第百一話 探索手芸屋とレシピ本
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桜餅爆ぜる様よりレビューを頂きました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
ドラゴンズライフを買った次の日。到着が二日後になるので、すぐに秋彦は準備を始めた。
掲載されていたサンプルにもあったが、どうも鱗や角、そして牙や爪といった部位の加工に必要な加工スキルは【骨加工】に相当するらしいので、秋彦は早速一万DPを使い、【骨加工Lv1】を習得した。そしてその試しとして、骨加工を使えるようなレシピ本と材料を求め、東京の新宿へ来たのだ。
現在、新宿は東京の中でも特に栄えている場所と言ってもいいだろう。特に新宿駅から探索者ギルドがあるまでの道行きは、通称【探索者街道】と呼ばれ、多くの探索者御用達の施設が並ぶ、探索者にとっての一大拠点と言っても差し支えない。
例えばかつてのスポーツ用品店は、今は探索者向けにギルド公認の武器や防具の販売が行われていたりするし、かつてのブティックでは、探索者向けの防具や特殊な効果のある装飾品等を販売したりしている。
これらの店というのは魔物が大々的に世に現れた氾濫事件で破壊され、その影響で撤退に追い込まれた店を、ギルドが一部を買い取り有効活用していたのだが、上のランクの探索者が羽振り良く金を使うさまを見てからなのか、だんだんと客層を探索者に絞った店が増え始め、とうとう新宿駅から探索者ギルドのあるビルまでの一区間は、探索者のための区間の様になってしまったのだ。
そして、秋彦が現在いる店もその中の一つ。魔物素材の買取、販売を行う店、生産スキルが解放されたことで生まれた東京の中でも特に新しい店【探索手芸店 虹の架け橋】である。
ここは探索者にとっては研究機関などに売るしかなかった魔物を解体した際に出る、肉以外の部分を売り買いすることのできる店だ。
約一か月前、秋彦達が初級ダンジョンをクリアしたことで新たに解放された生産スキル。それによって肉以外の部分にも魔物は利用価値が生まれた。
利用価値が生まれたと言う事は当然金になると言う事にもなる。
そもそも手芸に使うようなものは数が多くいるのだから、素材が必要だからと言って自分の手で狩っていてはあまりにも時間がかかりすぎる。
なので、こういう所も必然的に生まれるのだ。
ただ売るだけならここでなくても研究機関でもどこでもいいが、ここの重要なところはズバリ買うことが出来るという点だ。
そして、ここで魔物の素材を売ることによって、素材を買う時に割引をしてもらえたり、ポイントが付いたりもすると言う事で、解体を自分の手で行える探索者達で生産スキルを持っている人はこっちで魔物素材を売ることが多いらしい。
また、ここでの売買はギルドも一枚噛んでおり、探索者の免許証が必須である。
それ故にここでの売買はギルドにデータが送られるので、面倒な税関連についてはギルドの方で処理してもらえるのだ。今後もこういう連携を行っていく予定なのだとか。
ともあれ、こういう便利な店がここ一か月で生まれていたので、秋彦は骨加工を鍛える意味も込めて、何かしら骨加工スキルを使う適当なレシピ本と骨素材を買って帰るつもりだ。
ちなみに、レシピ本にもやはり何らかのレアリティがあるらしく、入門ダンジョンで落ちるような物は昨今それなりに数があり、こういう店でも見かけるようになった。
また、妖精商店でも、初級ダンジョン突破の際に商品のアップデートがなされたらしく、【妖精の○○】と、名の付く素材アイテムやレシピ本なども商品として並ぶようになったようだ。ついでに言うと、アップデートに従って、ついに武器や防具も売るようになったらしく、カタログスペック的には戦闘力が五千以上跳ね上がる装備ばかりなのだとか。ただしその分要求されるカネーの量も桁違いらしく、金策に奔走している人が多いのだとか。
レシピ本が置いてある本棚を探して見てみると、本棚ではなくがっちりガラスの棚に厳重にしまわれていた。まあ一つ一つが最低でも十万する代物なのだから当然と言えば当然なのだが。
その厳重っぷりに気おされながらも見てみると、カテゴリーごとに分けられているのが分かる。本と本の間に【裁縫】とか、【鍛冶】といった感じで使うスキルごとに分けられているらしい。とりあえず【骨加工】の項目を探してみる。
……見つけた。
数は少ないがいくつかある。【基礎骨細工師】【ボーンチャームのある生活】【入門 呪骨の正しい使い方】等、パッと見ただけでも黒魔術的なおどろおどろしい見た目の表紙の本ばかりだ。
とりあえずこの三つを買う事にしよう。最初から高いレベルの物を買うものじゃない。
「すみません。店員さんちょっといいですか?」
「はい、何でしょう?」
「この棚にある【基礎骨細工師】【ボーンチャームのある生活】【入門 呪骨の正しい使い方】の三つを買いたいんですが、出してもらってもいいですか?」
「わかりました。お客様、他に買う予定の物はございますか?」
「え? ありますけど……」
「それでしたら、お会計の際にお声がけください。防犯のためでもありますので……」
「……あ、ああ、そうかそれもそうですね」
考えてみれば当たり前だ。一つ一つが最低でも十万する代物を手で持たせたままうろうろされて、万引きでもされたらたまったものではないだろう。
しかし、それだと疑問が一つ。
「あの、じゃあ何を作るために何を買えばいいとかわからなくなってしまうのでは?」
「その際は売り場の店員にご相談ください。売り場の店員はサンプルを所持しておりますので、どういうものを作りたいかや、このスキルを鍛えたいという所から相談を承っております」
「成程、そうやってレシピ本を極力出さないように、万引きなどに合いにくいように努力をしているんですね……」
「それにレシピ自体はネットにあったりしますから。そこから調べて来る方も多いですよ」
「……いわれてみればネットで見ればいいのか」
「はい。今の皆さんのレベルですと、レシピだけあっても道具を作るのはやはり難しいようですので」
今のご時世、レシピや作り方などはインターネットで検索すればすぐ出て来る。当然検索すればレシピ本の種類も、現在判明している作成できるものもすぐわかる。
だが、生産スキルで道具を作るときはレシピ本が手元にないと難しいのだ。
どういう事かというと、どうもレシピ本には本に書かれている道具を作る補助の魔法がかかっているらしく、レシピ本なしで道具を作ろうとすると、対応する加工スキルがそれなりに高くないと、作成に失敗するらしい。
逆にレシピ本があれば、簡単な物ならばスキルが無くても不格好ながら一応目当ての効果を持つ道具が作れる上に、何度も繰り返して上手に作れるようになれば加工スキルを習得も出来るのだ。
これは、どのレシピ本にも最初に書いてあることだそうだ。
「そうだったんですね……」
「はい、ですのでレシピをネットでお調べいただき、改めて必要な素材をまとめ、最後にレシピ本を出してから会計に向かう事をお勧めします。そうすればスムーズに買い物を終わらせられるかと」
「成程……わかりました。じゃあちょっと先に素材を見てきますね」
「はい、お待ちしております」
と、話を切り、秋彦は素材売り場へ向かった。
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次の投稿は10月28日午前0時予定です。
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