第百話 ドラゴンの素材と使い道
累計PV数137万突破しました!
そしてとうとうりあダンが掲載話数100話を突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
結局あの後は食事会をしてお開きになってしまった。思いがけずに暇になったので、食事も済ませてきたし、テレビをしばらくぼーっと見ている。
今日もニュース番組は探索者周りの話題で大盛り上がりだ。
魔物の掃討作戦が現実味を帯び、実行まであと一か月に迫った今となっては、早くも流通の確保ののちのセールの企画や大量入荷の予定による在庫処分セールの開催等、あちこちで大きな盛り上がりを見せている。
その様子がテレビで公開され、様々な人がコメントをしていた。
みんな一様に喜んでいた。まあ当然なのかもしれない。どこもかしこも物がない、ものがあってもバカ高い。食料も高くてうかつに買えないような状態が続いていた。それがようやく解消されるとあっては嫌がる訳がないのだ。
この期待にこたえなければいけないことは重責でもあるが、同時にこれだけ多くの人に期待されているというのは、優越感もあった。やってやるという思いもひときわ多く出て来るというものだ。
ニュース番組を見終わると、そろそろいい時間になってきたので風呂に入ることにした。秋彦は毎回、風呂掃除は上がった後に洗っておくので、自動の湯沸かし器のスイッチを入れるだけだ。
そこからスマホ片手に待つこと約二十分。風呂が沸いたときに流れるメロディが聞こえてきたので、スマホをおいて、龍之介に声をかける。
「龍ちゃーん、風呂入るぞー」
『はーい! わーいおふろだー! りゅうちゃんおふろだいすきー!』
声をかけると龍之介はすいーっと飛んできて、秋彦の背中に張り付いた。お気に入りの姿勢らしい。
龍之介は結構綺麗好きで、お風呂は自身の楽しみの一つになっているらしい。食事と風呂の時間はすごくうれしそうにしている。
服と下着を脱いで、たまっている汚れ物とまとめて洗濯機に入れて動かす。二日おきには洗濯はしているのだが、一枚一枚が大きいのですぐにたまってしまうのが悩みの一つだ。
風呂についても同じだ。一般家庭ではそこそこ広いが、秋彦だと少々手狭である。
最初に洗うのは龍之介の方だ。龍之介を洗うのは秋彦なのだから、先に洗っておかないと龍之介の汚れが付くので当然と言えば当然なのだが。
「お湯被せるぞー?」
『はーい!』
了解を得てから龍之介に頭からシャワーを浴びせる。嬉しそうである。
そしてその後に、龍之介のおふろ専用に買った毛の柔らかい歯ブラシを使い丹念に磨いて行く。龍之介も気持ちよさそうにしているし、最近はもはや日課である。
そうして体を磨いていくと、体からポロリと鱗が落ちた。磨いたところからなので、生え変わりだろう。
龍之介はドラゴンなので、脱皮はしないらしく、代わりに古くなった鱗が剥がれ落ちるようになっているらしい。
もちろんはじめは秋彦も驚いたが、最近ではすっかり慣れたものだ。とりあえず剥がれた鱗は洗面器に除けておいて、続きを行う。ベビードラゴンは結構な頻度で鱗や爪、牙に角の生え変わりが起こるのだ。
そうして次は爪を磨く。鋭い爪だが、本人の意思で硬くも柔らかくも出来るらしい。実際しがみつかれても痛いと感じたことはない。
などと考えていたら爪も一つ剥がれ落ちた。爪が剥がれ落ちたとすると痛そうに思うかもしれないが、龍の爪は伸びすぎると、ちょうどいい所からポロッと落ちるのだ。根元から剥がれているわけではない。
そうしてすべての個所を洗い続けると、今日は歯が三本、爪が一本、鱗が数十個。角が一つ剥がれ落ちていた。
歯は鱗の様に全部抜け落ちるタイプで、角は爪と同じくちょうどいい所で途中から抜ける形になる。
「今日もいっぱいぽろぽろ落ちたなー」
『りゅうちゃん、きょうもいっぱいせーちょーしてるから!』
なお、この剥がれたものはしばらくすると龍之介の元の大きさに戻るので、泡を落として、風呂場の外に置いておく。
龍之介の体の泡もシャワーで綺麗に落とす。このあたりになると龍之介は湯船に入りたくてうずうずしている。でも秋彦の一言があるまでは入らない。偉い。
「よし、龍ちゃん、入っていいぞ」
『わーい!』
なので声をかければたちまち湯船に入るのだ。
ドボンと湯船に飛び込む龍之介、すぐに浮いて湯船の中をバシャバシャと羽ばたきする。無邪気で可愛らしいものだ。
そんな様子を見ながら、やっと秋彦は自分の体を洗い始める。
髪を洗って顔を洗う。顔を洗うついでに最近生え始めてきた髭を剃り、体の上から順に洗っていく。
そうして体すべてを洗い、湯船につかる。
『きもちいーね!』
「ああ、そうだな。今日は普段にしては風呂入るの早いけど、たまにはこんな日があってもいいな」
『きょうはとよちゃんのなかにはいれておもしろかったー』
「そうだな。俺もあれは未知の体験だったからなこれからもああいう体験っていうのは結構していくことになるからな」
『わー、たのしみー!』
その後、湯船につかりながら今日あったことについて語り合う。コミュニケーションの時間でもあるので毎回結構長湯になってしまう。
風呂から上がって洗面所に来ると、時間がたって元の大きさになった龍之介の素材が床に散乱しているが、とりあえず無視して、龍之介の体をふいていく。拭きのこしがあると水滴があちこちに散乱するので慎重に丁寧に。
拭き終わると、龍之介はパーッと飛んでいく。それを見届けた後、秋彦は風呂の栓を抜き、風呂を洗い始める。このタイミングで風呂掃除を始めるようになったのは、両親が長期の出張に行って、家が一人になってからだ。こうすればいつでも気が向いたときにふろに入ることが出来る。
風呂の掃除が終わって、自分の体も拭き終わったら、龍之介から剥がれた素材も綺麗にふき取り、地下室に置いておく。その後、自分の部屋に入り、冷房を入れておく。その後、台所からコップを二つとジュースをもって、リビングの冷房を切った後で部屋に戻る。このタイミングで龍之介も部屋についてくる。流石にそろそろ暑さが本格化しているのに冷房を切った部屋にはいさせられない。
『パパ! ジュース! ジュース!』
「はいはい。コーラだぞー」
『わーい!』
秋彦はコップにコーラを注いでストローをつける。龍之介はすぐにストローを咥え込み、コーラを飲み始める。とてもおいしそうに飲んでいる。
それを見届けた後、秋彦は部屋に置いてある自分用のパソコンから日課になっている作業を行い始めた。
それはドラゴン素材を使ったアイテムのレシピ本探しである。
龍之介の素材が結構たまっているので、何かいいアイテムでも作れないかなと思っているのだ。
レシピ本自体は入門ダンジョンでも落ちることがあるし、狙ったものが落ちているわけではないからか、最近ではありふれていたりするのだが、特定の素材を使用したものとなるとなかなか探すのが大変なのだ。
そこで、ネットオークションサイトを通じて、レシピ本などを探すようにしているのだ。
もちろんこれはレシピ本だけに限らない。昨今ではいろいろな物をオークションで扱っているが、ダンジョンから出て来るものも例外にはならないというものだ。
特に最近ではダンジョンから出て来るアイテム専用のインターネットオークションサイトにしてダンジョンオンラインショップ【オリーブの葉】というサイトが現れており、そこには結構いろいろなダンジョンアイテムが充実している。
勿論、昨今の流通事情から運送料は高い物の、ここであればたいていのものは手に入ると言われている。このサイト巡りを初めて一週間。試験勉強の合間にちまちま調べていたのだ。秋彦が狙うレシピ本は、ズバリこれだ。
「見つけた……! ドラゴンズライフ!」
そう、【ドラゴンズライフ~幼龍と生きる貴方へ】である。
このレシピ本には、ドラゴン素材を使った道具の作り方が書いてあるという。ネットによってさまざまな情報をかき集めた結果手に入った情報だ。
そしてとうとう見つけた。オリーブの葉のオークション部分に、目玉商品として売り出されていた。さっそく見に行ってみると、確かにあった。偽物である場合返品可とされているので、信ぴょう性も高い。
というよりレシピの一つの一部が公開されていたのが決定的だ。
【龍の角笛】
吹き鳴らすことで。どこにいても角の本来の持ち主である龍を呼び寄せることが出来る。
また、それ以外の龍を遠ざけることが出来る。
それを見て欲しい、作りたい。そう思ってしまった秋彦の敗北であった。さっそくオークションサイトの決算ページを見てみる。
オークション価格百万円からのスタートだ。また、即決価格でもあった。
これを見て秋彦は眉をひそめた。普通のレシピ本はたいてい十万円が購入相場と言われている。十倍である。
決して安いものではない。しかし、秋彦なら全然手は届く。延々探し回る羽目になるよりはここで買ってしまった方がいいだろう。しかし結構踏ん切りがつかない。
自分が探索者を行って以来の大きな買い物だ。手が震えるのも仕方がないというもの。
だが、龍之介の素材を売るという選択肢を、自分が親のような存在として取れない以上、自分で使うしかない。
そのために必要な物ならばと、ちらっと無邪気にコーラを飲んで喜ぶ龍之介を見て、一呼吸おいて購入ボタンをクリックした。
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次の投稿は10月25日午前0時予定です。
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