第百十六話 友人チームの地方都市奪還作戦にかける思い
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
それ以降、特に苦しいこともなく、レベリングは滞りなく進み、始まって約8時間になろうとしている現在、全員のレベルは順調に上がっている。
「よーし、レベル23まで行ったぞー!」
「よし、この辺で終わりにしよう!」
「あら? エミー君達もう終わりでいいの?」
「あ、モモちゃん、大丈夫大丈夫。これ以上上げたら初級制覇のボーナスがね?」
「あ、なるほど。そういう事ね」
桃子の疑問にエミーが答える。
どうやら五人はレベル23で終わりにするらしい。確かにそれ以上レベルを上げるとボーナスのうちの一つである低レベルクリアの初級が手に入らなくなる。残りはダンジョンの制覇によってDPを稼ぎつつレベルを上げていく方針の様だ。
「おし、じゃああそこのあいつらブチ殺して終わりにしようかね」
「じゃあまあ、ここはサクッと俺が……やるか!」
「わぁ?! は、はええ!」
とりあえず秋彦が残っていた数匹をさっと倒した。あっさり過ぎて友人チーム一同驚いている。
そしていそいそとオークの死体を一か所に集める。もう量を考えても肉の山と呼ぶにふさわしい。そしてそれを満足げに眺める秋彦。
「さんざんやったのが功を奏したな。龍ちゃんとコロちゃんの進化分の肉がそろったと思う。これだけありゃ次の進化分もいけるはずだ。龍ちゃん、コロちゃん。レベルはどう?」
『だいじょうぶー!』
『しんかできるのです!』
どうやら今回のレベリングによって二匹とも進化が出来るくらいにレベルが上がったらしい。
とはいえ流石に今はやらない。優太がいない間に優太の従魔を勝手に進化させるわけにはいかない。自分の娘のような存在の晴れ姿だ。当然みたいだろう。
「よし、後はDPの確保だけど、ダンジョンを制覇してスキルの習得とか、頑張ろう!」
「「「「おー!」」」」
五人は早くも明日に向けての算段を付け始めているようだ。このレベルで、DPをさらに稼ぎ、スキル面も向上していけば、恐らくそう簡単には死なないはずだ。今後も、高レベル探索者として活躍できることは間違いないだろう。
しかし、そんな様子の五人を見て、秋彦はふと興味をもったので、ちょっと聞いてしまった。
「ところでさ、五人は何でそんなに一生懸命に自分を強くしようとしてんだ?」
「え? それは地方都市奪還作戦に向けて」
「そうそう、それよ。なんかさ、お前ら普通の人が名誉とか目当てに奪還作戦に参加しようって感じしないんだよ。そこ以外になんか別な物の為に奪還作戦に参加しようとしている気がしてさ」
そもそも、地方都市奪還作戦に参加するだけなら、この五人であれば別に秋彦の手を借りなくても、残りの時間を堅実にレベル上げに努め、そのレベルをもって、自分達に合ったダンジョンを踏破し、報酬を得るだけでもギリギリではあっても間に合ったはず。
それは最初に見た、魔物を倒す手並みや情報収集を見ればわかる。
常日頃から情報収集をし、初めて来たダンジョンの中にいる魔物の情報を知っていただけでなく、情報をつかんでいたとはいえど、初見の魔物を相手して、ああまで苦も無く敵を倒せる力量、胆力。
秋彦から見た時、にわかな連中が名誉や承認欲求の為に努力してきた事とは思えないのだ。そしてそれらが地方都市奪還作戦が目的という風にも思えない。
この五人は何を思ってこの探索者の界隈に飛び込み、どこを目指しているのか。それがとても気になったのだ。
「ん~……といっても秋彦、こんなこと言うの難だけどつまらない話だよ?」
「まあ、面白くはないよねー……」
真崎と石崎の言葉に残りのメンバーもうんうんと頷く。
「あー、話すのが嫌か?」
「そうじゃねーんだアッキー。もう俺らの中では消化した話だから答える分には構わないんだけどさ。ただ……あー、やっぱり嫌なのかな? 自分たちの不運を見せびらかすような感じする気もするし」
エミーのどうにも歯切れの悪い言葉を奏と言葉が拾う。
「そうだねぇ。私達は互いに話し合ったし、互いに慰め合って、励まし合ったんだ。喧嘩もしたよね?」
「はい、真崎君と石崎君は特に。でも、あたしたちは飲み込んで、前に進むと決めました。弱い自分と決別すると」
どうやら今の自分達を形成するような出来事があったようだが、進んでしたい話ではないらしい。
「いいや、俺はアッキーには話しておきたい。こうして世話にもなったんだしさ。どうよ」
だが、エミーが最初に手を上げた。
「うーん……まあいいか、世話になるだけなって聞かれたことにはだんまりってのも良くないよね!」
「それは……そうか。ジジイに怒られちまうか。僕もそれでいいよ」
続いて奏と真崎がそれに乗った。となると、もう言葉と石崎には拒否権はないようなものだ。
「そうですね、これからもより良いお付き合いをしていくためのものと考えます」
「恥をさらすようで気が引けるけどー、皆が乗り気じゃしょうがないねー」
五人からの了承が得られたところで、エミーがこっちに向き直る。
「じゃあ話すよ。俺たちはさ、高校は同じでクラスも同じだけど、交流はなかったんだよね。俺らがある意味真の初対面になったのはあの忌まわしい氾濫事件が収束して少し経った時期【日本魔物大氾濫慰霊碑公園】なんだ……」
「え!? じゃ、じゃあまさか……」
「そう、俺たちはあの時に仲間や、兄妹、親とか、自分に近い人をあの時に亡くしているんだよ……」
氾濫騒ぎを収束させるために当時あちこちを駆け回っており、最低限自分達の地元では氾濫が起きないように討伐していたため、地元での死人が出ていなかった秋彦達は知らなかったが、当時は氾濫騒ぎが収まった場所では、ダンジョンに潜れていない自衛隊の隊員たちが主導して犠牲者達の発見等を行っており、遺体や遺族が発見されたものから葬式が行われていた。
日本中どこへ行っても嗚咽と慟哭が聞こえない場所がないと言われていた程だ。
被害者も日に日に増えていく日々。人々の心にあまりにも深く傷がついていた。
その惨劇を忘れないように、魔物が世に現れ、人の世に仇なしたこの事件によって傷ついた心の慰めの為に慰霊碑が作られるのは自然な流れだったと言えるだろう。
そしてその慰霊碑が置かれた場所は、派手に建物が破壊され、被害者がひときわ多かった場所であり、広くスペースがあるところでもある。
当時は倒壊したビルの瓦礫などが取り払われ、公園というには殺風景な場所に置かれているだけではあったが、慰霊碑公園として最低限の体裁を整えただけの場所ではあった。
だが、それでもそこに慰霊碑がある以上そこは東京を中心とした一帯の慰霊の為の場であり、そこに多くの人が訪れている。
「そこで俺たちは出会ったんだ。亡くした人の事を話したり、今後どうするのか、どうしたらいいのかとか。まあずいぶんいろいろ話したよ……」
「わ、わたしたち、このままじゃダメだって……復讐も……考えたけど、誰に、何に復讐するのって話にもなったりで……うう~……」
「言葉、しっかり……泣かないで……お願い……」
エミーは絶望したかのような声で冷たく淡々と話す。言葉も必死で声を絞り出すが、当時を思い出したのか、悲しみで声が出せなくなっている。慰めようとした奏まで泣きそうになっている。
「で、いろいろ話あったり、慰め合ってね。復讐じゃないにせよ、このままじゃ僕らだめだってことになったんだ」
「最終的に僕たちは誓ったんだ。魔物許すまじ、魔物に人間を殺させる事を許すまじ。俺たち人間は魔物には屈しない、ダンジョンの外の魔物は従魔でない限り殺す! 魔物が世を、外を闊歩することを許すなと!」
後を引き継いで話す石崎と真崎は明らかに言葉に怒気を孕んでいた。石崎は間延びした喋り方をしていないし、真崎は一人称が途中から俺になっている。これが素なのだろうか?
「そうして生まれたのが、俺たち、チーム、モンスター・キラーズ、なのさ」
「そう、そして地方都市奪還作戦なんて、まさに僕たちがやりたかったことそのものなんだ」
「魔物の手から地方を人間の手に取り返す。ね? さっきまーちゃんがいった俺らの誓いに許さないと誓ったものがまんまあるでしょ?」
「でもいくら吼えようが、私らじゃ実力が足りない。数も、実力も足りないんだ」
「でも、あたしたちがこの作戦に参加することでその誓いを果たせるんです!」
五人が息を合わせたかのように代わる代わる話すさまは、その誓いに偽りなしを思わせる。
秋彦は一つため息をつく。
「お前らさ、その目的が達成されるならこの命いらんとは思うなよ? お前らにだって帰る場所はあるんだろ?」
「わかってる、そこは話し合った時に散々思い知った。こんな俺らにも、心配してくれる人はまだいるんだって……知ってるから大丈夫だよ……」
真崎の言葉にうなずく残りのメンバー。まあ、これなら大丈夫か。
「おし、ならもう俺が言う事はねーよ。まあ、これだけさ。死ぬんじゃねーぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
「あー、ごめん、ちょっといい?」
さっきまでずっとおとなしく話を聞いていた桃子が唐突に話に割り込んできた。
「モモ?」
「いやー、いい話だった。本当にそう思う。で、そのうえでちょっと心苦しいんだけどさ、お願いがあるんだ~」
「え? 頼み……ですか?」
話を振られて困惑気味だったチームだったが、次の桃子の言葉にさらに困惑することになる。
「この話と、皆さんの事を、あたしがメインパーソナリティーしてる番組に取り上げさせてもらえないかな?」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
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