第百七話 研究成果と試作品
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
リビングに並べられた紅茶カップ。紅茶の入ったそれにジュディは優雅に口をつけ、御茶菓子を一口。
「……ふう、お茶が美味しいわね」
「ああ……そうだな……」
「さて、そろそろ落ち着いた?」
「ああ、手間かけさせてすまねぇ」
あの後、あまりにも混乱していた秋彦をいったん落ち着かせるために秋彦の家にあった紅茶を入れたのだ。茶菓子も秋彦の家にあったものを貰った。
しばらくティータイムをしていたら、秋彦もようやく落ち着いたのだ。
「いいえ、あんなの見たら気が動転するわよ。私だってそうだったもの。あなたの慌てよう見て冷静になれていただけで」
「……そっか。なら、そろそろ現実見るか……俺の衣装がなんかとんでもない物になったんだが」
「ええ、あれは驚くわよね……」
改めて自分の衣装、元衣装というべきか、鎧と化したそれを見る。
元のデザインはゲームで見たことのあるデザインであることもあり、もはやそれが金属製になったことで、ゲームに出てた鎧が現実に飛び出たような気さえする。
しかしそれより驚くべきはこの驚異的なスペックだ。上がり幅が尋常ではない。
「正直何かの間違いだろって思ったくらいだからな」
「もう秋彦は鎧買う必要なくなったわよね。そろそろ衣装の上から着ることが出来る鎧を探すべきかと思ったんだけど、逆に鎧の下に着る服を探さなければならなくなったわね」
「そうなのか? 今までの衣装でも十分だと思ってたけど」
秋彦がそう言うと、ジュディは困ったように、あるいは呆れたかの様にため息をついた。
秋彦が、何か変なことを言ったのかと思い声をかけようとしたら、ジュディがスマホを取り出し、しばらくいじった後で秋彦に見せてきた。
どうやら日本の経済を中心に紹介しているニュースサイトらしい。見せられたページに書かれていたニュースを見てみる。
≪日本の伝統鍛冶、肉体力3000付与の刀を生み出す。刀匠、天城和良、渾身の一振り≫
ニュースの内容は日本の刀匠である、天城 和良氏と弟子達が作った打刀【黄桜満開】が、アナライズカメラの判定にて装備することにより、肉体力を3000プラスされることが判明したというものだ。これはミスリルやオリハルコンでの製造ではないものの【白鋼】というダンジョンのゴーレムタイプの敵の一部から採取できる魔法の鉱物から作り上げられたものらしく、恐ろしいほどの切れ味を有している。
現代人が作った代物としては現在最高であり、今後も更なる強さを持った武器防具などの登場が期待されているらしい。
「……あー、言われてみればこんなニュースあった気がするな……」
「結構騒がれた上につい二週間前じゃない」
「て、テスト勉強してたんで……」
「嘘つき、どうせ槍じゃないから興味ないって忘れちゃったんでしょ?」
「ぐぬぬ……」
「まあいいけどね。他にも今は防具なんかにも結構いいのがあったりするわ。正直そのあたりを考えると、もう私たちの持つ武器や防具っていうのは変え時っていう気もしていたのよ」
そういうとジュディは自分のマジックバッグから剣と盾を取り出した。
「これ、最近訪問した【藤袴工業】さんっていう会社から頂いたものなの。量産品の試作品なんだけど……これの肉体力の上昇幅どれくらいだと思う?」
突然の問いかけに首をひねる。だが、今の会話からして秋彦の想像の上を行くであろうことは容易に想像がつく。一見何の変哲もない鉄のショートソードと鉄のバックラーなのだが。
だが、量産品と言う事も考慮しなければいけない。高いのか低いのか……
自分の今の武器であるマジカルランスが肉体力120プラスだ。ならばそれと同じくらいだろうか?
「150ってところか?」
「……いいえ。これは量産品だけど、500よ。しかも剣と盾、それぞれでね。単体で500上がるんだから」
「はぁ?!」
……予想のはるか上に突っ込んできた。マジカルランスの軽く4倍以上上をいかれた。
うろたえる秋彦に、ジュディは続ける。
「白鋼は質のいい鉄と同じように加工できるうえに魔力が宿っているから、加工難度が低い割に魔力の宿る強い武器が作りやすいらしいの。既存の工法を使って強力な武器が出来るという意味ではミスリルとかよりも優れているかも知れないわ」
「そうだな……しかもこれ、量産品なんだろ? 製造に機械でも使っているのか?」
「そう。そもそも剣って刀と違って、剣の型に溶かした鉄を流し込んで、型ごと中の鉄を冷やして固めて、固まった剣の形をした鉄を研いで終わりだから、今の機械工学による技術なら研ぐところを含めてすべて機械化出来てしまうの」
それでも人が鉄を流し込み、人が冷やし、人が研いだ剣では装備したときの肉体力の上昇幅が全然違うらしい。例えば今の工程を、鍛冶スキルLv2を持っている人がやると、肉体力2000を付与できるようだ。やはり機械で製造すると、素材の魔力が逃げていってしまうようだ。
どこまでを機械が行い、どこまでを人の手で行うのが肉体力の上昇幅と人件費の効率がいいかなどは今後研究していく予定らしい。
「ともかく、そういう訳で私たちの持つ武器や防具はもう時代の波に取り残されていると思っていたの。新しい武器や防具の新調も考えていたんだけど、とりあえず秋彦の鎧については問題なさそうね」
「俺の成長に合わせて素材取り込んで強くなるってあったしな。もうこれとは探索者やるうえで一生の付き合いになりそうだな。鎧の下に着る服を何とかしなきゃいけなくなったけど」
改めて鎧を見てみる。
魔力感知的にもかなりすごい魔力がこもった鎧で、もはや威圧感を感じるまである。
にしても気になるのが、説明文にもあったのだが……幼龍の素材と、魔法鉱物を取り込むことにより、更なる力を得ることに成功した。この部分だ。
秋彦は無言で地下室へ行き、改めて漁られていた素材で、何が無くなっていたかを見てみることにした。
主に鉱物素材でなくなっていたのはミスリルだった。オリハルコンも少しなくなっていた。ヒヒイロノカネとアダマンタイトは無くなっておらず、そのままあった。
そして、幼龍の素材。これはもう言うまでもなく龍之介から得られた素材だろう。何が無くなっているのかを慎重に調べてみる。
……最終的に、龍之介の爪が8つ。牙が16本に鱗が20枚。そして角が2本無くなっていた。
はっきり言って生え変わりが多くある時期からか、ここら辺は風呂でよく落ちる。ぶっちゃけまだまだたくさんある。
だが、何の気構えもなく突然これらが無くなるというのは地味にショックだった。戦って倒した魔物の素材ならこんなに落胆することもなかったのだろうが、自分の子供、あるいは弟の様に可愛がっている従魔の物というのがかなりショックだった。
「うわ……結構減ってる……」
「なぁに? 減ってるって何が?」
「龍ちゃんから出た素材」
「ああ、なるほどね。というかあの鎧、今後も漁るのかしら?」
ジュディの素朴な疑問を聞いて、秋彦は立ち上がる。言われてみればあれは自分の意思で動いているようにも見えた。今後も宝箱漁られたらかなわない。とりあえず鎧の所まで戻り、話しかけてみる。
「おい、お前何勝手に宝箱漁ってんだよ。お前俺の防具っていうのを差し引いても勝手に素材漁るのはだめだろ。おいこら何とか言ってみろおい」
「や、やめなさいよ……鎧相手に話しかけるって正直かなり絵面がよくないわ」
「でもこいつさっきまで自分で動いてたし……」
「それにほら、さっきは服だったから腕も足もあったけど今はないんだから、その辺にしときなさい。次はないでしょ。たぶん」
確かに、さっきまでは鎧の様に見える衣装と言う事で、腕も足もあったが、本物の鎧となった今では腕も足もない。自力で動く事は出来ないだろう。
「はぁ、そうだな。言われてみりゃ。それに龍ちゃんの素材はこれから使ってみるつもりだしな……よし、じゃあ改めて、龍ちゃんの素材使って、いろいろ装飾品作ってみるか」
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