第百三話 従魔の進化
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「ふー、走って帰ってくるのもたまには悪くないな」
『お、おじさま……さすがです……』
いい汗をかいた秋彦とは対照的にエリザベスはかなりへとへとになっている。
どうやらエリザベスは肉体力的には200程度差があるとはいえ、人間相手にいい勝負するとは思っていなかったらしく、ペース配分を間違えたようだ。
「うし、じゃあ家へ……」
「あ、待って秋彦。その前にやっておきたいことがあるの」
「え? 何を……ってあれか。進化」
「ええ。せっかくだし、今やっておいた方がいいでしょう」
「成程な。とりあえず入りなよ。庭でやろうぜ」
『わかりました。おじゃまします』
秋彦は改めて、家にジュディとエリザベスを招く。
家に帰ると龍之介が出迎えてきてくれた。龍之介は朝食事をとって早々二度寝してたので家に置いてきたのだ。
『パパおかえりー! あー、ジュディさんと、エリちゃんだー! いらっしゃーい!』
『おじゃましまーす!』
「はい、お邪魔します」
「おう、いらっしゃい」
さっそく、秋彦達は荷物を地下室に置き、エリザベスを庭へ誘導する。流石にすぐに庭に出るのに、部屋を通る為だけに体長調整で小さくするわけにもいかない。
全員庭に出ると改めて進化に必要な素材を慎重に庭に並べる。エントは初級ダンジョンに出て来る魔物だけあって、その戦利品たるエントの枝や実は決して安いものではない。それを金で買うには相応の金額を要求されただろう。ひとえに、それに答えられたのは愛以外に他ならないだろう。
一つ一つ慎重にエリザベスの前に置いていく。
枝を1……2……3……4……5……6……7……8……9……10。
そして実を一つ。
全て置き終わり、ジュディが一歩下がったのを見て、エリザベスが並べられた素材に一歩近づいた。
『ああ、すごい……ちからが、わいてきます……ちからが……力が……!』
そういいながら、エリザベスが光に包まれていく。その光に共鳴するように素材も光を放ちだした。
そしてエリザベスも、素材も光の玉になり、空中へ飛び、ぶつかって、一つの大きな光の玉になった。
やがて大きな光の玉がゆっくり降りてきて、角の生えた白馬、エリザベスの形になっていく。
形が整い、光が消えようとした瞬間に、突如ピシィ! という聞き慣れない音が響いた。まるで何かが割れたような音だ。
どこから聞こえたのか? それはエリザベスの背中から響いたものだった。何とエリザベスの背中に亀裂が入っていたのだ!
そしてその亀裂から光が漏れ出し、漏れ出した光が束ねられるように一つの光の塊になる。そしてその塊が、再び一角の白馬の姿となった。
だが、その姿はエリザベスに似ているようで違う。
今までエリザベスのたてがみはあまり目立たなかったが、今は白い馬体に白銀のたてがみが眩しい。また、馬体自体も今までの体と比べて大きくなっている。これなら二人乗せても問題ないくらいの大きさだ。
そして最大の特徴である細くて鋭い一角の角だが、白から、緑へと色が変わっている。
太さや長さもかなり変わっており、角がドリルの様に螺旋状になっている上に、しかもランスの様に根元が太くなっていることに加え、長さ自体も少し伸びたようだ。
エリザベスは軽く身震いすると、大きくいなないた。
『は! す、すみません。気分が高揚してしまって、つい』
「……美しくなったわね……素敵よ。私のエリー」
「いやー、これはお見事だわ。凄いね」
『わー! すっごーい! いいないいなー、りゅうちゃんもはやくしんかしたいなー!』
『……皆様、ありがとうございます。本当に生まれ変わったのですね。体が軽く、気分も軽い……こんな気持ち、初めてです。これが進化……!』
「とりあえず……ステータスを確認しましょう。どうなっているのか見てみないと」
うっとりとエリザベスを見つめていたジュディだったが、そのジュディの提案でエリザベスのステータスをチェックしてみることになった。
名前:エリザベス=マクベス
種族名;ランサーホース→ホーリーランサーホース
レベル10→10(上限解放Lv20)
肉体力:400→800
魔法力:300→600
戦闘力:900→1800
有利属性:闇
不利属性:光
使用魔法:光Lv2
スキル
体長調整:(【従魔スキル】【アクティブ】自身の大きさを自在に変える。最大で元の大きさ程度。最小で蝿1匹程度)
騎乗:(【アクティブ】自らの主に騎乗されることで、真の力を発揮する。また、主が騎乗している場合のみ、主以外の人物を一人背に乗せることが出来る)
騎馬の献身:(【アクティブ】自らに騎乗する主を全力で守る。騎乗している者の守備を向上させる)
聖角突き:(【モンスタースキル】【アクティブ】額に生えた聖なる角で突く。不利属性に光がある魔物の場合、威力が上昇する)
蹴とばす:(【モンスタースキル】【アクティブ】後ろ足で相手を蹴とばす)
聖角突撃:(【モンスタースキル】【アクティブ】背に自らの主が乗っている時に使用可能。主を乗せ突進することで聖角の攻撃の威力を上げ、主が追撃をすることで隙のない波状攻撃を仕掛けることが出来る)
ランサーホースが進化した姿。
額に生えている角が聖なる力を帯びるようになった。走る速度も攻撃力も、進化する前とでは比べ物にならないほどに高まった。
気高さと忠誠心はそのままに、主人と仲間、そして自らに仇なす敵への苛烈さはさらに強く。そして新たに傷ついた仲間に対する慈愛の心を得た、博愛の騎馬と言えるだろう。
進化ロードマップ
ランサーホース→ホーリーランサーホース→???(ドクバリセンボンの毒袋、御薬サソリの尻尾)→???(聖なる果実、光の宝玉)→???
「あんじゃこりゃー! すっげー強くなってんじゃねーか!」
『わー! わー! すっごーいかっこいー!』
思わず騒ぐ秋彦と龍之介。実際たった一度の進化が劇的な変化をもたらしたと言ってもいいだろう。この変化はまさしく進化と呼ぶにふさわしいほどの変わりようと言えるだろう。
「……エリー、貴女は、私の誇りよ」
『お母様……』
ジュディとエリザベスは優しく抱き合っていた。感極まっているらしく、両方とも目じりに涙が光っていた。
………………………………
「祝! エリーちゃんの進化! おめでとう! エリーちゃん、一番乗りだぜ!」
庭に広がる拍手の音。この場の全員が進化を祝福していた。
「でもまあ、これあれだな。やれるんならさっさと進化させた方がいいってのは、とりあえずよく分かったな」
ジュディもこれには頷く。
肉体力も、魔法力も、戦闘力も、たった一度の進化で二倍になった。しかも新しくスキルも覚え、魔法まで使えるようになった。
勿論全部が全部このような進化をするわけではないだろう。だが、この強くなり方は正直度肝を抜かれた。これを見たというだけで、秋彦は龍之介の進化が楽しみになっているし、ジュディは、さらに次の進化を夢想し始めている。
「で、だ。最後に一つなんだが……あれ、どうしたらいいんだ?」
そういって秋彦は指をさした。その先にあるのはエリザベス、と言っていい物か。ランサーホースの抜け殻と言えるものだった。
不思議なことにエリザベス本人は進化を果たし、ここにいるのに、ランサーホースの体がそのまま残っているのだ。
少し調べてみたが、骨もある、皮もある。角も蹄もみんなある。なのに死んでいるのだ。完全に心臓が止まっている。
よくわからないし、どうしたものかと思っていたら、エリザベスが念話をしてきた。
『進化した今ならわかりますわ秋彦小父様。あれは私が進化の際に捨て去った私の殻と呼べるものです。お母様、どうぞわたくしの残骸として、素材としてご自由にお使いくださいませ。何でしたら売却してくださっても構いませんわ』
「え、ちょ、エリーちゃん?! いいのかよ!? あれ一応君だろ!?」
あまりのドライな言い分に逆に秋彦とジュディがうろたえる。
だが、肝心のエリザベスは事も無げだ。無理をしているどころか、気にした様子すらない。
『構いません。あれはすでに私が捨て去ったものです。未練も愛着もありませんわ』
「……と、とりあえずこれは母様が預かっておきます。どうするかはまた後で考えます……」
あまりのドライさにジュディはそう答えるのが精いっぱいだった。
「え、えーっと……よ、よし! これでエリーちゃんの進化終わったし、骨加工スキルの訓練行ってみっか!」
「そ、そうね! 楽しみだわ! どんなふうになるのかしらね!」
大きな声を出して家に入る。空気を換えるのに必死になっているのがまるわかりである。
『パパもジュディさんもへんなのー』
『龍ちゃんも進化すればわかるわ。なんとも思っていないのだけれど、気を使われてしまったのよ私は』
『ふーん?』
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