第百十一話 石動優太の日常 夜と訪ねてきた友人チーム
累計PV数164万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
家に帰ってくると、もう夜の営業は始まっていました。相変わらずの盛況っぷりです。でもやっぱり昼よりは人も落ち着いていますね。夜はお酒を飲みに来る人がやはり多い時間帯です。まあ今は食事の方が利益出るんですが。
「ただいまー!」
『あ、おとーさん、おかえりなさいなのです!』
「おっと、息子君のお帰りだぜ大将!」
「あ、肉屋のおじさん。いらっしゃい」
帰ったらお父さんたちよりもお客さんに声を掛けられました。
商店街にある【蔵屋敷精肉店】の店長であるおじさんが、ビール片手におつまみチャーシューをつまんでいました。
またおばさんに閉店作業まかせて飲みに来てしまったんでしょうか。いつものことですが、後でカンカンのおばさんがうちに飛び込んでくる様子が目に見えます……
もうすぐ奪還作戦が開始され、流通の回復が見込まれるとはいえ、ちょっと緩みすぎな気がしますよ……
「帰ったか、優坊!」
「おかえり優ちゃん。早く厨房はいって!」
「はーい!」
とりあえずお母さんに促されるままに厨房に入ります。
改めてコックスーツに着替えて、靴も変えて、帽子もかぶって、手を洗って準備完了です。
厨房に入って注文を受け取って料理開始です。
「しかしあの優ちゃんがこんなに立派になるとはねぇ。おじさんびっくりだよ。灼熱王子なんて言われてカワイ子ちゃんたちにキャーキャー言われてんだろ?」
「やめてよおじさん……そういうのはないってば」
「ハハハ! 優ちゃんはもっと大人の余裕ってやつを覚えた方がいいかもね!」
「あっそ、サービスは要らないんだね?」
「すみませんでした優太様、この禿オヤジめにどうか一つお慈悲を……」
昼ほど忙しいわけではないので、この時間は厨房に声を掛けてくれるお客さんとのコミュニケーションも仕事の内です。お酒で酔いの回った人たちの相手は慣れたものです。
……少なくとも理不尽に痛めつけてくるいじめっ子たちよりかは数段ましですしね。今となっては複雑ではあってもこちらにも原因があったこともあって水に流すようにはしていますが。
この人は家の店の常連と言う事もあり、来たら大抵サービスで一品付けているんです。他にもこの商店街の人や、顔を覚えているほどの昔なじみの人たち相手には少し安くしたり、サービスを付けたりしているんですよ。勿論こっそりか、常連しか店にいないとき限定ですけどね、お父さんがよくやってるんです。
こういうことが出来るのもチェーン店ではなく、一国一城の主として店構えている地元の名店の特権ですね、チェーン店なんかでそんなことやったら怒られるどころではないでしょうから。
そうやってしばらくお客さんと談笑しつつも料理を作り続けます。元の探索者のレベルと相まって、料理を作り続けているので、料理スキルの向上が著しいです。Lv5は有名店並の腕らしいので、早くもその域にいるらしいのです。
……正直実感がわきません。
そうやって料理を作っていたら、気が付けば夜の七時五十分。そろそろラストオーダー、注文を締め切る時間が近づいてきました。
今日も忙しいながら充実した日々が終わりそうです。そう思いながら帰っていく人の背中を見送っていました。最後の一人、べろんべろんに酔っぱらった肉屋の親父さんが、案の定カンカンになっている奥さんに首根っこ掴まれ、引っ張られていく様子を見送って、店からはお客さんがいなくなりました。
これで今日も一日終了です。後はご飯を自分で作って食べた後、お風呂に入って寝るだけですね。そう思って、後片付けを始めようと中華鍋に火を入れました。
すると、店のドアが開いて人が入ってきました。お客さんですね。もう終わるっていう時間なのに。この時間になってくる人は正直珍しいです。でも、ラストオーダーの時間すれすれであっても過ぎているわけではないので声を掛けます。
「おう! いらっしゃい! ……んあ?」
「いらっしゃいませ! ……って、エミー、それに皆、どうしたの?」
「や、やっほ」
入ってきたのはエミー達、僕の高校に入って初めての友達と言えるチームの面々でした。
いつもと違って、神妙な面持ちです。何かあったのでしょうか?
「おう、優坊のお友達じゃねーか! どうしたそんな時化た面して?」
「あ、あのさ優? ……ちょっと相談があるんだけど……」
「……何か作るけど、何にする? お父さん、いいよね?」
「おう! お代はいいから、なんか作ってやんな!」
「もう、閉めちゃおうかしらね……」
………………………………
「で? 相談ってどうしたの?」
「い、いやさ、ちょっと教えてもらいたいことがあるんだけど……」
とりあえず中華定食を五人分に出してから、本題開始です。
エミーがだいぶ話しにくそうにしているように見えます。何を知りたいんでしょうか?
「あのさ、優ってさ。普段どこでレベリングしてるの?」
「……え?」
「ほ、ほら、優もアッキーもさ、レベル上がるのだいぶ早かったじゃない? どうしてかなって思って……」
「僕たちもさ、もっとレベル上げたいなって思ったんだ。君たちレインボーウィザーズは、普段どこでレベル上げしているの?」
エミーと真崎君が本題を切り出してきました。
「私たちも結構頑張って探索しているんだけどさ、レベル上げってなかなか大変じゃない? でもさ、そんな中でレインボーウィザーズはあっさりレベル25とか飛び越えていったじゃない?」
「何か早くレベルを上げる秘訣があると思ったんです」
奏ちゃんと言葉ちゃんが続けてきます。
確かに昨今レベルを上げることは悪い事ではありません。探索者として上を目指すならいやでもぶつかることです。でもそれだけでこんな切羽詰まったような表情するでしょうか?
慎重に声を掛けます。
「えっとね、まずレベルを上げるのはいいんだけど……皆どうしてそんな思いつめたような顔してるの?」
「え? そんなことないよ?」
「あるよ、どうしちゃったんだい顔色悪いよ?」
「それに、レベル上げるなら、自分に合ったところで、自分のペースでレベル上げた方がいいと思うよ? そんなに焦ることもないじゃない?」
やっぱりレベル上げは自分がやれる範囲でやるのが一番いいに決まっています。
どんなに取り繕っても、今自分たちがやっているのは確実に魔物との殺し合いな訳なのですから、死なない様に確実に勝ってレベルを上げていくのが一番なはずです。
そもそもそういった自分の実力と相手の実力を測って倒せなさそうだったら撤退する必要だってある訳で、やみくもに先に進めばいいっていう訳ではないはずです。
お金が欲しくても命あっての物種なんですから。
「……と、僕は思うんだけど……」
「いや、だってもう時間ないし……」
「時間?」
真崎君がぽつりと言った一言を僕は聞き逃しませんでした。
真崎君、明らかにしまったという感じの顔をしています。
「そうそう、時間ないんだ」
「エミー!?」
「はぁ、もう取り繕ったってダメでしょ、目的とかもスパッと言おうよ。そのうえで協力してもらおうよ」
エミーは何か諦めたかのように行儀の悪い座り方をしています。開き直ったようにも見えます。
「あ、あのさ……どのみち秋彦がいないと話にならないしさ、僕だけで決められることじゃないんだ。まず秋彦に話をしないと……」
「なんだ親友、俺がどうかしたか?」
「「「「「「「「?!」」」」」」」」
どのみち自分たちのレベリングは、秋彦のコンフューズがない事には話にならないので、秋彦に話を通す必要があることを説明しようとしたら、僕の親友である秋彦が、閉店中の札がしてあるはずの店の扉から、ひょっこり顔を出していました。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は11月27日午前0時予定です。
よろしくお願いします!