第九十九話 海中戦と、海の入門ダンジョン
累計PV数136万突破しました!
あるま@なろうカクヨムノベルバ様(@arumaSAOIF)より、ファンアートを頂戴いたしました!
こちらになります。
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。特に今回はあるまさん、本当にありがとうございました!
あるま様のツイッターはこちらです!
https://twitter.com/arumaSAOIF
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うおお……! すげぇ……」
「本当に海の中だねぇ……!」
男子陣大喜びである。
水質はそれなりに澄んでいて見通しも良い。そして現在、潜水ガメはすでに潜航をしており、浅く潜っているため光は届くものの海の中である。どういう仕組みか、甲羅からは窓があり外を見ることもできる。普通潜水艦に窓などないのだが、これも潜水艦が魔物だからだろうか?
とにかく、様々な初めてのことにテンションが上がるというものだ。
現在、通常都心部から一時間弱程度で到着するとある海岸を出て少ししたところである。
ダンジョンウォッチを見てみる限り、どうやらそこを少し行った場所に入門ダンジョンがあるようだ。と言っても実際の距離的には離れているし、無人島よりも狭い、まさしく浅瀬といった場所であり、ここがあるところで直接的に人が襲われることはないが、ここが海の魔物の出る場としては一番近いだろう。
そこに向かっている。
「しかし……今のこの状況じゃ俺らが出るわけにゃいかんからな……戦闘は豊ちゃんに任せなきゃいかんってのもちょっと緊張するな」
「思えば戦闘をすべて任せるって初めてよね」
「うう……怖い……」
「大丈夫だよ、豊ちゃんは負けないって!」
「……桃子は心配性」
使い魔に戦闘のすべてを任せるという全員にとって初の経験に思いをはせる中、一人だけ早くも、水の中でも呼吸が出来るようになるマスクである、魚人マスクを装着し、びくびくしっぱなしの桃子である。改めて乗り込んで発進したら急に怖くなったのだとか。
そうやってしばらくしていると豊ちゃんの念話が響いた。
『まものをはっけんしたよかあさま。げいげきします!』
「……これがあなたの初戦闘、しっかり決めて!」
『はい! エッグミサイルはっしゃ!』
茜は普通に対応していたが、秋彦は驚いた。自分の感知系のスキルレベルはそんなに低くないはずだ。なのに自分が全く感知出来なかった。どういうことだ?
しかしミサイルという名の魚雷を一発発射した後は、茜は何もしないし、潜水ガメも何もしようとしなかった。
もっと攻撃しなくていいのだろうか、というかなぜ動かないのだろうか、と思いながらしばらくすると遠くで何か音がした。
すると潜水ガメが念話をしてきた。
『まものをたおせました。かあさま、やりましたよ!』
「……お疲れ様。やはりあなたは偉いわね」
『えへへ、ありがとうございます!』
「……え?! 終わったのか!?」
狼狽し、思わず声を上げる。
いくらなんでもあっさり過ぎると思ってしまったのだ。
「……秋彦、通常の戦闘と海戦を一緒にしてはいけない。海戦は普段秋彦達がやるように接敵しないから広範囲の索敵と遠距離攻撃が主軸になる」
そう、海戦というのは総じて探索者が魔物と戦う時の様にスピーディーにはいかない。
そもそも戦艦の大砲も魚雷も着弾までに時間がかかる。双方ともに質量がある代物であり、それ故に目標地点に到達するにも時間がかかる。なので両方とも相手の位置を予測して撃つことで、その隙をカバーしているのだ。特に魚雷は発射から着弾まで10分程度は普通にかかる。
故に海戦において必要なのは相手がどう動くかを見切り、予測する観察力と、その観察力で相手の先を予測した上での行動である。
「成程なぁ。俺はそういうの苦手だ」
「まあ、なかなかわかるものじゃないわよね。私たちは軍人では無いもの」
「……まあ、海は私とこの子がやる」
その後もしばらく同じようなことが数回起こったが、今のところすべて潜水ガメの先制攻撃一撃で終わる。
秋彦達が外に出られない上に、潜水ガメの水中感知の高さもあって、敵にアナライズの一つもかけられず、敵のデータ収集も出来ないでいるが、とりあえず近海程度なら楽勝の様だ。
………………………………
そうして、ついに東京から一番近いであろう海にある入門ダンジョンへ来ることが出来た。浮上して秋彦達が外に出てみると、ダンジョンの入り口からまたぞろぞろと雑魚魔物が外へ泳いで出ていた。
しかし、潜水していた時に確認したのだが、ダンジョンの入り口はとても広く、潜水ガメも多少狭いながらも入れるようだ。
わざわざ外に出てきたのはアナライズによる確認のためだ。ここには先ほどから豊ちゃんのミサイルエッグの餌食になっている魔物達が外に出てきていた。
外に出てやっと視認が出来るようになったので、ようやく秋彦の出番である。
「『力よ!』アナライズ!」
名前:ヤイバイワシ
レベル1
肉体力:3
魔法力:0
戦闘力:5
有利属性:水
不利属性:水
スキル
水泳:(【アクティブ】水中を自在に泳ぐ)
体当たり:(【アクティブ】敵に向かって体当たりを仕掛ける)
刃の体:(【モンスタースキル】【パッシブ】打撃攻撃を斬撃攻撃に変える)
群体:(【モンスタースキル】【パッシブ】一体を中心として群れになり、意思を統一することで、群れを一匹の魔物として扱う。戦闘力は、構成する魔物の戦闘力の合計になる)
全身が刃のように鋭く切れる刃物と化しているイワシ。一体一体は弱いが、群れを成すことで強さが変わる。ヤイバイワシは最大100体で群体を形成する。
「と言う事だそうです」
「と言う事は最大戦闘力500ってことね」
「なんだ、全然大丈夫じゃない」
「入門ダンジョンにしては……高すぎない?」
「……高い。けど、敵ではない」
『そうだね、おおきいぐんたいでもいっぱつだったからだいじょうぶだとおもいます』
とりあえずこの程度なら豊ちゃんが行っても問題ないだろうということが確認できたので、改めて豊ちゃんに乗り込み、ダンジョン攻略を始める。
しかし、さすがというか、やはりというか、所詮入門ダンジョンの域を出なかった。
ダンジョンの中では多くても群体は10体で構成されていて、戦闘力50程度の敵相手だった。エッグミサイルを撃つまでもない。もはや相手の群体による体当たりでさえ、向こうが当たり負けて勝手に死んでいく有様だ。実質障害はない。
ダンジョンであり、洞窟であるこの場をゆっくり宝箱を逃さないように水中感知で探しながらの探索になった。
………………………………
「え、えーっと……お、お疲れ様でしたー!」
「「「お、お疲れ様でしたー!」」」
『えー、ぜんぜんつかれてないよー!』
「……退屈」
とうとう何の山もないままに終わってしまった。豊ちゃんのデビュー戦。たいていはエッグミサイルの一撃で片が付き、ダンジョンでは敵が勝手に突っ込んできて勝手に死ぬという体たらく。楽勝が過ぎたのだ。
最後のボスでやっとヤイバイワシ50体で構成された群体程度だった。正直これなら氾濫で外に出ていたヤイバイワシの方が普通に100体構成の群体はいたらしいので、外の方がまだ歯ごたえがあったという。
初のデビュー戦という張り切りようがすごかっただけに、がっかりであり、不満足にもほどがあるデビュー戦となってしまったようだ。
「ま、まあまあ、ほら、そうはいってもさ。初級に行くには怖いじゃない? 進化する前にどれ程出来るのか見ておくっていう意味では入門はうってつけだった訳で……」
「優の言う通りよ茜、とりあえず今日はそれで納得しましょ?」
「とりあえず海なら茜に安心して任せられるってわかったしさ、ね?」
全員でなだめるも、茜の頬は膨らみっぱなしである。それは潜水ガメも同じだ。
『かあさま! ぼくははやくしんかしたいです!』
「……そうすれば、初級に挑める。もうすぐで鉄の収集が終わるから待ってて。次は初級を制覇しましょう」
『はい! もっとしっかりとしたかつやくをしたいです!』
すっかり変なスイッチが入ってしまったらしく、茜と潜水ガメの豊ちゃんは、デビュー戦のリスタートを固く誓い合っていた。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は10月22日午前0時予定です。
ファンアートを貰うなんて言ういいことがあったので、特別に翌日に投稿します。
よろしくお願いします!