第百十五話 友人チームの実力
累計PV数173万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
友人チームの準備が整ったところで移動開始だ。
「じゃあさっそく探してみよっかな。『風よ、音を集めよ!』サウンドコレクター!」
奏が魔法を唱える。秋彦の知らない魔法だ。風魔法の様だがこれは何だろう?
そう思っていると石崎が解説してくる。
「あれねー、サウンドコレクターっていって、遠くの音を聞く魔法なんだけど、祭ちゃんはあれに感知スキルを合わせて使う事で、音を集めて魔物の居場所とかを探ってるんだって」
「ほー、ソナーみてーなもんだ。器用だなー」
「ふっふーん、うちのチームは結構魔法は鍛えてるんだよ。皆最低限レベル15はあるの。初心者じゃないよ? あ、前方500m先、曲がり角から一匹来るよ!」
奏も自慢気に口を出してきたが、敵を発見したようだ。素早く数と場所を言うその様子を見て、これはなかなか便利なテクニックだと、秋彦は感心した。
「いっしー、いつも通りね。お願い」
「はーい。じゃあ『水よ、わが意に従え!』コントロールウォーター!」
奏が手慣れた様子で石崎に忍刀と苦無を投げ渡す。石崎も慣れたものか余裕でキャッチする。そして懐から小瓶を取り出し、中身を忍刀と苦無にまとわせた。そして苦無だけを、ストレッチを行っている奏に投げ渡すと、忍刀を構える。だがこの構えは、投げる構えのようだが。
「じゃあ準備はいい?」
「オッケーよ!」
「オンユアマーク、ゲットセット……」
石崎は投げの体制のまま奏に声を掛けると、奏はクラウチングスタートの構えを取る。そして、言葉が右手を上げ、徒競走の合図をする。
そのままの状態で少し待っていると、一匹のオークが曲がり角から現れた。それを視認した言葉が右手を下げた!
「ゴー!」
その言葉を合図に石崎はオークに向かって忍刀を投げた!
そして奏も同じ合図でオークに向かって走り出す!
すごいスピードだ。レベルが28ある秋彦の目から見ても速い。スタートダッシュの速さを考えると動物のチーター並ではないのだろうかと思えるスピードだ。
石崎の投げた忍刀も決して遅くないのだが、奏はそれをあっさり抜き去っていく。
「いっくぞー! 『風よ、吹け!』ブロウ!」
そしてオークの近くに接近し、ブロウの魔法を唱えて、腹に思いきり飛び蹴りを食らわせる!
だがオークの耐久力では倒れはしない。鈍感も相まって何事もなかったの様だ。そしてオークは奏に対して棍棒をふるう!
「おっと『風よ、吹け!』ブロウ!」
オークの攻撃に対し、奏がブロウの魔法を唱え、そしてオークの攻撃を跳んで躱した。
そして一撃躱した後に懐から苦無を取り出し、蹴りと苦無によるコンビネーション攻撃を食らわせる!
更にそのタイミングで、石崎の投げた忍刀が戦場に到着した。
奏はそれを回転しながら楽々つかみ取り、投げられた威力と遠心力と上乗せした回転切りをお見舞いする!
オークはもう一度攻撃を行うべく再び棍棒を振りかぶった。
しかし、そこまでだった。突然オークが棍棒を取り落とした。そして動かなくなったのだ。それを確認した奏は一旦オークから距離を取る。
「ほい終了、役目完了だよ。やっぱり一匹だと楽ね。じゃあまーちゃん、後お願いね」
「ああ、せめて苦しませずに送ってやるさ」
そして今度は真崎が前に出る。動かなくなったオークを前に、刀を収めた状態で構える。
「俺たちの前に出た、自らの愚かさを、呪うんだな」
そういいながら真崎は魔法のオーラを強い勢いで発している。しかし真崎自体は微動だにしない。
違う、微動だにしないというのは語弊を生む。あれは力をためているのだ。日本の漫画にはよく出て来る、刀を使うキャラの中には結構な使い手がいるあの技を出そうとしているのだろう。
刀にも真崎の闇属性のオーラが纏われていることからスキルとして存在しているようだ。
アクティブタイプのスキルを使う時は、大抵使う人間の魔法オーラが武器に宿るので結構わかりやすいのだ。
そして、その一撃が放たれる時を、今か今かと見守っている秋彦。
動けないオークを前に張り詰めた空気が流れる。が、その刹那だった。真崎が剣を抜いた。信じられない速度での抜刀からの斬撃をオークの首に入れた。
……何という速度だ。瞬き一つしていたらその一瞬を見逃すところだった。
そしてオークに背を向けて剣を二回軽やかに振ると、緩やかに刀を鞘に納める。
「あばよオーク」
鞘に刀を収めきり、鍔鳴りがした瞬間、オークの首が宙を舞った。勝負ありだ。
………………………………
「やるねぇ。俺らの時はもっと時間かかったし、全員で攻撃したもんだけど」
「ふっふーん、あの程度なら私とまーちゃんだけで十分だって!」
「いや、実際すごかったと思うぜ、途中のブロウとか」
「へっへーん、ああやるとジャンプの飛距離とか稼げるんだよ」
「成程なぁ、よく考えるもんだぜ」
「でしょでしょー?」
「まっつん、調子に乗っちゃだめよ」
秋彦の称賛に鼻を高々にする奏。そしてそれを諌める言葉。
正直、奏に対する評価は秋彦の中で高くなっている。
ブロウとは風魔法の基本である強風を起こす魔法だ。通常戦闘では大して役に立たないはずの魔法なのだが、奏はブロウを自分の跳ぶ方向に使う事で跳躍の飛距離と速度を上げているらしい。ジャンプによる攻撃に使う事で、攻撃力の上昇にも役立つようだ。
そして調子に乗るなと言葉に言われても、実際ほとんど奏と真崎の二人だけでなんとかしたようなものだ。このチーム、ポテンシャルは高いようだ。
「そうはいっても、相手が一匹で、状態異常もそれなりに通るなら僕らならいけるでしょ」
「そうだねー、でも事前の情報収集と、僕のポーション効果も忘れないでねー」
落ち着き払った様子で真崎が淡々と告げると、石崎が自分の功績を主張してくる。
その中でちょっと気になったので、秋彦が石崎に聞く。
「そういえばあの小瓶の中身って何だったんだ?」
「あれ? あれは僕謹製の【スタン・ポーション】だよー」
「いっしーは【調合】の生産スキルを持っていて、いろいろなポーションづくりをしているんですよ」
「で、それを武器にまとわせて、攻撃するとそのうち状態異常になる武器にしてるんだー」
なるほど、そういうやり方もあるのか。状態異常の付与は闇属性の特権かと思っていたけど、そういう方法もあるらしい。
「とどめを誰がさしたかを忘れないでよね?」
「勿論だ。最後の居合切り、すごかったな。あんな簡単にいくはずないんだが」
「あれは【居合切り】刀習熟が高いと使えるアクティブスキルなんだ」
どうやらあれはアクティブスキルの一つであり、刀が持つ特性である、確率で攻撃力倍加の特性を確実に発動させられる技であり、さらに人型と動物型の魔物なら、首を狙う事で即死も狙える技らしい。
「そんなすごいスキルがあったのか……」
「まあ刀って本来扱いにくい武器なんだけど、スペシャルスキルの関係で僕にとっては扱いやすいものだからね」
「真崎、お前スペシャルスキル持ってたのか?」
「うん、【武士の誉】っていうんだけど、これがあるおかげで、刀が使いやすいんだ」
「成程なぁ。みんなよくやってるんだな」
どうやら友人チームは自分たち以上によく考えて、自分の強みを生かして戦っているようだ。魔法の訓練もしっかりやっているみたいだし、これならただレベルを上げただけでもそこからさらに自分たちの強さを伸ばしていけることだろう。
「よし、本当は集団戦もやってもらおうと思ったけど、いいや。こんだけの物を持ってるんだから、大丈夫だろ」
「あれ? 俺とことちゃんは見なくていいのん? 俺たちゃ集団戦でこそ輝くんですが」
「いいさ。みんなの研鑽っぷりが見たかっただけで戦わせることが目的じゃないからな。こんだけうまく持ち味生かして戦えるなら、今後もレベル上がっただけで満足はしないだろ。じゃあ今日一日、しっかりレベル上げていこうな」
それを聞いて歓声が沸く。
そしてタイミングの良い所で、桃子からメールの連絡が入った。今日一日は付き合う事にしよう。
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という訳で、今彼らはレベリングを開始している。今日の内にレベルを上げられるだけ上げて、明日一気に初級ダンジョンを突破するつもりの様だ。
今日は秋彦にとっても、まだ見ぬスキル、アイテムの使い方やスペシャルスキルの有効活用など得るものも多かった。なので今日は存分に付き合おうと思う。
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