第百二話 骨素材と従魔の進化素材
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小鳥遊 翼様よりレビューを頂きました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「おー、ここが素材売り場か……」
探索手芸店一階は素材の買取カウンターとレシピ本が置いてあったが、二階には様々な魔物素材が並べてあった。自分にもなじみ深い魔物から自分の知らない魔物まで様々だ。
例えば、オークの骨なんてなじみ深い魔物の筆頭だ。
優太の父親はこれでだしを取っていたが、さすがというべきかこの骨は鈍器としてもなかなか優秀で、探索者が乱暴に扱ってもなかなか壊れないような打撃武器【オークの骨槌】は、見た目がいいものではないが、手頃な値段で買える武器の中では肉体力向上に伴う戦闘力の上昇の幅がかなり高く、ここ一か月の間で新たに入門ダンジョンに挑戦する新規の探索者の中では大活躍の代物となっている。
反対になじみのない代物としては虫の魔物だろう。
入門ダンジョンでは何度か戦ったことがあるが、初級ダンジョンにいる虫の魔物というのは秋彦達にはあまりなじみがない。【キラーホーネットの毒針】や【魂カマキリの鎌】といった物を筆頭に、ちょっと加工するだけで武器や防具になる物や【アカオオニヤンマの目】や【ジャイアントセントピートの甲殻】等、どう加工して何になる素材なのか、なかなか想像しづらい物まで様々だ。
それと【エント】や【マンドラゴラ】といった植物系の魔物を加工して手に入る木材もここにある。まだまだ秋彦達が遭遇したことのない魔物は数多くあるのだ。
それ以外にも、いろいろな魔物革素材、魔物毛素材等、様々な物が置いてある。
ちなみにダンジョン内で手に入るオリハルコンなどの鉱物素材もごくたまに入荷していたりもする。勿論わずかな間で即売り切れるようだが。
「よしよし……えっと、じゃあ何作ろうかな。練習になるくらいには難易度が高いといいんだけど……」
秋彦はスマホを取り出して、初心者が加工スキルの向上のために作るのにうってつけの物を検索してみる。
取り合えず骨加工Lv1でも、レシピ本が無くてもネットで作り方を見れば作成できるアイテムを見ていく。
一番簡単なのは貝殻を使った指輪や髪飾りやイヤリングといったところか。
他に魔物の素材を使ったそれっぽい骨の装飾品も、レシピ本を買えばLv1でも作れそうだ。
闇の呪いがかかった骨素材である【呪骨】はまだ早いか? でもビビっていても訓練にはならないだろうし……
そう思い悩んでいると、突然後ろから声を掛けられる。
「あら? 秋彦じゃない。こんなところでどうしたのよ?」
「ん? あれ、ジュディじゃねーか」
何とそこにいたのは買い物カートを押しているジュディだった。
そういえば今日と明日は桃子と茜の二人が、それぞれ用事があった日だったが、ジュディはオフの日だったはずだ。にしてもまさかここにいるとは思わなかったが。
「俺はほら、龍ちゃんの素材を有効活用できないかなって……あれ、まさかそっちも?」
「私は、今日ここにエントの枝と実が入荷されるって聞いて買いに来たの。エリーの為にね」
エリーというのはジュディの従魔の愛称だ。ジュディの従魔は細くて鋭い一角が特徴の白馬で、正しくはエリザベスという。その従魔の進化に使う素材が今日ここに入荷したと聞いてやってきたらしい。
「てことはエリザベスちゃんレベル上がったん?」
「ええ、もう限界レベルまで来ているわ。ほら、これ見て」
ジュディがそういうとジュディはエリザベスのステータスを見せてきた。
名前:エリザベス=マクベス
種族名;ランサーホース
レベル1→10(MAX)
肉体力:10→400
魔法力:10→300
戦闘力:10→900
有利属性:光
不利属性:闇
スキル
体長調整:(【従魔スキル】【アクティブ】自身の大きさを自在に変える。最大で元の大きさ程度。最小で蝿1匹程度)
騎乗:(【アクティブ】自らの主に騎乗されることで、真の力を発揮する。)
角突き:(【モンスタースキル】【アクティブ】額に生えた角で突く)
蹴とばす:(【モンスタースキル】【アクティブ】後ろ足で相手を蹴とばす)
角突撃:(【モンスタースキル】【アクティブ】背に自らの主が乗っている時に使用可能。主のを乗せ突進することで角の攻撃の威力を上げ、主が追撃をすることで隙のない波状攻撃を仕掛けることが出来る)
「おー、育ったねー」
「でしょ? 後は素材を手に入れればという所で、ここに入荷の情報が入ったの。そりゃ来るでしょ? ほらこれ」
「だなぁ。おお、これか」
そういって自慢げにカートに乗った戦利品を見せて来る。
中に入っていたのは魔法力を帯びたエメラルド色の枝と赤銅色のリンゴの様な木の実だ。これがエントの素材か。
ジュディは目を輝かせながら嬉しそうに見ている。
「楽しみよ。すぐに進化させたいくらいなんだけど……貴方は今何してるの?」
「え? さっきも言ったけど、龍ちゃんの素材を有効活用するために、俺、骨加工スキルゲットしたんだけど、スキルレベルを上げようと思ってさ。なんか手ごろな骨加工スキル鍛える道具の素材とレシピ本ないかなーって」
「あ、へぇー、そうなんだ! だからここにいたのね!」
ジュディの目の輝きがさらに強まった。どうやら興味を惹いたらしい。
「そうそう、だからちょっとレシピ本と素材買っていこうと思ってさ。で、レシピ本は目星つけたんだけど、盗難防止対策の一環で、他に買うもの全部取ってきてからにしろって」
「そうなんだ……」
ジュディは少し考えた後、秋彦に提案してきた。
「ねぇ、それ私も見せてもらっていい?」
「え、それって?」
「骨加工スキルの訓練よ。正直とても興味があるわ」
「おお、そうだな。この後家に帰ってちょっとやってみようと思ってるんだが、どうせだし、加工セット二人分買ってやってみるか?」
「本当に!? ありがとう!」
と、話がまとまったところで、二人は骨細工に使う骨加工セットを二人分買い、さらに加工に使う骨や貝、迷ったけど呪骨も少量買うことにした。
そして最後に、最初に目を付けたレシピ本を持ってこさせ、晴れて買い物終了となった。
………………………………
買い物を済ませて店を出ると、一角を生やした白馬であるエリザベスが周りの視線を独り占めにして、堂々と待っていた。
エリザベスは二人を確認するとすぐに声をかけてきた。
『おかあさま、おかえりなさい。あら? あきひこおじさま、おひさしぶりです』
「おお、エリちゃん。お久しぶり」
エリザベスはずいぶんと礼儀正しいが、声がやはり幼く、そこは龍之介と同年代であることを思わせる。
お澄まし顔で、特に態度には出さないが、ちらちらとジュディの買い物袋を見ている。
きっとジュディがここに買い物に来た目的を知っているからか気になっているのだろう。
「エリー、これから秋彦の家に向かうわ」
『わかりました。でもおじさまだいじょうぶですの?』
了解しつつも怪訝そうだ。
今のエリザベスの大きさでは二人乗りは少し厳しいものがありそうだからだろう。
そうなったらどちらかは歩くことになるだろう。エリザベスはともかくとして人間である秋彦の体力を心配したようだ。
だが、そんな心配秋彦には無用である。
「お? なんだったら走っちゃうぜ? これでも素の肉体力600あるからな。簡単に置き去りに出来ると思うなよ?」
『ろ、ろっぴゃく……おてやわらかにおねがいいたします……』
秋彦が不敵で凶悪な笑みを見せると、エリザベスは少し怯んでしまった。秋彦本人にはそんなつもりはなかったのだが。
そしてジュディが咎めるように口出しする。
「秋彦、あんまり私のエリーを脅かさないで」
「お、脅かすってそんな……いやいいや。エリー、ごめんなさい」
『い、いえ、だいじょうぶですわ』
「何、いざとなったらテレポテーション使うって」
こうして、買い物を終えた一行は秋彦の実家へ行くことになった。
ちなみにその後、秋彦は本当にエリザベスと並走し、東京新宿から埼玉までの道のりを高速道路を使ったわけでもないのに、わずか三十分ちょっとで走り抜け、違う意味で話題になったのだが、それはまた別の話である。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
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次の投稿は10月31日午前0時予定です。
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