶりです峯田社長……」
……おばちゃん社長と一緒に。
おばちゃん社長改め、峯田 和美代表取締役社長は満面の笑みで挨拶をしてきた。
「特に秋彦ちゃん、いつもうちの服を着て戦ってくれてありがとう。我が社の自慢なのよー、『あの南雲秋彦の着ている防具の衣装はこの会社が作った衣装なんだ』ってね!」
「はい、いつも助かっています。思えばあの衣装とは長い付き合いですから」
「そうねー、思えば秋彦ちゃん達とは最初の氾濫騒ぎの頃からの付き合いだったのよね。今となってはすべて懐かしいわ。この会社の、いえ、日本全土にとって大きな転機となった事件、災害だものね。でもそこから我が社の栄光の日々が始まったともいえるわ。不謹慎かもしれないけどね……」
そう、何を隠そうこの会社、秋彦の旧血染めの衣装を作った会社である。
それはつまり、あの日本魔物大氾濫の際に東京においてファッションショーを開き、秋彦たち探索者を戦えるように準備をした雨宮に協力した協力会社だ。
偽装のファッションショーであったと言っても服のクオリティーは評価されているらしい上に、あの氾濫騒ぎに乗じて自分たちの会社の知名度を一躍高め、初級ダンジョン突破時には、多くの魔法の布を雨宮からのコネで手に入れ研究してきた会社でもある。
株式会社カッソロと言えば、少し前までは無名の縫製会社だったのだが、たった二か月ちょっとで、もはや探索者業界における魔法の布製品において右に出るものなしの超有名会社なのである。
そしてその会社を引っ張っているのがこの人なのだ。第一印象として人の良い印象を受けるが、コレで中々強かな人物でもある。
話が長くなりそうなので、秋彦が切り出すことにした。
「峯田社長、そろそろよろしいでしょうか?」
「あら、いやだわあたしったら、もうおばちゃんになっちゃうと話が長くなってダメね。じゃあ秋彦ちゃんと優太ちゃんの男の子達は男のスタッフが案内するから案内された方へ行ってね。ジュディちゃん、桃子ちゃん、茜ちゃん達女の子達はここでやるわよ。ビシッと特注品を作ったからね。我が社の自信作、是非とも着て、履いて、有名にしていってね? あんた達! 始めるわよ、準備は出来た!?」
「「「はい!」」」
峯田社長は鼻息も荒く、スタッフに号令をかける。スタッフも慕っているのか興奮しているのか社長の号令に対し、声をそろえて返事を返す。
「では南雲様、石動様、こちらへどうぞ。ご用意は出来ておりますので」
「あ、はい。じゃあちょっくら行ってくるわ」
「行ってくるね。また後で」
「ええ、いってらっしゃい」
「また後でなー」
「……いってらっしゃい」
秋彦と優太は、挨拶もそこそこに男性スタッフに促されるままに部屋を出た。
………………………………
通された場所は会議室の様だ。男性スタッフが数人いて、服も用意されている。
「改めまして、はじめまして。男性用魔法能力付き布製品開発を担当しております。湯川 正仁と申します」
ナイスミドルなお髭の紳士が深々と頭を下げる。
「それでは早速ですが、製品のご用意をさせていただきました。まずこちらです」
そういって湯川さんが出してきたのは、青い長袖の上着だ。大きさから察するに秋彦の物だろう。
「秋彦様のトップスです。今回弊社の自慢ともいえる衣装が、鎧へ変化したという話をジュディ様よりお伺いしまして、急遽用意させていただきました。鎧の下に着るものとなっております」
どうやらすでに話をして、鎧の下に着る服を急遽手配させたらしい。手回しの良い事だ。
その後も丁寧に説明をしていく湯川さん。
特注で作り上げたものは、上着にズボン、肌着やパンツ、靴下やサラシまで特注の品を用意させたらしい。
これらは靴下以外全て体装備となり、ステータスで見ることが出来る体装備には、一番上に身に着けている装備しか表示されない物の、その下につけている上着や下着の分も、肉体力や魔法力、戦闘力もきっちり上昇するとの事だ。つまり今後は、アナライズした時に、同じ装備で戦闘力などに大きく差が出るときがあるようだ。
「へぇー、知らなかった……」
「今はこういう所で差をつける方もいらっしゃいますので、覚えておいてください。それと石動様には最後にこちらがあります。どうぞ」
「あ、これローブだ」
「あー、なるほどなぁ。あ、これはマントね」
どうやら、優太はこれらに加え、魔法使いが身に纏う様なローブがある。これが無いと魔術師っぽくないし、妥当なところか。
秋彦にもマントがついていた。首に引っ掛けるタイプのマントで、鎧の上から着れるように想定されている。
「これで製品の説明はすべてさせていただきました。それでは早速着替えてみましょう」
「「はい!」」
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